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今世で勝ち組辺境男爵の俺、家族を守るため王位継承争いに殴り込む  作者: 福嶋莉佳


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『今世で勝ち組〜』ご都合主義版

ご都合主義を入れる塩梅って、難しいですね。


父ちゃんがリアム・〇ーソン。


■第1話


王都の夜会。


楽団が奏でる優雅な音楽に合わせ、レオンハルト殿下とレオノーラが広間の中央で踊っていた。


二人が見つめ合うたび、周囲から微笑ましげな声が上がる。


その光景を、エスメラルダは扇の陰から睨みつけていた。


「レオンハルト様には、わたくしこそがふさわしいのです」


そばに控えていたクラリッサが、慌てて目を伏せる。


その拍子に、手にしていたハンカチが床へ落ちた。


「あ……」


クラリッサが拾おうと身を屈めた瞬間、エスメラルダの靴が、その指先を踏みつけた。


ぐりぐり。


「い、いだだだ……エスメラルダ様……!」


「ほほほっ。わたくしを不快にさせた者は、こうなるのです」


「も、申し訳ございません!」


「覚えておきなさい」


エスメラルダは扇を閉じると、踊っている二人へ冷たい視線を向けた。


「レオンハルト様も、あの田舎娘も、最後には必ずわたくしの前にひざまずくのですわ」


敵が、わかりやすい。


■第2話


吹雪の北方街道。


俺たちが雪の中を捜していると、あちこちから次々と声が上がった。


「うわーん! 助けが来たよぉ!」


「こ、こっちだ! まだ生きてる!」


雪の中で眠り込んでいた兵士も、ゆっくりと目を開いた。


「う……救助か?」


「そうだ。もう大丈夫だ」


兵士の目から涙がこぼれた。


「ロイ……マルクは……」


「こっちだ……」


「俺もいるぞ……」


どこからか、弱々しい声が返ってくる。


雪に埋もれていた兵士も、倒れた馬車の陰にいた兵士も、林の中で動けなくなっていた兵士も、全員見つかった。


凍傷や怪我はあるし、治療が必要な者もいる。


だが、死者は一人もいなかった。


遭難した兵士は、全員助かる。


■第3話


救出されたオルトは、寝台の上で目を閉じたまま、しばらく黙っていた。


俺は寝台のそばに椅子を置き、腕を組んだ。


「誰の命令で北方まで来た?」


オルトが、ゆっくりと目を開く。


「第一王子殿下の命だ。名目は、第二王子殿下の殺害」


俺の隣にいたバーデンが、呆れたように首を傾げる。


「やっぱり、王命ではないのね」


オルトは震える手を懐へ入れ、折り畳まれた書面を取り出した。


「命令書だ」


俺は受け取り、書かれている内容へ目を通した。


『故王陛下の御遺志に基づき、王宮秩序回復のため、第二王子レオンハルト殿下を殺害せよ』


「……そのまま書いてあるな」


「ああ」


バーデンが眉を上げた。


「便利な御遺志ねぇ。死人は否定できないものね」


オルトは苦しげに顔を歪めた。


「俺は止めようとした。せめて王宮へ確認を取るべきだと言った。だが、第一王子府から来た監察役が、王命に逆らうのかと兵を進ませた」


「その監察役は?」


「生きている。隣の部屋だ」


命令が、どストレート。


■第4話


王都。


北方から駆け戻った伝令の報告を聞き、第一王子アルベールは椅子を蹴って立ち上がった。


「レオンが生きている!?」


「は、はい。北方男爵家に保護されているとのことです」


「ど、どうしよう……母上!」


アルベールは、すがるように王妃イザベラを見た。


「落ち着きなさい、アルベール」


「ですが、母上! レオンが戻ってきたら、私が命令を出したことが明らかになります!」


「王弟殿下が何とかしてくださいます」


「本当に大丈夫なのでしょうか。レオンは昔から、私の言うことを聞かないのです。今回だって、素直に死んでいれば――」


そこへ、勢いよく扉が開いた。


「恐れる必要などございませんわ!」


エスメラルダが、堂々と部屋へ入ってくる。


「しかし、レオンが戻れば命令書のことが――」


「その前に、北方男爵家を潰せばよいのです」


エスメラルダは卓上の地図へ歩み寄ると、北方街道の上へ指を滑らせた。


「故王陛下暗殺の容疑を、北方男爵にかければよいのですわ。そうして北方男爵家を潰し、北方街道を手に入れる。リュミエールとの宝石交易も、すべて王都のものになりますわ」


