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【架空歴史短編小説】バロックの永遠なる調べ ―コレッリとバッハ、響きあう魂―  作者: 霧崎薫


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●第4章:成熟期(1681-1689 / 1717-1723)

【バッハの視点】


 1717年、32歳の私はケーテン侯レオポルトの宮廷楽長として、新たな挑戦に臨んでいた。ここでの職務は、主に世俗音楽の作曲と演奏。教会音楽から離れることへの戸惑いもあったが、それは新たな可能性を開くことにもなった。


「バッハ殿、あなたの才能を存分に発揮してください」


 侯の言葉には、深い理解と期待が込められていた。実際、ケーテンでの環境は創作に理想的だった。有能な演奏家たちが揃い、侯自身も音楽を深く理解していた。


 この時期、私は「ブランデンブルク協奏曲」や「無伴奏チェロ組曲」など、重要な器楽作品を作曲した。それは、教会音楽とは異なる新たな表現の探求でもあった。


【コレッリの視点】


 1689年以降、私の音楽はさらに深い成熟を遂げていった。トリオ・ソナタの形式を極め、新たな表現の可能性を追求し続けた。


「マエストロ、あなたの音楽は完璧です」


 弟子たちの賞賛の言葉。しかし、私自身は常に不完全さを感じていた。より純粋な、より本質的な音楽表現を求めて。


「技巧は手段であって目的ではない」


 その信念は、ますます強くなっていった。私の音楽は、より簡素でありながら、より深い表現を目指すようになっていった。


【バッハの視点】


 しかし、1720年7月、突然の悲劇が私を襲う。ケーテン城での演奏旅行から戻った私を待っていたのは、最愛の妻マリア・バルバラの死の知らせだった。


「なぜ……神よ、なぜ」


 言葉にならない悲しみが、私を覆った。子供たちを残して逝ってしまった妻。その喪失感は、私の魂を深く傷つけた。


 しかし、音楽は私を救ってくれた。深い悲しみの中から、新たな創造が生まれた。「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」は、この時期に書かれた作品だ。


【コレッリの視点】


 1690年代、私の音楽はますます洗練されていった。しかし同時に、新たな不安も生まれていた。


「時代は変わりつつある」


 新しい様式を求める声が、ますます強くなっていた。私の音楽を「古風」とする批評も増えていた。しかし、私には確信があった。


「真実の音楽に、古いも新しいもない」


 その信念は、最後まで私の支えとなった。


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