第197話 ウルフズブルグ8
階段を降りながら、クレメンスが聖なる盾に魔力を流し込む。
40階層に足を一歩踏み入れた途端、レッドドラゴン2体が口を開いた。
「ドラゴンブレス来るぞ!」
ミハイルが叫ぶやいなや、とてつもない衝撃波がメンバー全員を襲おうとしたが、その衝撃波は全て聖なる盾に吸い込まれた。
念の為、ディアナが対物理・魔法攻撃100%の結界を張っていたが、聖なる盾の能力はその比では無かった。
聖なる盾は、吸ったドラゴンブレスを魔力に変換し、聖属性の魔法として放出した。
一瞬の事だった。
いや、この一瞬で決着がついたのである。
「聖剣やローブの出番、無かったね」
「あ?あぁ…」
ミハイルも苦笑いだ。
「あぁ〜!私達の旅の資金が〜!」
聖なる盾が放った魔法で、骨の欠片も残らない有り様にクレメンスが叫んだ。
「もしかして、現地調達の自給自足だったの?」
「そ、そ、そうです」
「ぶふっ…あ、ちょっと待て、ドロップアイテム出るぞ」
宝箱が4つ出現した。
中を確認すると、ドラゴンソード、ドラゴンの盾、フェンリルの魔石、ミスリル鉱石50kgが入っていた。
ディアナは全てをマジックバッグに詰め込み、クレメンスに手渡した。
「すぐ換金出来る物があって良かったね。ぶふっ…」
「ありがとうございます!」
安心した表情のクレメンスに、ミハイルが声をかけた。
「盾無しで、もう一回戦ってみないか?」
「はい?」
「聖剣やローブの効果も見てみたいんだ」
「構いませんけど…」
「じゃ、決まりだ。階段に戻るぞ!」
皆バタバタと階段に戻り打ち合わせをした。
「盾はマジックバッグに入れとけ」
「はい」
「で、ディアナは結界と拘束を頼むな」
「は〜い」
「魔法剣士と俺とでフェンリルを倒すぞ」
「了解しました」
「クレメンス、聖剣でドラゴン2頭行け!」
「に、2頭ですか!?」
「危なきゃ、ディアナがフォローする」
「わ、わかりました」
「支援系の二人も頼むな」
「はい!」
「行くぞ!」
ディアナが緑魔法の蔦で拘束。
回復・支援系魔道士が攻撃力アップの魔法で剣士達を支援。
一斉に飛びかかり、フェンリル2体を倒した。
残るレッドドラゴン2体は、クレメンスが剣技『一刀両断』で2体同時に首を切断した。
「…3分もかかってない」
「結局のところ、聖剣の力は判らないままじゃねえか」
お宝のフェンリルとレッドドラゴン2体ずつは、クレメンスのマジックバッグに収納された。
皆揃って転移魔法陣を使って1階に移動した。
こうして、ウルフズブルグのダンジョンは計7回踏破され、スタンピードを抑える事に成功した。
もう既に辺りは真っ暗で、かろうじて遠くに見える村の灯りを頼りに、移動するしか無い。だが、もし村の入り口が閉じられて入れなければ、野宿するより他に無い。
すると、ベアトリーチェからメールが届いた。
「村の衛兵さんにディアナ達が来る事を伝えてあるから、早めにね」
亜空間部屋に皆を突っ込み、距離指定移動で転移。入り口前で皆を開放して、一緒に村に入った。
そして、村の唯一の宿屋に向かった。
「お疲れ様〜勇者三点セットはどうだった?」
ベアトリーチェに尋ねられたミハイルが答える。
「盾の性能が凄すぎて、開始数秒で終わった…剣に至っては、さっぱりわからん」
「ありゃまぁ〜」
ベアトリーチェは宿屋に貸し切りの代金として金貨50枚を払ったらしく、店主も女将も大喜びでてんこ盛りの食事を用意してくれていた。
「腹一杯喰って呑んで、寝るぞ〜」
「ミハイル兄さん、お酒は無しよ?」
「え?嘘だろ?嘘だと言ってくれ〜!!」