「そんなにうまくいくのか?」


「お父様も、すでに動いておりますわ」


アルベールは、もう一度イザベラを見た。


「母上……エスメラルダの言葉を信じてもよいのでしょうか」


「ええ。何も心配することはありません」


「母上がそうおっしゃるなら……」


アルベールのマザコンが、悪化する。


■第5話


レオン殿下が王になると決めた夜。


俺は領主館の奥にある小さな居間で、リエネと二人きりになっていた。


「レオン殿下が王になったら、レオノーラは王妃になるかもしれない」


リエネが尋ねる。


「あなたは、どうお考えなの?」


「え? 俺か?」


俺は首を傾げた。


「そりゃあ、誇らしいだろ。俺たちの娘が王妃になるかもしれないんだぞ」


「心配ではありませんの?」


「心配なんてあるか? あいつなら大丈夫だ」


王妃の仕事が何なのか、俺はよく知らない。


だが、レオノーラなら何とかするだろう。


「何かあったら、俺が王宮ごとひっくり返す」


「そうですわね」


リエネは微笑むと、俺の隣へ座り直した。


さっきより近い。


「それより、あなた」


「なんだ?」


「せっかく二人きりになれたのですよ?」


「うん」


「娘の話ばかりなさらず、少しはわたくしを見てくださいませ」


「……」


リエネが、さらに距離を詰めた。


俺の腕へ、柔らかなものが触れる。


「あなた」


「……はい」


「今夜は、まだ長いですわ」


リエネが、お色気担当。


■第6話


翌日、第一王子府から使者が訪れた。


使者が差し出したのは、北方男爵家が毒物を王都へ搬入した疑いがあると記された書状だった。


俺は最初から最後まで目を通し、書面を卓へ置いた。


「第一王子府の印しかない。王命ではないな」


「そ、それは……王宮臨時会議の承認を得ております」


「承認者の署名がない」


使者が黙る。


「そもそも、毒物を搬入した日付が書かれていない」


「……」


「運んだ荷馬車も、通過した検問所も、王都へ入った時刻も不明だ。これでは調査のしようがない」


「現在、確認中でして……」


「確認もできていないのに、うちへ疑いをかけたのか?」


「第一王子府としては、重大な疑惑を放置するわけには――」


「これ、調査するための書状じゃないな」


使者の肩が跳ねた。


「北方街道に疑いをかけるためだけに出したんだろ」


「そ、そのようなことは!」


「なら、正式な王命を持ってこい」


「……」


「持ってこられないなら、帰れ」


使者は何も言い返せず、逃げるように屋敷を出ていった。


父ちゃん一人で、完結する。


■第7話


王都へ向かう準備を進めている最中、俺はレオノーラを廊下の先にある小さな休憩室へ連れていった。


「少しくらい休め」


俺は用意していたチャイを、小さな茶器へ注いだ。


レオノーラは茶器を両手で包みながら、しばらく黙っていた。


「殿下がな、王都へ行って王になると言っている」


「はい」


「それで、レオノーラには何と言ったんだ?」


レオノーラは、わずかに頬を赤らめた。


「玉座に座ったら、わたくしを迎えに行くと」


「ぶっ」


思い切りむせた。


「だ、大丈夫ですか?」


「大丈夫だ。気管に入っただけだ」


レオノーラは、まっすぐ俺を見ていた。


「お父様。わたくし、殿下と結婚したいのです」


「そうか……」


「レオン殿下は、わたくしが守ります」


そこに迷いがないことだけは、すぐに分かった。


「分かった」


俺は大きく頷いた。


「王妃を務めるのは大変だろうけど、お前ならできる!」


レオノーラの目が輝く。


「……はい!」


レオノーラが、強い。


■第8話


俺たちは王都へ向かう途中、クラウゼン子爵領へ立ち寄った。


事情を一通り説明すると、クラウゼン子爵は即座に立ち上がった。


「兵士をお貸しします」


「いや、そこまでしてもらうわけには――」


「馬も用意しましょう。ああ、近隣の領主にも声をかけなければ。殿下を荷馬車に乗せている場合ではありません。立派な馬車も用意させましょう」


