第184話 グラーツ領主邸
15階層を終え、冒険者ギルドカウンターでグラーツ領のウルフズブルグのダンジョンでスタンピードが起こりつつあると、ディアナは報告した。
「グラーツ領内にある他のダンジョンはどんな様子なのか?ギルドがどれだけ把握出来ているのか知りたい」
ディアナがそう言うと、受付嬢は「少々お待ち下さい」とスタッフルームに消え、しばらくして王都のギルマスが姿を現した。
その頃には、沙織チームもディアナチームに追い付き、一緒に説明を聞く事になった。
「どこから説明したものやら…」
ギルマスは困惑した表情で最初から言葉を濁した。
「端的にお話すると、理由あってグラーツ領内のダンジョンは一時的に閉鎖しておりました」
「えっ?」
「『グラーツ領内に盗賊団がいるようだ』と言う噂が立つようになったのが2年半前。グラーツ領を訪れる冒険者は激減しました。それでも、1日に5パーティ位はダンジョン探索に訪れていたのです」
そして約1年半前、グラディウス商会が新しい鑑定具を発表した。新しい鑑定具は、人物鑑定やアイテム鑑定迄出来る画期的な魔道具だった。冒険者ギルドは、資金が許す限り新しい鑑定具を購入し、各地に設置した。勿論、グラーツ領内にある3つのダンジョンの入り口にある簡易冒険者ギルドにも設置した。そして、古いギルドカードを新しい鑑定具に合わせたカードに発行し直す際に、ある事が発覚する。
「領内の3つのダンジョンに潜るパーティの殆どが、冒険者を装った盗賊団である事が判明したのです」
「鑑定具の人物鑑定がはじき出したのね?」
「えぇ、そうです。それで、グラーツ領主と話し合いの結果、暫くの間閉鎖する事になりました」
その後、簡易冒険者ギルドも一時撤退し、警備兵だけが残ったのだが、その警備兵達も現在は行方不明だと言う。
「現地徴用の警備兵が、盗賊団の一味だった可能性も出て来たのです」
「!?」
「グラーツ領主は90歳を超すご高齢で、白内障で目が見えず車椅子での生活を余儀なくされていましたので、どなたかに跡を譲ろうとなさっておりましたが…3日前、領主邸の庭で遺体となって発見されました」
盗賊団殲滅作戦を決行する直前、オクタヴィア大公が王国騎士団の副団長と騎士団及び隣の領地ベオグラードの領主を連れてグラーツ領主邸を訪ねた。ところが、家人が誰も応対に現れず、バタバタと屋敷の中から人が飛び出して行くのを見つけ数人を捕らえると、それは盗賊団の一味だったと言う。
捕らえた盗賊達への尋問から、領主邸に押し入った時には既に領主及び家人達は殺害されており、やむなく庭に埋葬したのだと言う。
「そんなの嘘ついてるに決まってるじゃない!」
ベアトリーチェが叫んだ。
「もうすぐ王都に連行されて来る手筈になってるので、王妃様のスキルで見てもらう事になるかと…」
「わかりました。今、私達に出来るのは、グラーツ領内にある3つのダンジョンを一刻も早く踏破しつつ、ホテルへの入り口を繋げる事だけ。ギルマスは、一人でも多くの冒険者をこの地に呼び込んで下さい。そうすれば、スタンピードは抑えられる筈」
「はい。ホテルへの入り口が出来た階層から、即刻ダンジョン探索を再開させます」
王都のギルマスは、急いで帰って行った。
ディアナ達がどの階層迄到達し、ホテルへの入り口を繋いだかは、ホストAIが順次表示させてくれるだろう。
「ベアトリーチェ、沙織、帰宅が予定より遅れるけど、付き合ってくれる?」
「「もちろん、OK!!」」
「ありがとう」




