4話
燃え盛る炎。
崩れていく家。
お父さん。
お母さん。
何度目かも分からない悪夢から目を覚ます。
気付けば頬は涙で濡れていた。
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「・・・叶」
祖母が優しく声を掛ける。
「大くんのことなんだけどね」
「・・・うん」
叶は俯いたまま返事をした。
「お礼に来られなかったことは気にしてないって言ってたよ」
「・・・そうなんだ」
「それにね」
祖母は少しだけ微笑んだ。
「これから幸せになってくれるなら、それだけでいいって」
叶は何も答えなかった。
けれど、布団を握る手が少しだけ強くなる。
⸻
「ニュースも見たよ」
祖母は続けた。
「大くんね、ずっと自分を責めてるみたい」
「・・・」
「お父さんとお母さんを助けられなかったって」
叶の肩が小さく震えた。
その言葉は、自分自身にも向けているように聞こえたからだ。
⸻
「大くんってね」
祖母は少し迷うように言う。
「ずっといじめられてたんだって」
その瞬間だった。
今までほとんど反応を示さなかった叶が顔を上げる。
「・・・そうなの?」
初めて自分から質問した。
祖母は少し嬉しそうに頷く。
「うん」
「学校でもずっと辛い思いをしてたみたい」
「・・・」
叶は黙り込む。
中学校での毎日を思い出していた。
誰も話しかけてこない教室。
聞こえる悪口。
休み時間の孤独。
友達は一人もいなかった。
それでも耐えられたのは。
家に帰れば両親がいたからだ。
だけど今は。
その両親もいない。
⸻
「無理にとは言わないよ」
祖母は優しく言った。
「しばらく学校に行かなくてもいい」
「転校だっていい」
「ゆっくり考えればいいんだから」
叶は小さく頷く。
「・・・うん」
「でもね」
祖母は続けた。
「一度だけ、大くんと話してみたらどうかな」
「・・・」
「きっと叶の気持ちを分かってくれると思う」
部屋に静寂が落ちる。
しばらくして。
叶は本当に小さな声で答えた。
「・・・うん」
その返事は。
事件が起きてから初めて、自分から前を向こうとした返事だった。
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