クラウゼン子爵は、その場で机へ向かい、周辺領主への書簡を書き始めた。


「少し待ってください」


レオン殿下が止める。


「私に力を貸せば、あなた方にも危険が及ぶかもしれません」


クラウゼン子爵は、書簡を書く手を止めなかった。


「承知しております」


「それでも、兵を出すと?」


「殿下が王都へ戻らなければ、次に危険へさらされるのは我々です」


書簡へ署名し、クラウゼン子爵が顔を上げる。


「それに、殿下のために動ける機会を、我々が逃すとでも?」


翌朝には、三十人の兵士が集まった。


次の領地では五十人。


さらに次の領地では百人。


「うちからは弓兵を出します!」


「我が領では食料を用意しましょう!」


「王都までの宿駅は、すべて押さえておきます!」


「橋を封鎖されても問題ありません。裏道があります!」


「予備の馬車も出します!」


どこへ行っても、事情を説明しただけで領主が味方についた。


地方領主の結束が、異様に固い。


■第9話


捕らえた襲撃隊の隊長を、俺が尋問していた。


「第一王子府より、第二王子殿下の身柄を確保せよとの命令が出ている」


隊長は、そう繰り返す。


俺は尋ねた。


「王宮の命令か?」


「……王宮の――」


「王宮の、誰だ」


その時、背後から声がした。


「私の前で答えよ」


俺は勢いよく振り返った。


「殿下……」


レオン殿下が、兵たちの間をゆっくりと歩いてきた。


殿下が一歩進むたび、兵士たちが左右へ道を開ける。


やがて一人が膝をつき、それに続いて、その場にいた兵士たちが次々とひれ伏した。


襲撃隊長の顔色が変わる。


「お、お許しください、殿下!」


「命令を出した者の名を答えよ」


「王弟ヴィクトル殿下です!」


「目的は」


「レオンハルト殿下と北方男爵の殺害です!」


「証拠は?」


「命令書を持っています!」


隊長は懐から命令書を取り出し、即座に差し出した。


レオンの後光が、凄い。


■第10話


集められた地方諸侯を前に、レオン殿下は深く頭を下げた。


「どうか、力を貸してください」


広間が静まり返る。


「証言を。道を。兵を。そして、あなた方の領民を守るための判断を、私に貸してください」


しばらく誰も動かなかった。


やがて、クラウゼン子爵が拳を突き上げた。


「レオンハルト殿下……いや、陛下万歳!」


「まだ王ではありません」


「うちの兵士を使ってください!」


別の領主も立ち上がる。


「うちの馬も!」


「金も必要でしょう!」


「我が娘を侍女としてお連れください!」


「娘は必要ありません」


「では、我が姪を!」


「女性を薦めるのをやめてください」


「食料なら任せろ!」


「王都へ行くぞ!」


「殿下を王宮へお戻しするんだ!」


殿下の話を最後まで聞く前に、全員が立ち上がった。


地方諸侯のテンションが、高い。


■第11話


伝令が、第一王子府へ駆け込んだ。


「王都北方より急報! レオンハルト殿下の一行が、北街道を南下しております!」


アルベールが立ち上がる。


「何? もうそこまで来たのか」


「はい。人数は正確には掴めておりません。ただ、先触れの報では、兵だけで三百を超えるとも」


控えの間がざわめいた。


「三百……?」


「そんな兵を、地方領主が出したのか?」


「まだ増えているのだろう?」


近衛副長のオズワルドが青ざめる。


「三百もの兵が王都へ入れば、防ぎきれません」


「何とかしろ!」


「王都守備兵だけでは――」


そこへ、二人目の伝令が飛び込んできた。


「申し上げます! 街道沿いの領主がさらに合流! 兵は五百を超えました!」


「五百!?」


間を置かず、三人目の伝令が駆け込む。


「王都北門の守備兵が、レオンハルト殿下への恭順を表明しております!」


アルベールの唇が震えた。


「ど、どうしよう……母上!」


第一王子府の動揺が、すごい。


■第12話


五百を超える兵が、王都北門へ到着した。


