表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アクチュアリー ―封印都市アクトリア―  作者: ブラックななこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/76

呪いの共有

真央たちは教会を後にして、ゲートウォッチに帰ってきた。


「あ、帰ってきた~、どこ行ってたの~?」


自由スペースにいた榊原が、扉を開けて入ってきた真央たちに気づいて、声をかけてきた。

榊原の声で、調理場にいた朝比奈と木下が顔を出す。


「篠原の提案で、ちょっと外壁外に・・・」


「外壁外って、農場と墓場でしょー?」


顔を出している朝比奈が尋ねる。


「外壁外って、メインゲート側じゃなくて、コンティル城側なんだ。

実は――・・・」


真央は、夕方から篠原の提案で借りられそうな家を下見に行ったこと、そして教会で聞いたことを説明した。


―――


榊原が驚いて立ち上がり、朝比奈と木下を見て、自分を指さしながら口を開く。


「え、えぇぇっ!? わ、私達、呪われてるの!?」

「実は、僕もびっくりした。」


「ねえ、ちょっと待って、門畑くんと藤堂くんたちは呼ばなくていいの?」


彩乃が飲み物をすすりながら、手を上げて皆に告げた。


「あ、そうだ、そうだよね。

ちょっと待って、呼んでくるよ。」


篠原は苦笑しながら席を立つと、階段を登っていく。


「呪いのことも説明しとくー!」


階段を登る途中、そう言いながら2階へと消えて行った。

その様子を、自由スペースにいる6人は見ていた。


「立花くん、本当に“悪”属性が呪いなの?」


朝比奈が声をかけ、階段の方を見ていた真央が朝比奈を見る。


「わからない・・・

ただ、オレと彩乃さんとイチゴと違う点って、それしかないんだよね・・・」


真央は朝比奈の質問に少し困った顔をして、頭を掻いた。


「だからさ~、明日“悪”属性を持つ全員を教会に連れて行って~

神父さんに確認してもらおう~ってことになったんだ~」


「そっか・・・」


木下が両手で持っているカップを見ながら言った。

続けて、顔を上げながら質問する。


「神父さんに見てもらって、全員が呪われていたら、

“悪”属性が呪いの正体ってことになるもんね・・・

もし私たちが呪われてなかったら、属性の問題ではなくなるってことでいいのかな?」


「それで、間違ってないわ。

ね、真央くん。」


彩乃がカップを片手に持ち、もう片方の手で木下を指さしながら、真央を見る。

真央は目を強く瞑り、腕を組んで黙っていた。


「ねえ! 真央くん!」


彩乃の言葉に、ビクッとして目を開ける。


「また、何か一人で考えてる。」


「え、ああ・・・うん・・・ちょっと杖のことを・・・

エティエンヌ神父のいうことが本当なら、

タツヤを生き返らせるのはいつかな・・・ってことをね・・・」


「もうそこは~、割り切るしかないよ~、真央~~」


横で聞いてたイチゴが体を前のめりにして、真央の顔をジッと見つめた。


「でも、アイツ1人だけ生き返らせてない・・・

それを想うと・・・ここが苦しい・・・」


真央は胸の真ん中をこぶしで何度も叩いた。


「真央・・・」

「真央くん・・・」

イチゴと彩乃も、軽く唇を噛んだ。


「ねえー、私たちは仲間外れ?」


3人の様子を見ていた、榊原と朝比奈、そして木下が真央たちを見つめていた。


「ねえー?」


榊原は体を前後に揺らしながら尋ねた。

その声に真央たちが顔を上げる。


「私たち、仲間だよね?」と朝比奈

「そうです! 私たちは、口加高校“迷宮部”です!」


木下が両手を握って、脇を閉めてガッツポーズした。


「何、その迷宮部って?」彩乃が笑いながら尋ねる。


「今作りました!

よくないです? 迷宮部。」


「私は絶対入らないよー」と榊原が手を上げて、軽く木下に答えた。


「えー、そろそろ入りましょうよ~」


木下が榊原の腕をつかんでユサユサと揺らす。


「ヒナ、あんた来た頃と違って、メチャクチャここに馴染んだわね。

最初なんて、あんなにオドオドしてたのに・・・

いつの間にか、みんなと迷宮に潜るようになってるし・・・」


自分を揺すっている木下の手の甲を指でつまみ、“揺するのやめろ”と握った腕を離す。

木下はわざと痛そうに顔をしかめて笑う。


それを見ながら、彩乃が頬杖をついて笑って質問する。


「ヒナって、ほんと頭おかしいのよ。

ロングソードぶん回しながら、ブツブツなんか歌ってるよね?

