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虐げられた私の身代わり婚約、そして見つけた幸せ  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍発売中


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32、勘違い

「あ……」


 そうだった。言われてみれば、私は領地から出る際に魔法を使用して金髪に変化させていた。最近は魔力量を増やす訓練の一環として、一日中髪色を金髪にしている。それに私がエスペランサであることは王侯貴族の中でも一握りしか知らない。伯爵家である彼には、情報が来ていないのだろう。


「もし本物のブレンダがこの場所にいるとしたら……彼女はどう考えていただろうな」

 

 公爵様の言葉に私は答えた。

 

「そうですね……何故私がこんなところに? と考えているでしょうね」


 ブレンダのことだ。正確に言えば『何故こんな野蛮な国に……!』と思うでしょうね……。気まずそうな表情を見せたことで、何を考えているのか分かったのだろう。大きなため息をひとつついた。


「伯爵は王国帰化を求めている貴族のうちの一人だろう、という話は上層部でも出ていたのだが……ほぼ尻尾を出していなくてな。決定的な証拠を掴めていなかったのだが……やっと動き出したらしい。意外と大胆に動いたな」


 元々表立って動くことのなかった者が動き出す――これは捕縛の機会でもあるのだから。

 

「ですが、この後どうやって動くつもりなのでしょう? そもそも、王国は本当に伯爵と繋がっているのでしょうか……」

 

 こちらの国を『野蛮だ』と言って蔑んでいるあの国が?

 『我が国力が一番である』と、情報収集することなく驕り高ぶっているあの国が?

 

 そんな思いを無意識に言葉にしていたらしい。公爵様とヘンリーが驚きから目を見開いて見ていたのだが、私はそのことに気が付かなかった。

 顔を上げたのは公爵様の言葉が聞こえたからだ。


「正確に言えば、一方通行という言葉が当てはまるだろうな。伯爵は王国へと帰化したい。だから王国へと情報を提供する。王国はそれに何を言うこともないが、伯爵はこう思っているはずだ……『実績を上げれば、王国へ帰化できる』と」

「そこまでして帰化したいのですね……」

「伯爵は先の戦争で没落した王国の貴族令息だったようだ」


 私は公爵様の言葉に目を見張る。そういえば、戦争締結する際……戦争を引き起こした責任者として何人か処刑されている話を聞いたことがある。もしかして、伯爵はそれに巻き込まれた一人なのだろうか。

 思わず公爵様の顔を見ると、彼はヘンリーに目配せをする。すると彼は一枚の紙を読み始めた。


「当時、彼の父親は戦争責任を問われて処刑、同時に家も取り潰されております。その後、母君の従姉妹であったディロン伯爵家を頼ったとのこと。その後、後取りがいなかった前伯爵は、出来の良かった現伯爵を嫡子として迎え、爵位を継承したようです」


 ディロン伯爵の真意は分からないけれど……王国で取り潰しになった家の復興を夢見ているのかもしれない。その第一歩として功績という手土産を作っておこう、そう伯爵は考えているのだろう。

 

「ですが一方通行、ということは、伯爵がもたらしている情報は、王国側も知らないということですよね?」

「ああ、帝国が送り込んだ間者が握り潰しているはずだ」


 つまりどれだけ有益な情報を王国へ流しても、彼の努力は報われないということか。皇帝陛下の采配が素晴らしいのか……完全に相手を信用している伯爵が愚かなのか。

 幾度情報を流しても反応がない王国。そこに現れた王国から送られた婚約者……。


「王国からの婚約者を条約に反して送り返すことで、帝国に瑕疵があるように見せたかったのだろうな。そうすれば王国は帝国へ攻め入る理由が作られる。あの男も王国信者なのであれば、王国が勝利すると疑っていないのだろう? 王国が勝利することで帝国が王国の属国化すれば、デヴァイン帝国の再来となるわけだ」

 

 公爵様の話に、私はなるほど、と思った。

 そうなれば……ディロン伯爵は戦争の切っ掛けを作った者としての功績を評価され、王国で没落した家を復興できるという夢を見ているのだ。

 だが、それで受け入れるだろうか。あの王国だ。


「もし王国が勝利してそのようになったとしても、王国でディロン伯爵が受け入れられる可能性は限りなく低いと思うのですが……」


 何故そこまで頑なに信じることができるのだろうか、と疑問だ。

 

「その通りだ。これに関してはこちらの仕込みだな」

「そういえば、先ほど間者がいると言っていましたが……その方が?」


 公爵様は静かに頭を縦に振った。

 握りつぶすと同時に、そんな話を吹き込んでいたのか。王国の者から言われたら、信者である伯爵は信じるはずだ。それならこの行動に出たのも頷ける。

 

「耄碌したか、功を焦ったか……まあ、ここが正念場であることには変わりない。油断せずことを進めよう、ヘンリー」

「承知いたしました」


 頭を下げたヘンリー。ここでこの話は一旦終わらせるつもりなのか、公爵様は別の話題を切り出し始める。だが、それを止めた者がいた。もちろん、私である。


「公爵様、でしたら私を囮に使ってくださいませ」


 私は、はしたなくも立ち上がり公爵様に主張する。私が囮になれば、捕縛の確率は上がるだろうから。

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