王都の守備兵は、レオン殿下の姿を確認すると、抵抗することなく門を開いた。


「レオンハルト殿下に剣を向ける理由はありません」


バリケードは未完成。


王弟の私兵も、配置が間に合っていない。


俺たちは、そのまま王都へ入った。


ところが大通りへ差しかかったところで、黒い外套をまとった兵士たちが脇道から飛び出してきた。


「第二王子を討て!」


だが、俺は最初から気づいていた。


「バルド!」


荷馬車の上から矢が飛び、私兵たちの剣だけを弾き飛ばす。


「今だ! 囲め!」


俺は一人目の剣を奪い、二人目を蹴り飛ばし、三人目の首元へ剣を突きつけた。


バーデンたちも、残りの私兵を一瞬で包囲する。


俺は私兵隊長の胸倉を掴んだ。


「誰の兵だ」


「じ、実は……王弟ヴィクトル殿下の私兵でして……」


「誰に命じられた」


「ヴィクトル殿下です! 命令書が懐に入っています! 配置図もあります! 予備の命令書は詰所です!」


聞いていない証拠まで差し出してきた。


私兵が、すぐゲロる。


■第13話


王宮へ入ったレオン殿下の前で、王弟ヴィクトルは穏やかに微笑んだ。


「レオンハルト殿下。王家を取り巻く状況が不安定な今、王族同士が争うべきではありません」


「同感です」


「そこで、ひとつ提案があります」


「何でしょう」


ヴィクトルは、傍らに立つエスメラルダへ手を向けた。


「我が娘、エスメラルダとの婚約をお考えください」


「だが断る」


「……」


「私が望むのは、レオノーラだけです」


レオンの意思が、強い。


■第14話


王宮の控えの間。


エスメラルダが去ったあと、俺は卓に置かれた茶器を見つめた。


「バーデン。飲んでないか」


「ええ、もちろん」


バーデンは茶器へ口をつけたふりをして、中身を袖の内側に隠した布へ染み込ませていた。


「やっぱりか」


「香りが少し変なのよねぇ」


「この茶もだ」


俺は茶器を持ち上げ、底へ残った不自然な粉を確認した。


「あの女、手慣れてやがる」


「わたしたちを殺すつもりだったのかしら」


「だろうな」


俺は扉へ視線を向けた。


「これが失敗したなら、次は――」


言い終える前に、壁際の飾り棚を蹴り倒す。


棚の陰に隠れていた男が、悲鳴を上げた。


「ひっ!」


同時に隣室の扉が開き、短剣を持った男が飛び込んでくる。


俺は男の腕を掴み、そのまま床へ投げ飛ばした。


「ぐあっ!」


背中を踏みつけ、短剣を蹴り飛ばす。


「誰に命じられた」


「エ、エスメラルダ様です!」


「毒もか」


「はい! 毒も暗殺も、すべてエスメラルダ様の命令です!」


即自白。


父ちゃんが、有能。


■第15話


正式な評議の場。


エスメラルダは完璧なカーテシーを見せた。


「レオンハルト殿下。王家が揺れる今、わたくしにも、王弟家の娘として果たすべき役目がございます」


胸へ手を当て、レオン殿下を見つめる。


「微力ながら、殿下の重荷をお分かちしたく存じます」


「だが断る」


「……殿下?」


「私には、すでに生涯を共にしたい女性がいる」


レオン殿下は、評議に集まった貴族たちを見渡した。


「私が妃に望むのは、レオノーラ・ヴァルグレイヴただ一人だ」


「しかし、王家のためには、王弟家との結びつきが――」


「必要ない」


「わたくしであれば、宮廷貴族の支持も得られます」


「必要ない」


「辺境男爵家の娘では、王妃としての教育も――」


「レオノーラを侮辱するな」


「ですが、殿下――」


「断る」


エスメラルダが何を言っても、断る。


レオンの意思が、強すぎる。


■第16話


評議の最中、広間の扉が開いた。


入ってきたのは、ギデオンだった。


その手には、紐で束ねられた大量の書類がある。


「失礼いたします。王弟家私兵の詰所より、命令書と配置記録が発見されました」


ヴィクトルが、一歩前へ出る。


「そのようなものを、どこで手に入れた」


「発見に協力した者の保護のため、この場では伏せます」


