↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/70

王都編1-12 男たちの帰領

 辺境伯邸の前には、荷物を積み込んだ一台の馬車が止まっていた。


 馬車を背に辺境伯とスヴェンが立ち、その周囲をエルナ、辺境伯夫人、そして公爵一家が囲んでいる。


「しばらく会えなくなるな。領地へ着いたら、手紙を送ってくれ」


 公爵がそう言うと、辺境伯は苦笑した。


「断る。男からの手紙を読んで、何が楽しい?」


「それもそうだな」


 二人は冗談を交わしながら、固く抱擁を交わす。


 その隣では、スヴェンがルシアンへ声をかけていた。


「エルナを頼んだ」


「もちろんだ」


 短く答えたルシアンと、スヴェンは軽く握手を交わす。


 それを見届けた公爵が、辺境伯へ向き直った。


「王都に残る奥方とエルナの心配はいらない。我々がついている」


「よろしく頼む」


 北部蛮族への備えを担うノルドガルド辺境伯家は、領地を長く空けることができない。


 引退した辺境伯と長男夫婦が残るとはいえ、社交シーズンの間ずっと王都に留まるわけにはいかなかった。


 デビュタントを終えたエルナと、その付き添いを務める夫人を王都に残し、辺境伯とスヴェンは早くも帰領することになったのだ。


「着いたら手紙を送る」


「はいはい」


「騎士たちもいるから、安心しろ」


「もちろんですわ」


 辺境伯の言葉に、夫人はにこにこと頷く。


 その様子を見て、エルナとスヴェンも顔を見合わせて微笑んだ。


「着いたら、お祖父様とアルヴィンお兄様、ヒルダお義姉様にもお手紙を渡してくださいね」


「任せておけ。皆、喜ぶだろう」


 ひと通りの別れの挨拶を済ませると、辺境伯とスヴェンは馬車へ乗り込んだ。


 やがて馬車がゆっくりと動き出す。


 エルナたちが手を振る中、その姿が見えなくなるまで一同は見送った。


 やがて馬車が見えなくなると、公爵が公爵夫人へ向き直る。


「私たちも、今日は帰るとしよう」


「そうですわね」


 公爵夫人は頷き、辺境伯夫人へ微笑みかけた。


「では、また夜会でお会いしましょう」


「ええ」


 辺境伯夫人が応じる。


 公爵夫人はそのままエルナへ視線を向けた。


「ルシアンがいなくても、いつでも遊びにいらっしゃい」


「ありがとうございます、奥様」


 エルナが丁寧に一礼する。


 その隣で、最後にルシアンがエルナへ向き直った。


「何かあれば、すぐに呼んでくれ」


「はい」


 迷いなく頷くエルナを見て、ルシアンは穏やかに目を細めた。


 辺境伯とスヴェンが領地へ戻れば、これから王都に残るエルナと夫人を支えるのは公爵家だ。 そして、自分もまたその一人である。


 そう思えば、ルシアンに不安はなかった。


 エルナは王都にいる。 ならば、これまでと変わらず会いに行けばいい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。