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アクチュアリー ―封印都市アクトリア―  作者: ブラックななこ


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外縁へ

――― 現実世界 (5月30日現在)


真央は、京都から戻った後、京都大学で在学生の行方不明者の関連記事がないか、インターネットを使って探していた。

しかし、思ったようにそういった記事は見つからなかった。

椅子の背もたれにもたれて顔をしかめて、モニターを見つめた。


「こんなことなら、あの人達と、もうちょっと交流しておくべきだったな・・・」


あの人達とは、真央たちが現実世界から消えアクトリアに送られた日(5月17日)から、5カ月以上経過した頃。

“来訪者”として訪れていた“知らない年上の人達”のことだった。


アクトリアにいた時、来訪者として何度か話をする機会はあったが、年齢差などがあり話も合わず、真央はあまり交流をせず、情報を得るほどの距離にはならなかった。


「ゲートウォッチにずっと住んでいたら、情報をもっと得られてたはずなのに・・・」


実はアクトリアで3か月が経った頃、ゲートウォッチを出て“庭付きの空き家”を借りていたことも交流不足となる要因となっていた。


真央は当時のことを思い出す。


――― ゲートウォッチ(過去)


夕方、迷宮から戻ってきた真央たちは、

ゲートウォッチ内の自由スペースで、迷宮でマッピングしたメモをまとめていた。


「ここの扉~、鍵かかってたけど~・・・真央は知ってる~?」

「いや、知らない・・・微妙に構造が違うんだよな・・・」

「真央くんが知らない場所って、ほんと攻略が難しいわ・・・」


そんな時、ゲートウォッチの扉が勢いよく開いた。


バンッ!!


