【学園編SS】交換ノートをつけた話
リュカ「はは、お前は童謡のトナカイさんか!」
鼻が真っ赤だと僕はリュカ様に笑われてしまった。
今度は以前とは逆に、僕がノートを届けに、リュカ様の部屋を訪ねていたのだった。
ルナ「そんな、ひどい!」
恥じらって赤い鼻を隠そうとするも手遅れ。
ルナ「(来いって言ったのはリュカ様の方なのに……)」
リュカ「隙あり!!」
鼻先に1回だけキスをされた。
アンコールはないのかといじらしくおねだりをしたが、残念ながら「もう1回」は、ないらしい。
残念だ。
僕が届けに来たノートを早速受け取って机の上に置くリュカ様。
マフラーを僕が解き終わる前には読み終えたらしく、ほくほく顔で返事を書いている。
今回持ってきたのは普通の学習ノートではなく交換日記である。
わざわざ学び舎の敷地も寮も違う僕らをつなぐ、交流の手段だ。
リュカ様が四年生の冬にしていた文通の名残でもある。
そのかいあって、あの頃のそわそわとした待つ楽しみが継続していた。
ただし自分の交換日記をサボりがちな僕はなかなか持っていかないのでリュカ様にお小言をもらっていた。そうして今日、ついに待てなくなったのか、催促が来てしまった、というわけ。
ルナ「(リュカ様がまめにコメントをくれるのは嬉しいけれど……)」
ルナ「二冊買った意味なかったですね?」
リュカ様には「おい!」と小突かれてしまった。
律儀な彼はその間にも赤ペンを入れている。
返事も認めているようで、なんだかいつもよりごきげんだ。
こんなに簡単に機嫌を取れるならもうちょっとこまめに返してもいいかな、と思った。
リュカ「次もちゃんと持ってこいよ」と、ノートを返却される。
あとから聞いた話。
じつはリュカ様は僕視点で書かれる交換日記から、僕の視点の世界というものを楽しんでいた、とのこと。
交換日記は、たまにふっと吹き出しては笑顔をもらえ、思い出したように交換日記に書かれていた内容を実践してみたくなった彼の好奇心をくすぐったりと、純粋な気持ちで楽しんでいたそうだ。
僕の方は周回ペースでやってくる日記になにを書こうかあくせくとしていたが、彼にしてみればどんな内容でもよかったとのこと。
ルナ「(もう、それ早く言ってくださいよ〜〜)」
ただし、こだわった一文に花丸がついた時は最高に嬉しかったので、僕もまんざらではなかった。
交換日記はお前の失敗で笑えるから好きだ、そううそぶいた横顔が、未だにまぶたに焼き付いているのだった。