「出所も明らかでない書類を、評議の場へ持ち込んだと?」


「ですが、配置を命じた者の名は記されております」


ギデオンは書類へ視線を落とした。


「命令者は、ヴィクトル・アルヴェリア殿下」


広間がどよめく。


「名目は、第二王子レオンハルト殿下の暗殺。成功の暁には、北方街道およびリュミエール交易の管理権を王弟家へ移すとあります」


「偽造だ!」


「ヴィクトル殿下の署名と印章があります」


「印章を盗まれたのだ!」


「命令を受けた私兵十二名全員が、殿下から直接命じられたと証言しております」


「そいつらは脅されている!」


「十二名全員が、殿下のお召し物、部屋に置かれていた酒、命令を受けた時刻まで同じ証言をしております」


「……」


「なお、エスメラルダ様の署名がある毒物購入記録も発見されました」


近衛兵が、ヴィクトルを取り囲む。


「王弟ヴィクトル殿下。第二王子殿下暗殺未遂の容疑により、身柄を拘束いたします」


「待て! 私は王弟だぞ!」


「連行してください」


即御用。


■第17話


追い詰められたエスメラルダは、レオノーラを睨みつけた。


「耳を疑うようなことを、おっしゃいますのね。あなたが、殿下を支える?」


エスメラルダは扇を広げ、薄く笑った。


「殿下がお優しすぎるようですから、代わりにわたくしが教えて差し上げますわ」


「何をですか」


「身の程というものを」


エスメラルダは、レオノーラを頭から爪先まで眺めた。


「武功で爵位を得ただけの辺境男爵家の娘が、王妃になろうなど――」


ぱんっ。


乾いた音が、広間に響いた。


レオノーラの平手が、エスメラルダの頬を打っていた。


「きゃっ……!」


エスメラルダが頬を押さえ、呆然と顔を上げる。


レオノーラは、冷たい目で彼女を見下ろしていた。


「父と、我が家への侮辱は許しません」


「わ、わたくしを誰だと――」


「王弟家の罪人の娘でしょう」


「……!」


「それから、殿下を支えるかどうかを決めるのは、あなたではございません」


レオノーラは、背筋を伸ばした。


「わたくしが殿下を守り、殿下がわたくしを守る。二人で、すでに決めたことです」


広間にいた誰もが黙る。


俺も黙っていた。


下手に口を挟むと、俺まで叱られそうだった。


レオノーラが、強すぎる。


■最終話


評議の結果は、その日のうちに出た。


故王の名を騙り、第二王子の殺害を命じた第一王子アルベール。


命令書の作成と隠蔽に関与した王妃イザベラ。


王都での襲撃と暗殺未遂を指示した王弟ヴィクトル。


毒物と私兵を用い、複数の暗殺を企てたエスメラルダ。


全員、死刑。


偽造書状を運んできた使者も死刑。


王弟家の私兵も死刑。


裏切った侍従も死刑。


証言したことで一度は助かりかけた者も、勢いで死刑。


オズワルドも、なんとなく死刑。


関係者は、だいたい全員死刑となった。


ただし、事情を知らず命令に従っただけの一般兵士については、俺とレオン殿下が助命を嘆願した。


彼らは罪に問われず、全員故郷へ帰された。


レオンハルト殿下は、満場一致で次代の国王に決定。


レオノーラとの婚約も、その場で承認された。


そして後日。


王都の大聖堂で、二人の結婚式が執り行われた。


華やかな衣装に身を包み、並んで立つレオンとレオノーラを、俺とリエネは少し離れた場所から見守っていた。


「立派になりましたわね」


「ああ」


「心配ではありませんの?」


「まったくない」


「そうですの」


「何かあれば、俺が全員片づける」


リエネが、俺の腕へ自分の腕を絡めた。


「では、もう帰りましょう」


「もういいのか?」


「ええ。久しぶりに二人きりで、王都を楽しみたいですわ」


リエネが、俺を見上げる。


「娘も無事に嫁ぎました。今夜は、もう父親ではなくてもよろしいでしょう?」


「……そうだな」


俺たちは、娘夫婦より一足先に大聖堂を出た。


めでたしめでたし。

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