王都編1-22 進捗確認
エリーゼたちが、エルナのルシアンへの認識に愕然とした翌日。
社交シーズンも閉幕となった王宮は、どこか穏やかな空気に満ちていた。
ただ一つ――ルシアンの執務室を除いて。
「リゼとシャールから聞いたぞ!? おまえ、エルナ嬢と今シーズン何していたんだ!?」
ノックもなしに執務室へ押しかけたレオンハルトが、執務机越しにルシアンへ詰め寄る。
頻繁に会っているというのに、肝心なところが何一つ進んでいない。
そんな馬鹿なことがあるかと、レオンハルトは瞠目していた。
対するルシアンは、いつもと変わらぬ平静な顔で答える。
「婚約者として一緒に過ごしたが?」
「……それは……ええ、そうでしょうね」
それは分かる。
分かるが、そうではない。
苦笑するジークの隣で、レオンハルトはさらに問い詰めた。
「エルナ嬢がおまえをどう思っているのか、知ってるのか!?」
「婚約者として、慕ってくれている」
「…………」
あまりにも迷いなく言い切られて、レオンハルトは言葉を失った。
その横で、ジークも小さく頷く。
「まあ、そうでしょうね」
「だろう?」
「ですが――」
ジークは一度言葉を切り、慎重に続けた。
「それは『婚約者』として、でしょう」
「ああ」
ルシアンは何の疑問も抱かずに頷いた。
「婚約者として相応しくなろうと努力している。健気で素晴らしいことだ」
「…………」
「…………」
エルナ嬢がエルナ嬢なら、ルシアンもルシアンだ。
レオンハルトとジークは、無言のまま顔を見合わせた。
どうやらこちらも、相当に重症らしい。
「……ルシアン」
「何だ?」
「おまえ、もう少し危機感を持った方がいいと思うぞ」
「何の危機感だ?」
「…………」
レオンハルトは天を仰いだ。
ジークはそっと目を伏せる。
――駄目だ、こいつ。
二人は、ほとんど同時にそう悟った。




