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アクチュアリー ―封印都市アクトリア―  作者: ブラックななこ


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痕跡

――― 自宅


真央はマコールを使って自分の部屋に戻っていた。

PCを慌てて立ちあげ、起動を待つ。


「早くっ! 早くっ! ・・・」


カチャカチャとマウスをクリックするが、画面はウェイトのアイコンがクルクルと回っている。


仕方がないので、その時間を使って破れた袴を脱ぎ、Tシャツとジーパンに着替えると、画面が一瞬ブラックアウトしたあと、ネットのどこかの画像がフェードインしてくる。

真央がキーをタッチすると、暗証番号(PIN)を求めて来た。


すばやくテンキーで暗証番号を入力すると、デスクトップ画面が現れるが、まだOSは完全に起動していない。

VPSに接続しようとするが、バックグラウンドの処理が重くてタスクが回ってこない。


「くそっ! 早くっ!!

くそ・・・スリープにしておけばよかった・・・」


VPSと接続が完了し、リモートデスクトップのウィンドウにVPSの画面が表示される。

急いでログ画面を開き、接続IPアドレスを確認して、過去の接続ポイントと比較する。

だが、過去の接続IPではなかった。


「急いでるってのに・・・・・・

なんで、こんな時に限って新しいアクセスポイント使ってんだよ・・・

使ってる中継元の種類は分かってるが・・・」


苛立ち、ガシガシと頭を掻き、キーを叩く。

急いでGeoIPで場所を確認する。


【Kyoto - Higashiyama-ku - Gionmachi Kitagawa – HardBank】


「どこだよ、それ!?」


ブラウザーを立ち上げ、ハードバンクのサイトで【京都>東山区>祇園町北側】周辺のスポットを検索する。

京都の繁華街らしく62件のスポットが表示された。


「あいつが使うのは、過去の接続履歴を考えて、気軽に入れるカフェ、ファストフードが多い・・・飲み屋はない・・・コンビニもあり得る・・・あとは一般の飲食店か・・・」


チェックを入れていくと、15件に絞られた。

その中から、さらに絞り込む。


「飲み屋っぽい名前は全部消去・・・すし屋もありえないな・・・

カフェとコンビニは3件か・・・・・・あとは、名前だけじゃ判断できない・・・」


地図を開いて、祇園町北側の地図を開く。


「ホテルや食い物系の店が多いな・・・祇園町ってどんな場所なんだ?」


南島原に住んでいる真央は、祇園という名前の響きは知っていたが、そこがどういう街なのか分からず、ストリートビューを使って場所を確認すると驚いた声を出した。


「――ッ!!

ここ・・・飲み屋街じゃないか・・・!

安永の性格からして1人で行動しているはず・・・こんな場所はありえない・・・」


コンビニは飲み屋街の中心の方にあった。


「このコンビニは、ありえない・・・って、ことは・・・幹線道路沿いのカフェ2件か・・・

ん? ここは・・・?」


真央は1件だけポツンと離れたスポットを見つけた。


「京料理・・・? 安永が1人で行くとは思えないけど・・・

公園に隣接してるってのが気になる・・・」


少し、マウスを動かす手が止まり、マップをじっと見つめる。


「いやいや、何考えこんでるんだ・・・すぐ向かわないと・・・

カフェ2件は近い・・・よし!!」


真央はマコールを使って、カフェが入るホテルの屋上に移動する。


――― 京都 ホテル屋上


7階建てのホテルの屋上に降り立つ。

京都は背の高い建物は少ない、7階建ての建物は周囲の高さに紛れるので、目立たずに舞い降りる事ができた。

しかし、時間はまだ早く繁華街が近いこの場所は、明るい上に人が多かった。

真央は地上に降りれる場所を探す。


幹線道路の人通りは全く途切れないので、時計回りに屋上を移動しながら、下を覗き込む。


東側は隣のビルと隣接しており、降りることは出来なかった。


「こっちはダメだ・・・・・・」


ホテルの南側に回り込むと、隣のL字型の建物の施設脇に通路が見えた。


「あそこっ! 行けそうだな・・・」


真央は目を細め、薄暗い通路の全体を確認する。

通路の右側は、ホテルの駐車場の方へと伸びていた。


隣の建物からは光が漏れている場所が少なかった。

どうやら営業時間も終わり、この時間は残業してる人が残っているだけのようだった。


「ラッキー! ついてる・・・」


真央は躊躇せず、その通路へと降り立つと、道路の方へ急いで駆け出した。

通路には途中、施設の門があったが、真央はそれを軽く飛び越えた。


「よっ!」


スッ…と音もなく着地する。

膝を折り、かがみこんだ形で一旦静止し、暗い周囲を確認する。


立ち上がって、ゆっくりと道路方面へ移動しながら、建物の影から出るか出ないかの所で合流する道路の通行人を確認する。


古い古都らしく、所せましと寄り添うように建物が立ち並び、その間を縦横無尽に小路が至る所にある場所だった。


「はは・・・なんか背の低いアクトリアみたいだな・・・」


真央は、建築物が寄り添う姿にアクトリアを、ふと思い出す。


ラッキーなことに、ホテル横の道路は飲食店がまったくなく、人通りが少ない。

人の目をしのびながら、人の流れに違和感なく合流した。


道路に出ると右に曲がり、通行人を避けるように幹線道路へ向かった。

幹線道路沿いの歩道には、雨でも濡れないように屋根が設置されており、多くの通行人が行きかっている。


右には八坂神社、円山公園の案内板が電柱に取り付けてある。

左には歩道を覆う屋根には、お店の看板が設置され、その様子は商店街のアーケードのように思えた。


カフェは、ホテルの1階にテナントとして入っていた。

ホテル自体が歩道に面しており、真央はその店の扉をくぐった。


店内を久美を探して歩くが、自分のあのタブレットを持つ女性は見当たらなかった。


(・・・いない・・・向こうのカフェか・・・・・・急がないと!)