篠原が勢いよくゲートウォッチへ入ってくる。

その様子を自由スペースに座っていた、真央と彩乃とイチゴが振り返って見つめた。


「直ちゃ~ん、ドアは壊しちゃだめだぞ~!」


イチゴがそう言うと、気づいた篠原が真央たちに駆け寄ってきた。


「なあ! すごい話がある! 家を借りないか!」


その言葉に三人が首を傾げる。

何故なら、城塞都市は新しく家を作るスペースがなく、現存している家は、家族が引継ぎながら800年もの間、代替わりを重ねてきたからだ。

その為、外部と切り離されたアクトリアは宿屋もなく、空き家なんて存在しなかった。


「借りられる家なんてないだろ?」


真央が尋ねる。


「それがあるんだよ。 城主のトレバス様から聞いたんだよ!」


篠原の言葉に全員が驚く。


「うっそ~~。」

「城主の話ってことなら嘘じゃないな・・・」

「そんな貴重な家、借りれるの?」


「城塞都市の外って、どれぐらい知ってる?」


篠原が尋ねた。


「外城壁の外ってこと?」


彩乃の問いに、篠原がコクリと頷いた。


「こっちの世界に来て・・・城壁に登って眺めたのが最後だから・・・

私はほとんど知らないわ。 ねえ?」


彩乃はそう言って、真央に尋ねた。


「そうだね・・・・・・ここに来て、次の日には迷宮に潜ったし・・・

あの時が最後か・・・」


真央は彩乃を見て頷くと、首を少し傾げて天井を見つめ、思い出しながら話した。


「イチゴはね~、外城壁を見に行ったよ~。

昼間、ウッディコさんに会いに行って~、その時に案内して貰ったんだよ~。

でも~、メインゲート近辺しか案内して貰ってないな~・・・

そうそう、外城壁の外に~墓場あったの見たよ~。」


「えっ、墓場!? アンデッドいたりするの?」


彩乃が目を光らせて興味津々に尋ねる。


「いないよ~w」


彩乃の食いつき気味な態度にイチゴが笑いながら答えた。


「なあ~んだ・・・つまんな~い・・・」


背を伸ばしながらそう言うと、全員が笑った。


「柏木さんって、ほんと異世界物が好きなんだね・・・」


篠原が呆れた笑いを見せたあと、話を戻す。


「で、今、話に出た外城壁の外に、空き家があるらしいんだ。」


「え? まさか・・・墓場の傍とか・・・?」


彩乃が嫌な顔して尋ねた。

篠原が笑いながら答える。


「ははは、違う、違う。メインゲート方面じゃなくてコンティル城側。

コンティル城の外城壁の外って、ものすごい崖のような斜面があって、その先は平地なんだ。」


「へえ~、それで~?」


イチゴは興味深そうに尋ねた。


「封印によって、アクトリアは孤立させられたけど、

その時の境界線って城塞都市の外側も巻き込んでるみたいでさ。


コンティル城の外側って、封印前に城塞都市の外側に広がっていた町も、

一部飲み込まれているんだ。」


「そこに空き家が?」


「ああ、封印結界の膜の近くは怖くて誰も住みたがらないらしい。

トレバス様が言うには、過去に結界が動いた記録はないってことだから、

借りたいなら持ち主を探すぞって・・・」


「持ち主がいるの?」


「子孫がいるらしい。

いない家もあるから、そういう家は“やるぞ”って言ってた。」


「やるって・・・貰えるのかよ。」


城主の豪快さに、真央は呆れて笑った。


「でも、持ち主のいない家って、傷んでるんじゃない?」


「多分ね、それを見越して“やる”って言ってるんだと思う。」


「修繕か・・・それにどれぐらい費用が掛かるかだよな・・・」


真央は両手を椅子の座面につき、背中を伸ばす。


「でも~、最近ここの個室だけだと、荷物がキツイよ~

家あると助かるかも~」


イチゴの言葉に、真央は口元を押さえて考える。


「確かに・・・鎧とか盾がかさばって、結構場所とるんだよな・・・

倉庫みたいなのは欲しいよなあ~・・・」


「とりあえず、見に行ってみようよ!」


彩乃がそう言って椅子から降りた。

完全に行く気満々だ。


「ほら~~っ!」


真央の肩をつかんで体をゆすった。

イチゴは笑いながら椅子から降りて、ゲートウォッチの扉のほうへ歩いていく。


「直ちゃ~ん、行こ、行こ~~」

「お、おお・・・」


篠原は座っている真央を見ながら、戸惑うようにイチゴについていく。


「ははは、もう借りる気でいる?」


真央は椅子から降りながら、彩乃に尋ねた。


「だって、手狭はホントでしょ?」


「でもさ、他のみんなはどうするのさ?

城塞都市を見ればわかるけど、大きな家ってほとんどないよ・・・」


「その時はその時よ。」


そう言うと、真央の腕をつかんで引っ張っていく。

ゲートウォッチの扉のすぐ外で、イチゴと篠原が待っていた。


「コンティル城の向こう側って、どっから行くんだ?」


「ポルト通りをまっすぐ行くと行けるよ。」


真央の問いに篠原が直ぐに答える。


「夕方に家を見ても、日当たりとか分からないよ・・・意味ないんじゃない?」


彩乃に引っ張られる真央が、つぶやくように言うと彩乃が振り向いて、

もう片方の手も取り、両方の手を引っ張った。


「いいの、いいの! まずはどういう家があるかだけでも見てみないと!

