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三浦編4



「的」



三浦は30度くらいの緩い入射角で潜水を続ける。スピードは30km前後を維持し、潜水艦は一切の音を出していない。

しかしこの潜水艦は前後にしか移動出来ないのは不便である。向きを変更しなくてはならないため、自然と足が黒い金属製の床から離れ、ガラスの壁についてしまわざるをえない。割れないと分かっていても多少は怖いのだ。

それに空間全体が明るいため、先程の巨大魚のような「何か」に見つかりやすいだろう。


三浦「格好の的だな」


頼りの明かりが天井の照明のみというのは厳しい。外の様子は影の動きでしか把握出来ないのだ。

グォン、と波がうなりをあげて生物のような動きを見せた。三浦は、しまったスピードの出しすぎか?と思ったがそれは間違いだった。次の瞬間、ドン、と下から突き上げられるような衝撃。


三浦「うわっ!」


三浦の体が宙に浮いた。絶叫マシーンで高度が変化する時に似た感覚を味わう。



「衝突」



三浦(なんかにぶつかった!?)


真下のガラスの外には何もなく暗闇。確かに暗闇だが、三浦はすぐに気付いた。反対側のガラスの向こうの闇と色が違っていたことに。影なのだ。あまりにも巨大すぎる影が潜水艦に激突していたのだ。前回の巨大魚を遥かに上回る大きさだった。伸びたそれはぴったりとガラスに張り付く。

吸盤である。吸盤一つの大きさはガラスの高さですら足りないほど。幅で見れば7m近くはありそうだった。


三浦「タコか!?」


旋回するためにレバーを動かすが空回りする。ぴったりくっついた吸盤が潜水艦の動きを妨害しているのだ。


三浦「やっべぇ…!!」


どうにもならなかった。本体の姿すら見えない巨大タコに食われると半ば諦めかけた、その時。

ボンという強大な破裂音。ほぼ真下から潜水艦が激しい波に押し上げられる。方向はタコ本体だと思われた。そのタコ自身が突然爆発したのだと、吹き飛ばされていく潜水艦のガラスに幾多ものタコの肉片が付着していたために三浦は予測する。潜水艦はガラスが壊れてしまうだろうと覚悟するぐらいの猛スピードで上昇を続けていく。

破裂音の時点で三浦の鼓膜が破れなかったのは幸いだが、圧力変化の関係からか耳鳴りと吐き気に襲われる。潜水艦も規則的に回転をしているが三浦は中を転げ回らないように両手でレバーを必死に掴む。


三浦(…………!!!)


20数秒でやっと潜水艦は落ち着きを取り戻した。スタート地点より100m以上は浮上したと思われるが、依然暗いままである。この空間には限界が存在しないのかもしれない。



「追撃」



三浦のぐったりとした体の具合が良くなったのはさらに30秒後の頃だった。


三浦(まだ若干ふらふらすんな…)


方向感覚が戻りきっていないが足は宙に浮いている。床の位置が垂直になってしまい、吊られた状況なのだ。コントローラーから手を離せば逆側のガラスへ落下し、潜水艦を操縦することはもう不可能だろう。握力は徐々に弱くなっていくが今すぐ潜水艦の向きを変えれば大丈夫そうだ。


三浦「一応助かったか」


ホッとしている最中、波の揺れる音がいつまでも止まないことを不審に思った。潜水艦を動かしてもないのにだ。まさか、と三浦は下に存在する反対側のガラスを見た。

見たことのある巨大な影があった。それは始めの巨大魚の影と一致していると考えて間違いなさそうだ。その影は潜水艦へと向かってきている。


三浦「わっ!!」


床に足をつけるため、素早く潜水艦の向きを元に戻す。そして前進。ギリギリの所で巨大魚の鋭い歯を持つ大口による捕食を回避した。接近していた巨大魚を横目で視界に捉える。


三浦「ピラニアかよっ!」


一部赤みがかった鱗に鋭い歯で種類を認識出来た。レバーを壊れるくらいに倒していることでピラニアの攻撃をかわした潜水艦はどんどん加速していく。ピラニアはさらに追ってきたのだが、潜水艦の速度は巨大魚のそれよりも速かった。速度を上げ続けて差を広げていく潜水艦はMaxでどれくらいなのだろう、と疑問を抱えさせる。ピラニアのスピードがどれほどのものかは分からないが、潜水艦は影が見えなくなった時点で新幹線並みの速度だった。


三浦(完全に振り切ったな…)


速度を少しずつ落として、ふぅと溜め息をつこうとする。そんな暇もなく、新たな展開が訪れる。


三浦(あれはまさか…)



「終了」



三浦はそれとまったく同じものを一度、西欧の庭園風の水場で見ている。それに触った後の感覚は二度、閉鎖空間を抜け出した時に味わっている。


三浦「光…」


深海で不自然に光るものがあった。大きさは潜水艦に比例して同等。輝きも潜水艦の照明の明るさに近い。潜水艦ごと触れればいいのか、それとも潜水艦をすり抜けてくれるのか。潜水艦をゆっくりと光に近付ける。終わったか、と三浦は思ったが。


三浦「あれ?」


ここで予想外。光が移動した。潜水艦から逃げるように。

そこで三浦は悟ってしまった。終わったか、というのは間違いなさそうだが。

三浦は海には詳しくない。それでも光で餌を吊るチョウチンアンコウという生物を知っている。光に誘われた対象を捕食する生物。

ここでの対象は紛れもなく潜水艦だ。逃げようとしても遅い。深海の闇の中で巨大な影が三浦の視界で動いたからだった。それが巨大な口だと把握して改めて三浦は思う。


三浦(終わったか)



三浦は攻略出来なかった。この密室を。




「憩いの場と彫像」


04分41秒


「木造住宅と人形」


10分09秒


「潜水艦と巨大魚」


13分30秒


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