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バッドランズ・グレイアウト/モブ社畜、呪物を売る裏社会企業に転職し社長(♂)に恋をした結果、屍人転生する  作者: 梅屋凹州
三章

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3章4話・1 ”映っちゃうんです” ── 埼玉県立☓☓高校 教室

「ほいっ、小テスト終わりー! ごはんごはんー」


 終業のベルが鳴ったと同時に、友花(ともか)はシャープペンを机に放り投げた。


 テスト用紙を回収に巡っている教師が睨みつけてくるが、友花は気にしない。何かあったらハラスメントを受けたとSNSに投稿すればいい。そうすれば教師たちは何も言えなくなることを、友花は学んでいた。Z世代の防衛術だ。


「あつい……もーむり……」

 振り返ると、後ろの席のレミが、暑さにやられて机の上に崩れていた。極悪教師が二十五度に設定したエアコンだけではとても涼は取れず、ハンディファンの風力を最大にして冷やしている。


「ねーマジあちーよねー。こんな日に補習とかだるくないー? 中止にしろよ」

 同調しながら、友花はレミの机でコンビニ袋を開けた。朝買った鮭おにぎりのビニルを剥がす。


「真夏に弁当持ち込んで学校まで来て? わざわざ勉強? まじ時間の無駄。タイパ悪いわー」

「いやいや、そもそも論、単位落とすなって話でしょー」

「朱里(じゅり)」

 離れた席にいた朱里がやってきて、男子の椅子を勝手に奪ってレミの机を囲った。一緒にランチを取るつもりらしい。


「知ってる? 友花ー。ソレ、他責思考ってヤツだよ」

 内心、朱里が嫌いな友花は、うざ、こっち来んなし、と思ったが顔には出さない。カースト上位のグループにいたいなら、個人的な好き嫌いで仲間割れなど出来ない。女子高生だって苦労しているのだ。


 友花は悟られないよう取り繕って言った。

「いや、うちらは真面目にやってるよ。ねえレミ?」

「ちょっと、一緒にしないでよー。あたしらは苦手の教科だけ単位落としてるだけ。アンタみたいに授業サボって投稿用のダンス動画ばっかり撮ってれば、そりゃほとんどの単位も落とすよねー」

「ねー」

 レミと朱里は顔を合わせて言い合っている。


 ムカついた友花は、誇らしく言った。

「だってあたしが動画取ればお小遣い稼ぎになるもん。先月もかなり稼いだし」

「あ、友花って動画、収益化してるんだっけ」

「そ。いい時代だよねー。お小遣い貯めて、整形代稼ぐんだー」

「あんた前も鼻いじってなかった?」

「いじったよ。次は目元ー。高校卒業するまでに、顔整い目指すんだ」

「モチベたけーな」

 たっぷりマウントを取ることが出来た友花はほくそ笑んだ。


 レミも朱里もブランドバッグを持ち、デパコスで化粧品を揃えているが、その収入源はパパ活だ。しかも、売春(ウリ)ありで相場より高く貰っていることも知っている。

 汚くて臭いオヤジに身体を売るなんてダサくてみっともない。才能のない女のやることだ。


 友花は日常やダンス動画を配信して、投げ銭と広告収入を得ている。身体を売るような汚いお金じゃなく、人に自慢できるクリーンなお金だ。いずれは企業タイアップも視野に入れている。友花は、同世代の女たちより一段も二段も高いところにいるのだ。


 友花はひそかに二人を見下していた。それをおくびにも出さず、こうして低レベルな関係に付き合ってやっている。感謝されたいぐらいだった。──無論、友花は頭がいいので、そんなことを口に出さないが。


「──そういえば、ねぇ友花、このアプリ知ってる?」


 弁当を食べ終えた頃、朱里がスマホの画面を見せてきた。友花には見覚えのないアプリだった。

「知らなーい。なにそれ」

「待って待って。今送るから」


 メッセージアプリを通して、朱里は、『映っちゃうんです』というアプリを紹介した。

 おどろおどろしいアイコン。顔をしかめる友花に、朱里は説明した。


「これ、最近流行りのアプリ。なんかインフルエンサーの間でバズってるらしいよ」

「えー。なにそれ。どんなん?」

「なんか心霊スポットとかいって、心霊写真とか心霊動画撮ったりすればいいんだって。グッドボタンとかブクマで、ポイントが溜まってく仕組みで、溜まったポイントは電子マネーに替えられるらしいよ。あと、ランキングがあるらしくて、ランク上位になればなるほどポイントが上乗せして貰えるって」

「オカルト系? うッわーキッツー。いくらバズっても、オカルトマニアしか見ないんじゃない?」

「でも、最近流行りじゃん、ホラー。このアプリ始まったばっかだし、友花フォロワー多いんでしょ? すぐランク上位いけるんじゃない? 小遣い稼ぎにもなるし」


 朱里に乗せられて、友花はその気になった。


 インフルエンサーはいかに流行を先取り出来るかが肝心だ。少し根暗そうなアプリだが、ブームになっているホラーコンテンツに乗っかれば、多くの人に自分を知ってもらえるいい機会になる。そう友花は判断した。


「えーじゃあやってみよっかな。有名な心スポ、家の近所にもあるし」

「いいじゃんいいじゃん。やりなよー」

「わかった。動画投稿したら見てねー」

「いいよー。リンク貼っといてね」

「もち」


 よし、と心を決めた友花は、席を立ち上がった。黒板に『弁当が古かったみたい。。。お腹が痛くなってしまったようなので帰ります。。。友花』と教師へメモを残していく。


「よっしゃ。じゃ先帰るねー」

「え!? 補講ブッチすんの?」「行動力ありあまってんなー」

 呆れて笑っている友人に、友花は手を振って別れを告げる。


「ねえ、明後日ぐらいには投稿するから! 二人とも今のうちにアプリインストールしてよー! 絶対ねー!」

 わかったってー、と声が聞こえる。友花は意気揚々と踵を返して廊下をかけた。


 歩きスマホをしながら、友花は、アプリをインストールする。


 立ち止まってはいられない。

 もっと色んな人に、自分を見てもらえる絶好の機会なのだから。


 友花は期待に胸を踊らせながら、インストールしたばかりのアプリに会員登録した。

続きは明日投稿します。「リング」、「リング2」、好きです。

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