↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バッドランズ・グレイアウト/モブ社畜、呪物を売る裏社会企業に転職し社長(♂)に恋をした結果、屍人転生する  作者: 梅屋凹州
三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
84/92

3章4話・6 ”正念場”

 応接室で待っていた”ザキさん”が、十三に気づいて鋭い視線を向けてくる。

「お待ちしてましたよ、東雲さん。進捗はいかがですか?」

「……それが……」

 十三は、”ザキさん”に、知り得た情報をそのまま話した。


 二つの自殺動画に共通して、アプリに寄生する”件”が確認されたこと。

 それはnowhereに納品した段階では、確認されなかった事象であること。

 十三は嘘はつかず、ありのままを伝えた。


「……それは、困ったことになったねぇ……」


 そう、ため息をついた”ザキさん”は、口ぶりこそ冷静だったが、内心穏やかではないことは見て取れた。

 会社の損害、ヤードへの不信感。十三から説明を受けたとして、ああそうですかで話が済まないのは当然だろう。


 ”ザキさん”は細く長い呼吸をした後、十三の目を真っ直ぐに見据えて、こう宣告した。

「……東雲さん、残念だが、アプリはサービス終了せざるを得ません。登録者に害を及ぼすアプリと知られたら、広告主にも逃げられてしまうでしょう。早々にダウンロードストアからも撤退しなきゃならない」

「待ってください……! まだ、結論を出すのは早いですよ!」

 十三は食い下がって、”ザキさん”からの疑いの目を晴らそうと試みた。


 強く出ては見たものの、心臓が冷えているのがわかった。一言間違えれば、会社に大きな損失を与えてしまう。十三の手には、べっとりと汗が滲んでいた。


「確かに、アプリに欠陥があったと判断されても仕方がありません。でも、サービスを終了させるのは早計です」

「……五人も死んでるのに? もし次、同じことが起こったら言い逃れできませんよ? ウチはいわくつきのサービスを配信した会社として大炎上する」

「なら、”次”が起こらなければいい!」

 そう言いきった十三を、ザキさんは信じられない、といった表情で見つめ返した。


「……なんだって?」

「だから、次が起こらなきゃいいんですよ。不審死の謎を解決すればいいんです。オレたちヤードなら、それが可能なんです!」

「……アンタ、本気で言ってるのか?」

「ええ、もちろん」

 もちろん、ハッタリである。


 まだ問題解決の糸口は掴めていないし、どうすればいいのかもわからない。

 だが、大事なのは今を乗り切ることだった。それに、会社にいる棺と力を合わせれば、乗り切れられるという確信が、東雲十三にはあった。


 大ぼらを吹いた十三に対し、”ザキさん”は信用しきれない、という顔をしていた。

「……いや、しかしな……」 

「ザキさん、実際どうなんですか? 二組の配信者が不審死してからユーザーは減りました? 広告主は? 撤退しようとする気配がありましたか?」

 ”ザキさん”は目をそらして黙りこむ。

 かわりに、奥に控えていたスガヤが、挙手した。


「……それが、東雲さん! どういうワケかユーザーが増えているんです! 自殺動画によってアプリの知名度があがったせいか、アクセス数もぐんぐん伸びていて……。それに、何故か投稿も倍増してるんですよ!」

「……倍増? それは、どうして?」

 十三に問われ、スガヤがPCを見ながら興奮気味に言った。


「ええと、二組の配信者が死んだのは、再生数の伸びなかったせいとか、ブックマークが少ないせいじゃないかってウワサが広がっているようです! アプリを削除する方ももちろんいますが、逆に削除すると呪われる、なんてウワサも広まっているらしく……! それらのウワサを信じて、チャンネルを削除せず、動画を増やしている方が多いようです!」

「今は根拠のないウワサが味方についてる状況ってワケか……。でもな、次のランキングが出た段階でまた死者が出たら、とうとう言い逃れできないぞ? そうなったらうちの社名に大きな傷がつく」

 そう、神妙な顔で部下に告げる”ザキさん”に、十三は問いかけた。


「……ザキさん、次のランキングが発表されるのは?」

「明日の朝、5時です……それよりも、ランキングを非公開した方がいいのでは? 自殺者が選ばれるランキングが伏せられたら、助かるかも……」

「そうは思えねぇけどな」

 その時、編集室から戻ってきたミケが、鋭く言った。


「外面のランキングを非公開にしたところで、この呪いが収まるとは思えない。おそらく、この”件”は……アプリの内部プログラムに寄生しているんだと思う。これはオレの経験則だけど、”件”ってのはウイルスと一緒なんだ。中のプログラムが生きていて、閲覧数と高評価によるランクがつけられるなら、”件”もそれを感知して標的を選ぶ。宿主であるアプリ自体を削除しても……別のアプリに移動するだけだと思う。次はもっと拡散力の強い媒体に」

「……それが……ウチの別のサービスになる可能性も……もちろんある、ってことだな」

「たぶんね」

 眉根を寄せて黙り込む”ザキさん”に、十三は告げた。


「……ザキさん、もうこれしかありません。一度生まれた”件”は、アプリの稼働によらず動き続けると思われます。オレたちに時間をください。もし、また自殺者が出れば、アプリはサービス終了してヤードは賠償金を払います」

 おい、という目でミケが見つめてきたが、十三は無視する。


 そこまで言って、”ザキさん”がとうとう折れた。

「……わかりました。期限は、ランキングが更新される明日の5時。それまでに解決できなかったら、予告どおり契約は破棄、アプリを売ったカネは回収させてもらいますからね」

 ”ザキさん”が言った内容を、十三とミケが了承した。


 もはや時間がない。

 荷物をまとめ、十三とミケはすぐにnowhereのオフィスを後にする。


 靴を履き揃えながら、十三は隣に立つミケに告げた。

「……ミケさん、今回は、労基法無視で働いてもらうよ」

「もちろんだ」


 十三とミケは意思を合わせ、二人とも早足で駅へと向かった。


 ランキング公開まで、あと五時間。

続きは明日夜公開します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。