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バッドランズ・グレイアウト  作者: 梅屋凹州
二章

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12/25

捜査資料2:闇オークション失踪事件に関する捜査資料

2話の序章となるお話です。よろしくお願いします。

mail titlle:【報告】お元気でしょうか


柳生(やぎゅう)天業(てんごう) 殿


 お父さん、お久しぶりです。間もなく梅雨の時期ですが、体調はいかがでしょうか。


 この間、お父さんが送ってくださったさくらんぼは、宿舎のみんなと分けて頂きました。

 おかげで部下とも最近打ち解け、うまくやっております。その節は、ご心配をおかけして申し訳ございませんでした。貴方の息子は少しずつ、新しい環境に慣れております。


 間もなく父の日ですね。例年どおり、心を込めて三人分選びました。父の日ぴったりに届くようにお送りします。他のお二人にもお手渡し願います。


 戦車のお父さんはお変わりないですか。あの方は素直ではないので、なにか悪いところがあっても誰かに相談などしないのは理解していますが、息子はいつもお体を心配していますとお伝えください。


 師父はまた英国でしょうか。多忙は承知していますが、それでも年に一度はお顔を見せていただきたいです。

 もし師父が帰国したら、そのときはぜひお父さん方みんな揃って、横浜にいらしてください。拙いですが精一杯おもてなしをいたします。

 家族四人が揃って過ごせるならば、この影幸(かげゆき)はそれほど嬉しいことはありません。


 閑話休題。


 二日前、東京・六本木で起きた事件について報告いたします。


 大量の失踪者を出した、例の”(くだん)”の闇オークションの会場の件です。


 主催側については、目下調査中。会社名は架空のもので、登記上の住所には経営実態がありませんでした。おそらく裏社会のペーパーカンパニーではないかと警察は予測しています。


 以前、お父さんの資料にあった、例の反社会組織のフロント企業とも関係があるのかもしれません。

 こちらは、引き続き二課と共同で捜査を進めております。


 オークション会場は、表向きは会員制のディナーショーということで施設管理側に貸出申請が出されていたそうです。プライバシー保護の観点から、会場内および通路に監視カメラ等は設置されておらず、記録映像は一切なし。


 一階エントランスホールのカメラ、ならびに駐車場やエレベーターの記録などを元に、オークションの客と思われる人物をリストアップしていますが、確定情報が取れずこちらも苦戦中。

 生存者がいないこと、また顧客の関係者と思われる人物が一様に口を閉ざしていることから、有力な証言が取れていないのが現状です。


 この関係者の対応について、以下は私の予測となりますが、オークション会場やトイレから違法薬物を使用した痕跡が複数発見されたこと、また同ホテルが未成年の高級売春宿として頻繁に使われていたことから、どうも叩けば埃が出るような連中がオークションに参加していたのではないかと思います。


 表沙汰になれば自身の身に火の粉がかかる可能性もあるためか、失踪者の親族や関係者も、事情については知らぬ存ぜぬで押し通すつもりのようです。


 以上のように、闇オークションについて、まだはっきりとした情報を得られていないというのが正直なところです。この影幸、お恥ずかしいかぎりです。もし師父に知られた折には、地上のあらゆる辞書から拾ってきた罵詈雑言を受けてしまいそうで恐ろしい。この旨は師父には秘密ということで、何卒よろしくお願いいたします。


 ですが、いくつか気になることがあり、ぜひお父さん方に相談したいと思っております。


 一つ。オークション会場に残されていた、いくつかの箱について。


 会場から、奇妙な形をした箱をいくつか発見。破損がひどく、原型を留めていないものばかりでしたが、参考品として押収しました。

 CGで復元した推定画像を参照したところ、サイズがそれぞれ異なることが判明。おそらく一つ一つの箱が特注品と思われます。セキュリティーのため、電子ロックを始めとした特殊な細工が何重にも施されているようです。


 それ以外に、内蓋や底板に、不思議な模様が施されているのを発見しました。

 現代のいずれの国の言語、文化にも属さない、不可思議な文字と図面で組まれたパターンです。


 部下のアダムは、これを呪いを封じるためのまじないではないか、と推測しています。


 日本古来の呪法、ルーン文字、密真言、ヘブライ語、ソロモン諸島の文様が複雑に混じった極めて異質なものであり、素人が作ったものでは決してないと断言しております。


 この文様は我々ブレイドの資料にもない、まったく新種のパターンです。取り急ぎ、写真を添付いたしましたので、お父さんの方でもぜひご確認お願いいたします。お心あたりがあれば、一報お願いいたします。


 この箱について、我々のチームは”件”の運搬のために用いられた箱ではないかと推測しています。


 見ただけで、触れただけで呪いを振りまく”件”を、どうやって彼らが管理していたか。この箱の解析が、一つの答えとなりそうです。箱について、引き続き調査を進めます。


 2つめ。オークション会場の失踪者について。


 多数の顧客たちが一夜の間に消えた本件について、不可解な点がいくつもあります。

 

 まず、あまりにも収束が早すぎる点。


 本件は、会場に持ち込まれた”件”が何らかの理由により暴走した結果、多くの失踪者を出した事故と推測されています。


 通常、”件”が隔離空間を生み出したならば、その収束には時間がかかります。これだけ多数の失踪者を出した強力な”件”なら、経験上最低一週間は隔離が起きていたでしょう。


 しかし本件は、施設の管理会社社員が様子を見に訪れた午前七時には会場から人がごっそりと消えていた。警察に通報が入り、我々が現着した8時過ぎの蝕値(しょくち)は正常値を記録。隔離空間はすでになく、事態は収束していた。

 よって、”件”のかくしは管理会社社員が来る午前七時以前に、強制的な遮断が起こった、つまり失踪を引き起こした原因たる”件”は、消滅していたとみられます。


 では、それを行ったのは誰か。


 ”件”の消滅を可能とするのは、我々ブレイドのみ。

 しかし我々は関与していない。となれば、オークション会場に出入りしていた誰かが事態を収束させたと考えるのが自然です。


 一人だけ、我々には心当たりがあります。

 以前にお話した、いつぞや我々が隔離空間のなかで出くわした、話の通じない巨躯の男です。

 殉職したエージェントの装備を勝手に拾って使ったあげく、そのまま持ち逃げしていったあのガラの悪いメルヘン男です。


 男のその後の消息は掴んでいませんが、反社会勢力が会場を押さえていたこと、紛失した装備の在り処を考えると、あの男がそれらに繋がる可能性はゼロではありません。

 本件と平行して、あの男の身辺について調査を進めていきたいと思います。


 現時点での報告は以上となります。

 また、情報が入り次第、ご報告させていただきます。


 もうすぐ暑い夏が始まります。どうか、体調に気をつけてご自愛ください。


 あなたたちの息子 禅舞(ぜんまい)影幸より

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