・・・あれ何?」


「え? 聞こえてました?」


「「「聞こえてる(わ)よ。」」」


イチゴと彩乃と朝比奈が突っ込む。

真央はそれを見て笑った。


「で、何歌ってるの?」

「・・・ワーグナーの・・・ワルキューレです・・・」


木下は背中を丸め、恥ずかしそうに教えた。

真央と彩乃と朝比奈は“ああ~”という顔をした。

イチゴは首を傾げる。


「え~、なんの曲~?」


「パンパラパ~ンパ~ン、パンパラパ~ンパ~ン♪

パンパラパ~ンパン、パンパラパ~~~ン♬」


イチゴ以外の全員で合唱する。木下は、吹奏楽部なだけあって、別のパートを口ずさんだ。


「あ~、なんか聞いたことある~」


「この“ワルキューレの騎行”ってさ、フルートで風とか馬の嘶きをやるのよー。

それが、たまらなく好きなのーっ。」


木下が、丸めた手を顎のあたりでプルプルと震わせ、どれぐらい好きなのかを主張した。


「まさに・・・“フルートをロングソードに持ち替えた女”ね」


榊原があきれながら、木下を茶化すように言った。

その言葉に木下が反応して指さす。


「あ、それ!

ワルキューレの騎行って、ワルキューレ(戦乙女)が死んだ戦士たちの死体を回収して、

神殿ヴァルハラへ戦力増強に持ち帰るって内容なんですよ。


まさに、フルートを持ち帰って、ロングソード!

そっか~、私の為の曲になったのか~・・・あははは~・・・」


木下は笑いながらそう言った。


「ヒナ、あんた・・・頭のネジどっか行っちゃってない?」と榊原があきれ顔で言う。

「ロングソードをぶん回すワルキューレね。」と彩乃が突っ込む

「ワルキューレっていうより、バーサーカーだよ?」

朝比奈が顔の前で手を“違う違う”と振った。


「え? 私、まさかの回収される側!?」と木下が自分を指さして驚く。


「だって、フルートを回収されるんでしょ?」


榊原がそう言うと、女性陣がドッ!と大声で笑った。

真央とイチゴは意味が分からず、ポカンと見つめている。


彩乃がそれに気づいて、笑いすぎで目じりの涙を拭うと、二人に説明する。


「北欧神話の話なんだけど、ワルキューレ(戦乙女)とバーサーカー(狂戦士)って、

主神オーディンに仕えてるのよ。

それで――」


「意味はわかったけど・・・そのタイミングじゃないと笑えないなあ・・・」


真央が頭をかきながら苦笑する。


「オレと真央は~、インテリジェンスな笑いにはついていけないお~」

「だな。」


真央は笑いながら、手のひらをイチゴに差し出すと、イチゴはその手をぺチンと叩いた。


タンタンタン……


そんな時、階段の方から足音が聞こえた。


「なんか盛り上がってるね、笑い声が聞こえたけど。」


篠原が、門畑と藤堂を連れて階段を降りてきた。

そして、少し遅れて、タツヤとユージとセージが降りてくる。


自由スペースのテーブルに適当に座っていく。


「あ、お茶いれるね。」朝比奈が立ち上がる。

「あ、僕も手伝うよ。」

それを見て、門畑が席に座らず、そのまま調理場へと入っていった。


「陽ちゃんと、まどかちゃんは~?」

イチゴが、尋ねた。


「いなかったんだ。

どうせ、またどっかで遊びまわってんだろ?」


篠原が呆れるような顔をして、怒ったような口調で吐き捨てた。



イチゴの聞いた“陽”と“まどか”とは、二週間ほど前に送り込まれた来訪者のことである。

本名は“久保田陽斗”と“小野寺まどか”。


同じ口加高校の同級生だったが、今まで送り込まれた成績優秀者ではなく、

不良グループに属し、ほとんど最下位に位置するような二人だった。


なぜ、この二人が送り込まれてきたのかはわからなかったが、真央たちの話も聞かず、ゲートウォッチの経営者のマーロウからお金を貰うと、毎日好きなことをやって過ごしていた。



