第174話 囚人の塔2
19〜21階層、アシッドスパイダーとミスリルスパイダー、スケルトンナイトとシャドウナイト。ミスリルスパイダーの吐くミスリルの糸に手足を絡められ、アシッドスパイダーの強酸攻撃を受け、スケルトンナイトに切りつけられる!が、おそらく一連の流れなんだろうと思われる。結界を張っているのでどの攻撃も防げているが、一般の冒険者だとこの攻撃は耐えられないだろうと思えた。
「だから、最高到達点が20階層なのか…納得」
21階層、この階層を終えたらホテルに泊まろうと考えていた矢先、鎧を付けたスケルトンナイトに遭遇した。
「さまようよろいかよ…?」
だが、そのスケルトンナイトは他のスケルトンナイトとは違っていた。
「あ、あんた…じょ、浄化魔法…」
「え?言葉を…?」
「30階層の…スケルトンキング…を、救ってやってくれ」
「それって、ラスボス?」
『さまようよろい』は、頷いた。
「あれは、ここの領主の息子…」
確か、リンドバーグ侯爵から「30年前、息子がダンジョン内の冒険者を救助しに向かったまま戻らなかった」と聞いていた。
「自分を犠牲にして、冒険者を助けたのだが…」
「わかったわ。浄化すればいいのね?」
またもや『さまようよろい』は頷いた。
「俺も…浄化してくれ…」
「…いいの?」
「いい」
浄化魔法をかけると、キラキラした光に包まれて消えた。
カラン
消えた跡にリンドバーグ家の紋章が入った、騎士の持つ認識票が残った。ディアナは、涙が溢れて仕方なかった。『さまようよろい』は、領主の息子を救助するために向かった騎士だったのだろう。領主の息子を助ける為に、身はスケルトンナイトとなっても心は騎士のまま、30年間意識を保ち続けていたのだ。救ってくれる誰かを探し求めて…。
その後、ホテルに泊まったディアナは迷った。
「リンドバーグ侯爵を30階層に連れて行くべきか…」
迷って迷って答えが出ず、ディアナはダンジョンホテルにグラディウス侯爵を呼んでもらった。
「ディアナ、どうしたのだ?今、どこのダンジョンにいる?」
「リンドバーグ領の囚人の塔です」
「ああ、あのアンデッド系ダンジョンか」
「お父様、これを…」
あの騎士だったスケルトンナイトが落として行った認識票を見せ、事の次第を説明した。
「引き合せたい気持ちは解らなくはない。だが、果たして…」
「人では無くなった息子に会いたいかどうかですよね?」
「その騎士の様に、ある程度の意識が保てていれば良いが、そうでなければ辛さが…」
「そうなんですよね。でも、決別はできるかな?と…」
「少し時間をくれないか?リンドバーグ侯爵をここに呼んで、話を聞いてもらおう」
翌朝、ホテル内の小会議室を借り、リンドバーグ侯爵と娘婿の次期領主ウリエルを交え、『さまようよろい』に遭遇したところから説明した。
「この認識票は、当時リンドバーグ領の騎士団長だった父、ラファエルの物です」
ウリエルは認識票を手に涙した。
「30年もの間、意識を保っていたなんて…よほど心残りだったのでしょうね」
「儂は、30階層の息子に会いに行くぞ!例え、どんな姿に成り果てていたとしても、最期を看取ってやりたいんじゃ!」
「私も行かせて下さい!」
リンドバーグ侯爵も娘婿のウリエルも30階層に行くと言う。その返事を聞いてグラディウス侯爵は、ディアナに尋ねた。
「ディアナ、可能なのか?」
「ホストAIは、作った私の意志を尊重してくれるそうですから、大丈夫だと思います」




