第175話 囚人の塔3
その日、ディアナは29階層迄一人で進み、ホテルでリンドバーグ侯爵とウリエルとおちあい、連れ立って30階層のスケルトンキングと対峙する事になった。
「お父様もいらっしゃるのですか?」
「ああ、お前が戦う姿を一度見ておこうと思ってな」
「では、御三方に結界を張らせていただきますね」
対魔法・対物理攻撃100%の結界を3人に張り、30階層への階段を登った。
部屋に入った途端、もの凄い重圧に心臓が押しつぶされそうな感覚があった。
まるで、どこかの王城の広間の様なレッドカーペットの先に数段の階段があり、その上の玉座にスケルトンキングはいた。
ルビーやサファイアがあしらわれた金色の王冠の下には、目だけが爛々と輝く頭蓋骨があった。立ち上がったその身丈、およそ3メートル。
「よくぞ、ここまで参った!褒美をくれてやろう!」
いきなり闇魔法での攻撃を受けた。剣に聖属性魔法を流し、それを防いだ。
「ほう?コレを防ぐか」
次は、短距離転移で近づき剣での撃ち合いとなった。何度か弾き飛ばされながらも、少しずつ相手の力を削りとって行くディアナ。戦闘開始して10分が経過した頃の事だった。
「エドガー!!儂じゃ!」
リンドバーグ侯爵が息子の名を呼んだ。
「平和を愛するお前が何をやっとるんじゃ!正気を取り戻せ、エドガー!」
リンドバーグ侯爵が数回呼びかけると、スケルトンキングに変化が現れ始めた。スケルトンキングの体から、剥がれるように人の姿が見えた。
アレは…
デパートの屋上で見た、ウ●ト●マンから半身を出してタバコを吸っていた、お兄さんの姿に似て…
いやいや、こんな時に何を思い出してんだ、私?
「エドガー!?」
「お、親父殿…?」
どうやら、まだ僅かに意識が残っているらしい。
「お前に会いにやって来たんじゃ!お前の最期を看取ろうと思ってな」
「親父殿…すまない…生きて帰れなんだ…」
「よいのじゃ、今、こうして会えておる」
「親父殿と、リンドバーグを護る約束を果たせなんだ…」
「なに、このディアナ嬢が近隣の小国を巧くまとめてくれたのでな、今はとても平和になったんじゃ」
「そうなのか?良かった。長い間、スケルトンキングを抑え込んでいたつもりだったが、最近、自分でいられる時間が短くなってきていた所だったのだ」
「ああ、わかっとる。浄化してもらうが良いか?」
「頼む。少しでも人の心がある内に会えて良かった」
リンドバーグ侯爵はディアナの顔を見て頷いた。
「親父殿の息子に生れて、幸せだった」
その言葉を最期に、キラキラした光に包まれエドガーが消えた。残るスケルトンキングと心置きなく戦えるようになってからのディアナの攻撃は凄まじく、見ていた3人は驚きの連続だった。
そしてついに10分後。
カランカラン
スケルトンキングが消えた跡に、柔らかい乳白色に銀色の星型の模様が入った魔石と、ルビーやサファイアがあしらわれた王冠が残った。
ディアナは魔石を鑑定し、王冠と共にリンドバーグ侯爵に手渡した。
「この魔石は、エドガー様の想いが込もった『邪神避けの魔石』です。病魔を阻み、心の安寧をもたらす効果のあるものと鑑定結果が出ています。宝となさいませ」
「ディアナ嬢、ありがとう。本当に、ありがとう」
リンドバーグ侯爵は、ディアナの手を握り何度も何度も礼を言った。
囚人の塔の踏破報告を済ませ、リンドバーグ侯爵を屋敷まで送り届けた後、グラディウス侯爵が言った。
「ディアナ、私にはあんな思いをさせてくれるなよ?」
「う…ん、たぶん大丈夫」
「多分か?」