「篠原から聞いたけど、家を借りるんだって?」


タツヤが離れた席から、体を乗り出しながら尋ねた。


「ごめん、それは後で話そう。

まずは、明日みんなで教会に行くって話を・・・」


真央は手を広げて、タツヤの質問を止めた。

そこに、朝比奈と門畑がお茶を淹れて戻って来る。


来たばかりのメンバーが座る二つのテーブルに、カップの乗ったお盆を置くと、

礼を言いながら全員が手を伸ばす。

朝比奈は、もともといた席に戻ると、テーブルにお茶の入った急須を置いた。


「オレ達、呪われてるって聞いたけど。」藤堂が尋ねる。


「いや、呪われているかどうかはわからない。篠原は確定だけど・・・」


真央は篠原を見て「また、ちゃんと説明してないな。」と声に出さず、口だけを動かして睨む。

篠原はその顔を見て、“すまん”とまっすぐ伸ばした手を顔の前に出して、頭を少し下げた。


「呪われているかどうかは分からないんだけど、

篠原の呪いの原因が、こっちに送り込まれた時の“悪”属性かもしれないんだ・・・


だから明日、教会に一緒に行って、神父さんに見てもらえば、属性が原因かどうかを判断できるかと思ってさ。」


「そう言うことか。

直がいきなり“呪われてる”っていうから、何事かと思ったよ・・・」


藤堂の話を聞いて、真央が再び篠原を睨む。


「ははは・・・」


篠原は誤魔化すように笑った。


「別に誰かひとりでも良いんだけど、

もし“属性が原因”での呪いだとしたら、儀式が二度手間になるだろ?」


「儀式を受けると、属性が“悪”じゃなくなるのかな?」門畑が尋ねた。


「それはわからない。

でも、神父さんが言うには、聖水で“呪いが改善した”って言ってたから、

儀式を受ければ、呪いが消える可能性はある。」


榊原が口をつけていたカップをテーブルに置いて尋ねる。


「呪いを放っておくと、どうなるの?」


「それもわからない。

でも、呪われていると、復活の儀で失敗する確率があがるみたいだ。」


「じゃ、じゃあ、私は必要なくない? 迷宮行かないし・・・」


「じゃあ、雫は、呪われたまま生活するのね。

もしかしたら、痩せるのは呪いかもよ。」


「「え!?」」


彩乃の言葉に、榊原と門畑が驚いた声をだした。


「の、呪いを解いたら、また太っちゃうの?」

「せっかくお腹の肉無くなったのに・・・」


「余った腹の皮が、伸びなくなって良いんじゃないか?」


タツヤがそう言って笑う。


「ひ、ヒドイよ・・・タツヤぁ~~」


「まあ、冗談はさておき、そういう訳で、明日教会に来てもらいたいんだ。

まあ、呪いを解きたくない人は、来なくていいけどさ。」


真央は笑いながら、指で榊原と門畑を交互に何度も指さす。


「も、もちろん、僕は行くよ!」

「い、行くわよ!」


「そういうわけで、ユージとセージも、一緒に儀式を受けてくれ。」


真央が言うと、ユージとセージが「は?」って顔をこっちに向ける。

そして、ユージとセージが顔を合わせる。

再度、二人して真央の方を見て、「オレ?」って指を自分に向け確認する。


「えっ? オレたち、“悪”属性じゃないぞ?」とセージ


真央は“またか・・・”という顔をして、篠原を見る。

篠原は首をサッ!と逸らした。


(ったく・・・全部、オレが説明するんじゃないか・・・)


「神父さんの話だと、復活の儀で呪いが、徐々に溜まるらしいんだ。

ユージとセージは一度死んで、復活の儀で生き返ったから、呪われてるんだ。

だから、イチゴも呪われてる。」


「うえ~~い!」とおちゃらけて、手を広げて二人に向け、左右に振った。


「さっきも説明したけど、呪いの具合で、復活の儀の成功率が下がる。

できれば、これ以上コータと同じ“灰”状態にはしたくないからさ・・・

死なないのがベストなんだけど、もしもの時があるから・・・」


真央は、説明しながらコータのことを考え、眉間にしわを寄せる。

その様子を見て、二人は強く答える。


「わかった、わかった! 真央! オッケーだ!」

「オレも大丈夫だ! オレ達が死んだのは自分たちが悪いんだからな。

真央、お前が気にすんな!」


二人はそう言って、親指を立てて真央に向けた。

二人の様子に真央は口角を少し上げて、頷いた。


彩乃は真央の様子を見て、手をパンパンと叩く。


「じゃあ、次は家の話ね。

これは篠原君が“ちゃんと”説明してよね。」


中途半端な説明を続けていた篠原に、彩乃は少し圧をかけた。

篠原は、その圧に冷や汗をかきながら細かく頷いた。


「わ、わかったって・・・」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