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第201話 勇者召喚2

 ドラゴンの魔石を手に入れた王艶は、睡蓮宮に籠もった。勇者召喚の魔法陣の起動に二千人もの生活魔法が使える人員を使い潰し、また新たに千人を追加していた。

 

 「イスラは、もうこの世にはいないのに、なぜそこまでする必要がある?」


 ディアナとの戦いで、ネイサン王国は滅亡したと確信していた芳は艶に尋ねた。


 「どうせ、また次の男を充てがわれるだけです。ならば、いっそのこと…」

 「父上を殺すか?それとも、この国を潰すか?」

 「兄上!」

 「俺は、どちらも反対はしない」


 20歳になった王芳が、政務の手伝いがてら市井の視察に出た時の事である。露店の饅頭屋から、明るい声がした。


 「おじさん、貧血気味だろ?」

 「何でわかったんだ?」


 売り子の女性が目の前の男の顔に手を伸ばし、下瞼をペロンとめくった。


 「瞼の内側が白くなってるもの」


 女性は自分が売る饅頭に、隣の露店で売られている茹で肉の細切れをたっぷりと乗せ、男に手渡した。


 「肉多めにしといたよ。これで今日一日は、無事に仕事出来るよ!で、銅貨3枚ね!」

 「雨桐には、かなわねーな」


 周囲の笑い声の中、芳は面白い女がいるなと思った。どうやら、彼女には医療の知識と共に、周囲を明るくさせる魅力があった。別の日には浮浪者に食べ物を分け与える姿を見た。また別の日には、露店横の道に棒切れで文字を書き、子供たちに文字を教えているところも目撃した。


 「兄さん、最近よくこの辺りで見かけるね」


 雨桐から声をかけられた事がきっかけとなり、話すようになった芳が彼女を好きになるのに、そう時間はかからなかった。

 どうやったら今の地位を保てるか、どうやって王妃を蹴落としてやろうか?とか、王子を口説き落とそうとか云う計算高く、ギスギスした王宮の女達とは違うところに好感を持ち、彼女のもとに通い愛し合う様になった。


 「子を授かったみたい」

 「本当か!」


 喜び勇んで「妻に迎えたい女性がいる」と国王に告げ了解を得た芳だったが、翌日、雨桐は1枚の手紙を残し消えていた。


 『私には、過ぎた相手だった』


 王子である事を恨んだ。そして、町の酒場でグダグダに酔い潰れていた所で、実は雨桐が行方をくらませたのではなく、王宮の兵士達に家族ごと殺されたのだと聞かされた。

 以来、芳は国王への復讐を考えていた。


 「正直に言って、領土拡大やら世界統一などに興味はないんだ。ただ、雨桐に生きていて欲しかった…」

 「兄上…王になって下さい。王となって、この国を変えて下さい。私が、お手伝いしますから!」

 「艶…」


 その時だった。

 睡蓮宮からバタバタと官吏が走ってやってきた。


 「王艶様!勇者召喚の魔法陣が起動を始め、魔石から膨大な量の魔力が流れ始めました!」

 「!?」

 「もう、止められないな?」

 「そのようです」

 「ならば、悪者に徹するしかない」

 「艶がお供致します」


 睡蓮宮に向かうと、とてつもないエネルギーの塊が魔法陣に向かっていた。

 魔法陣の中央から目を開けていられない程の強い光が放たれた。それが暫くの間続き、まるで霧が晴れたかのようにすーっと落ち着いた。

 魔法陣の中に、3人の男がキョトンとした表情で立っていた。


 「まだ、子供じゃないか…」


 そう呟いた芳を押しのけ、艶は必死の形相を作り演技した。


 「勇者様!どうか、この国をお救い下さい!」



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