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【架空歴史短編小説】バロックの永遠なる調べ ―コレッリとバッハ、響きあう魂―  作者: 霧崎薫


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●第3章:初期の成功(1675-1681 / 1708-1717)

【バッハの視点】


 1708年、23歳の私はヴァイマール宮廷のオルガニストとして新たな一歩を踏み出していた。ここでの生活は、アルンシュタットとは全く異なるものだった。


「バッハ殿、あなたの才能を存分に発揮していただきたい」


 公爵ヴィルヘルム・エルンストの言葉は、私に大きな自由を与えてくれた。宮廷では、新しい音楽に対する理解があり、創作の環境も整っていた。


 この時期、私は多くの教会カンタータを作曲した。その一つ一つに、自分の信仰と音楽への思いを込めた。マリア・バルバラも、私の創作を温かく支えてくれた。


「ヨハン、あなたの音楽は日に日に深みを増していく」


 彼女の言葉は、私の大きな励みとなった。しかし、幸せな日々の中にも、新たな試練が待ち受けていた。


【コレッリの視点】


 1685年、ローマでスウェーデン女王クリスティーナのための祭典音楽を指揮することになった。これは、私にとって大きな名誉であると同時に、重大な挑戦でもあった。


「コレッリ殿、あなたの音楽に期待していますわ」


 女王の言葉には、大きな重圧が込められていた。しかし、この機会は私に新たな創造の可能性を開いてくれた。


 祭典の成功は、私の名声をさらに高めることとなった。しかし、その一方で、私の心には新たな迷いも生まれていた。


「これほどの名声を得て、なお私は何を求めているのだろう」


 技巧の限界に挑戦し続けることへの疑問。真の音楽とは何か。その問いは、私の心を深く揺さぶり続けた。


【バッハの視点】


 ヴァイマールでの生活は、音楽的にも私生活においても充実していた。マリア・バルバラとの間に授かった子供たちは、私たちの喜びとなった。


「パパ、この曲を弾いて」


 長男のヴィルヘルム・フリーデマンの無邪気な願いに、私は心から幸せを感じた。音楽は、私たち家族を結ぶ絆でもあった。


 しかし、宮廷での立場は、必ずしも安定したものではなかった。新しい音楽様式を求める声も強まり、私の作風を「古風」とする批評も聞かれるようになった。


「バッハ殿の音楽は、確かに素晴らしい。しかし、もう少し現代的な要素を……」


 そんな声に、私は自分の信念を貫くことで応えた。音楽は、流行を追うものではない。真実の表現こそが、永遠に価値を持つのだと。


【コレッリの視点】


 1689年から1690年のモデナ滞在は、私に新たな創作の糧を与えてくれた。この地で出会った音楽家たちとの交流は、私の音楽観をさらに深めることとなった。


「マエストロ・コレッリ、あなたの音楽には魂が宿っている」


 若い音楽家たちの言葉は、私の心を温かくした。しかし同時に、大きな責任も感じずにはいられなかった。


「私の音楽は、次の世代に何を伝えることができるだろうか」


 その問いは、私の残りの人生における重要な指針となった。


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