ほら、早く、早く!」


彩乃は楽しそうにそう言うと、片方の手を離して先を行くイチゴたちを追いかけていった。


―――ポルト通り


コンティル城の外城壁から左側に向かう大通り。

外城壁に沿うようにして道は、アクトリアの内城壁まで続く。


「この通り、初めて来たね・・・」


真央は通りを見上げながら歩いている。

コンティル城の外城壁は高さが4メートルほどで、アクトリアが作られる以前の城だ。

その為、アクトリアの城壁よりも古く、城壁の作り方もかなり違っている。

何度か改修されたのか、城壁の下は手で持てるようなサイズの岩をモルタルを接着剤にして積み重ねてあった。


削り出しも荒く、面というよりガタガタで、時折丸い石も見うけられる。

ただ、城壁を作ればいいという感じの作りだった。

それはまるで、攻めてくる敵に間に合わせる為に、突貫工事で作られているように見えた。


逆に城壁の上部の方はある程度できた城壁の上に、まっすぐに切り出した巨大な岩が積み重なっている。

時代も違うのかもしれない。城壁の下部と上部では石の質も色味も全く違っていた。


「メインストリートと違って、この通りは広いままなのね・・・

あ、城壁も低くない?」


内城壁の円塔が見え始めた頃だった。

ポルト通りの坂道を下りながら彩乃が言うと、篠原が答える。


「内城壁は確かに低いよ。半分ぐらいしかないんじゃないかな・・・

その答えは外城壁の向こう側にあるけどね。」


内城壁には外へ出るための、幅2メートルの門が開けられている。

上部はきれいなアーチを描いているが、門には柵などはなく、門番もいない。

門をくぐり、外へと出ると、すぐに外城壁があった。


「え? こんな狭いの?」


外城壁までは7メートルほどしかなかった。


「来てみなよ。」


篠原が内城壁からの坂道を下って、外城壁へと走って行くと、

外城壁の壁面にある階段を登っていく。

三人は篠原と同じように階段を登った。


外城壁の壁面には弓の射手が身を隠せるように、

壁が高い場所と、外を確認する為の低い場所が交互に続いている。

篠原はその低い部分から身を乗り出す。


「下を見てみなよ。」


三人は壁が低くなっている場所から、各々身を乗り出してのぞき込む。


「うおぉっ!?」


外壁面の高さは10メートルほどあったが、その壁が立っている場所から先が山の斜面になっていて、自分たちのいる場所から斜面の下までは30メートル以上あった。


「高~っ! すご~~っ!!」


イチゴはその高さに目を丸くして身を乗り出す。

彩乃はあまりの高さに身をすぼめ、下が見えないように後ろへと下がった


「これは確かに、ここを攻略するには簡単じゃないな。」


「だろ?」


真央が壁の下を、首を左右に振りながら見て言うと、篠原が自慢するように真央に言った。

真央は篠原を見て指さす。


「で、そこが空き家がある場所ってことか?」


足元から正面に立ち上がる、封印の障壁まで約100メートルほどあり、城塞都市内の建物とそっくりな家がびっしりと建っていた。


「行ってみるか?」


「ああ、行こう!」


真央は階段を降りず、そのまま城壁から飛び降りた。


シュタッ!


高さは2.5メートルほどだったが、真央は何事もなかったように着地する。

それを見たイチゴと彩乃も飛び降りた。


タ、タッ!


彩乃はちょっと前に体勢を崩したが、特にそれだけで問題はなかった。

それを見た篠原は唖然としている。


「柏木さんまで・・・オマエらレベルはいくつなんだよ?」


「私は10ね。」

「オレは14~」


真央はそれを聞いて、口を尖らせる。


「立花は?」


真央は答えたくなさそうに「7だよ!」と答えた。


「それは職業のせいなのか?」


「そういうこと、いいから早く降りてこいよ!」


真央は勢いよく手を振って手招きする。

篠原は飛び降りれず、階段へと走って降りてきた。

その様子を三人はニヤニヤと見つめていた。


「な、なんだよ!?

いいだろ! 僕はレベル1なんだから!」


「直ちゃ~ん、レベル上げしたくならない?」


「ならないよ!!」


「藤堂は――」

「うるさい、早く行こう!」


篠原はイチゴの言葉を遮るように言うと、外城壁の出口へと走って行く。

イチゴは真央と彩乃を見て、両手を上に広げながら肩を持ち上げる。


「だってさ~」


「まあ、そのうち気がかわるかもよ。」


真央がそう言って、篠原を追いかけると、あっという間に追いつく。

それを見た彩乃が慌てて追いかけていく。

イチゴは頭の後ろで指を組むと、さっき飛び降りた城壁へとジャンプして軽々と飛び乗る。


「よっ!」


そして、落ちるように城壁の外へと消えた。


―――


外城壁の門を出て、急斜面を斜めに横切る坂道を下っていく。


「あれ?」


篠原が坂道の先にいるイチゴに気づいた。

イチゴは坂道の脇に立ち、こっちを見ていた。


篠原はイチゴにゆっくりと近づいていく。

真央は立ち止まり、“やれやれ・・・”とあきれた顔をして様子を見る。彩乃はその横でクスクスと笑っている。


「なんで、イチゴいつの間に抜いたんだ?」

「抜いてないよ~」


そう言って、人差し指を上向きに立てた。

篠原はその指を追うように上を見る。


先ほどまでいた城壁がはるか頭上にあった。


「ま・・・まさか・・・」

「城壁は10メートルしかないしね~」


イチゴはそう言いながらニヤニヤと笑った。

篠原は城壁の上をずっと見つめて、固まってしまった。


そこに真央と彩乃が歩いてくる。

通り過ぎながら言葉をかける。


「篠原・・・イチゴは煽ってるだけだから、気にしない方が良いぞ。」

「でも、驚くよね~、もう超人だもの。」


イチゴは、通り過ぎる二人の後ろについていく。


「・・・・・・・・・。」


篠原はまだ固まったままだった。

握った手を更にギュッと握る。

そして、坂道を進む三人に向きなおして、叫んだ。


「僕は! ・・・確かにうらやましい部分もあるが・・・

――僕は信念を貫かせてもらう!」


三人は振り返らなかった。

イチゴは手を上げて、手のひらをヒラヒラとさせる。

それを見て、篠原は体の力を抜き、笑った。


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