真央は1件目のカフェに見切りをつけ、外へと出て立ち止まる。

そして、人が行きかう中、左右を見て確認する。


(・・・も、もう一か所のカフェは・・・えっと・・・)


家で確認した地図と、自分の向いている方向と後ろのカフェを頭の中で擦り合わせていく。

目の前の四条通り、右に八坂神社、頭の地図には四条通りの先には鴨川にかかる四条大橋があった。


「向こうか・・・!」


真央は左の方向を向いて、歩道の柵から左側を覗き込んだ。

100メートルにも満たない所に信号機があった。


「あの信号機の右側のはず・・・」


ダッと駆け出し、歩道ではなく車道を全力疾走した。


「すごーい!」

「はえっ!!」

「なに、なに? 何かの撮影?」

「うお! すげえ!」


歩道を歩いている人たちが真央の走りに驚きの声を上げた。

信号のそばまでやってくると、車道と歩道ギリギリに立ち、信号が変わるのを待った。

交差点の向こう側に建っている、赤い壁の商業ビルの1階にカフェの看板が出ていた。


(あの、カフェだな・・・)


「あのぉ〜、すいませ〜ん」


不意に声をかけられ振り返ると、そこには女子大生風の3人がいた。


「はい、なんですか?」


「走るの、めっちゃ速いですね!」

「何かスポーツやってるんですか?」

「何かのプロのスポーツ選手とか?」


女性たちは、矢継ぎ早に話しかけてきた。


「え? 違いますけど・・・」


変なことで注目され、真央は戸惑う。


「でも、何か運動やってますよね?」

「よかったら、一緒に飲みに行かへん?」


「い、いや、今急いでるんで・・・それに、まだ未成年なんで・・・」


真央がそう言うと「きゃあ~・・・!」と盛り上がる。


そんな時、信号が変わり真央が駆け出す。

それを追うように女性たちも走ってついてくる。


「あー、待ってぇー!」


道路を渡り切り、花見小路通りの歩道を歩きながら、屋外のテーブルを使っている人達をサッとチェックする。

久美がいないのを確認して店内に入る。


「いらっしゃいませー!」


店員が挨拶をしてきた。

真央はそれを無視して、店内をチェックしていく。

しかし、タブレットを使う女性客を探すが、見当たらなかった。


(・・・・・・いない・・・・・・もう接続終わったとか・・・まさかな・・・?)


真央の顔が焦りの表情に変わる。

スマホで時間を確認すると、最初の接続の通知が来た時間から、すでに15分が経とうとしていた。


スマホを持つ手に思わず力が入る。


(そうだ!! あの・・・気になった京料理のスポット・・・・・・アレか!!)


カフェを出たその時、またしても囲まれてしまった。

さきほどの信号待ちで声をかけてきた女性たちだった。


「誰か探してはるの?」

「お姉さんらも手伝ってあげる!」


「いえ、ほんとに急いでて・・・」


「急いでるんやったら、余計手伝ったる!」


そう言って、手で真央の腕をペタペタと触ってくる。


(な、なんなんだ・・・これ?)


真央は気づいていないが、影の中で半月もの間、剣術と格闘を鍛錬してきた真央の体は、アクトリアの迷宮で鍛えた頃からさらに絞り込まれ、Tシャツに浮かぶシルエットと肌をさらしている腕は、とても同年代にいるような体つきではなかった。


(こんなこと、やってる暇はないのに・・・・・・そうだ!!)


真央は、花見小路通りの反対側に前のめりに視線を送って、「ああっ!!」と驚いた声をあげた。すると、3人の女性はつられて振り返る。


「え? なに?」

「探してる人がいた?」

「それは、困るって!」


女性たちはそれらしい人がいないのを確認し、真央に視線を戻す。

だが、そこに真央はいなかった。


「あれ?」

「どこ行ったの?」


左右を確認し店内も確認するが、真央はいない。

出入り口のすぐ近くの屋外のテーブルに座っていた男性が、コーヒーカップを手に持って目を丸くしている。


「ねえ、今ここにいた子、どこ行きはった?」


女性の一人がその男に尋ねた。

手に持ったコーヒーがこぼれてズボンにかかる。


「あっつっ!!」


男は我に返って、手でズボンにかかったコーヒーを手で叩いてはらい、ズボンを指で挟んで肌から離そうとする。


「ねえ、見なかったの?」


男は3人を見て、「いや・・・今、消えたんよ・・・一瞬にして、どっか行ってしもた・・・」


3人はお互いの顔を見合わせて、男の方に顔を戻し「「「何、アホなこと、言うてんの!!」」」と怒鳴って、周囲を見回して真央を探す。


男はその迫力に、体を引き「ホンマなんやけどなあ・・・」と小さくつぶやいた。


――― ホテルの隣の通路


「ふう~・・・」


真央はマコールで、ホテルから降り立った通路に移動していた。


「京都のお姉さん、怖いなあ・・・どうなってんの?

誰かに見られちゃったかな? カメラは店内のレジ付近だけだったから、出口は映ってないはず・・・」


額に滲んだ汗を腕で拭う。


「よし、早く公園に・・・」


真央は同じように通路を道路へと抜けていった。


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