レオンハルト殿下とレオノーラ【祝ブクマ5000突破】
ブックマーク5000件を突破しました!
ここまでお読みくださった皆様、本当にありがとうございます。
感謝を込めて、短い番外編をお届けします。
最終話のレオンプロポーズ直後の話です。
「よし。では、解散!」
北方男爵が、唐突に声を上げた。
「お父様……?」
レオノーラが目を瞬く。
「話もまとまった。俺たちはもう必要ないだろ。行くぞ」
北方男爵はそう言うと、リエネたちを促し、さっさと部屋を出ていった。
扉が閉じると、室内は急に静まり返った。
レオンは、レオノーラと向かい合う。
ようやく、二人きりになった。
伝えたいことはいくつもあったはずなのに、いざ彼女を目の前にすると、何から言えばよいのか分からない。
ただ、レオノーラがここにいる。
自分のもとへ来てくれた。
隣に立ちたいと、自ら望んでくれた。
その事実が、まだ夢のようだった。
レオンは手を伸ばし、レオノーラの頬に触れた。
「……殿下?」
「いや……怖い思いをさせてしまったと思って」
レオノーラは柔らかく微笑んだ。
「あの場には、殿下がいらっしゃいましたから」
その言葉に、張りつめていたものがほどけていく。
レオンはレオノーラを引き寄せ、そっと抱きしめた。
「殿下……?」
胸元に、彼女の体温が伝わる。
北方を離れてから、何度も思い浮かべた人が、今ここにいる。
「……会いたかった」
レオノーラの腕が、レオンの背へ回った。
「わたくしもです……」
安堵が広がるとともに、ふと、数日前に書いた手紙のことが胸をよぎる。
しばらくして、レオンは抱擁を緩めた。
「……レオノーラ。 数日前、君に手紙を送った」
レオノーラが顔を上げた。
「わたくしに?」
「ああ。 できれば……読まないでほしい」
「なぜですか?」
レオンは目を伏せた。
「君から離れようとしていた時に、書いたものだからだ」
レオノーラは、しばらく黙って彼を見つめた。
「でしたら、なおさら読ませていただきます」
「……レオノーラ」
「たとえ過去のことでも、殿下が何に苦しんでおられたのか、知っておきたいのです」
「だが、君を傷つけることが書いてある」
「今の殿下のお気持ちは、もう伺いましたもの」
レオノーラは、微笑んだ。
「ですから、大丈夫です」
「……君には、かなわないな」
レオノーラは答える代わりに、レオンの胸へ頬を寄せた。
レオンは一瞬、息を止める。
こんなふうに時折、ためらいもなく身を預けてくれる彼女が、たまらなく愛おしい。
レオンは再び、その身体を深く抱き寄せた。
もし、あの評議の場で北方男爵が声を上げてくれなかったなら。
自分はきっと、レオノーラを守るのだと言い聞かせたまま、あの手紙を最後に彼女を手放していた。
そう考えた瞬間、背筋に冷たいものが走る。
今ここにある幸せを、自ら失うところだったのだ。
「……危なかったな」
思わずこぼれた言葉に、レオノーラが顔を上げる。
「何がですか?」
レオンは少し迷った末、正直に答えた。
「旦那様には、何度救われたか分からない」
北方で命を救われた。
王都へ戻る道を開いてもらった。
そして最後には、レオノーラを手放そうとしていた自分の目まで覚ましてくれた。
レオノーラは、どこか誇らしげに笑った。
「わたくしの申したとおりでしたでしょう?」
「……ああ」
「お父様は、わたくしの願いをいつも叶えてくださるのです」
レオンもつられるように笑みをこぼした。
「そういえば、旅の途中で、旦那様が君のことを話していたよ」
「お父様が? 何をですか?」
「レオノーラは、おねだり上手だと」
「まあ、お父様ったら……」
「それから、『お前はされたことがないのか』と聞かれた」
レオノーラが、恥じらうように目を伏せる。
「……私には、してくれないのかい?」
レオノーラはレオンの胸に頬を寄せたまま、しばし迷うように黙り込んだ。
やがて、小さな声で尋ねる。
「……では、よろしいですか?」
「ああ。何でも言ってほしい」
「もう少しだけ……このままでいさせてください」
レオンは目を細めた。
「それがおねだりなら、いくらでも」
レオノーラの額へ、口づけを落とす。
そして、彼女がここにいることを確かめるように、抱きしめる力を強めた。
今度こそ、もう離さなくていい。
レオノーラも何も言わず、それに応えるように身を預ける。
二人はしばらく、そのままでいた。
エレガンスな椅子「ああっと! ここで北方男爵らが退場! レオノーラ嬢とレオンハルト殿下が二人きりに! ……な、なんと! レオンハルト殿下が――」
エレガンスな机「黙れ」




