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アクチュアリー ―封印都市アクトリア―  作者: ブラックななこ
呪いのゲーム

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62/113

条件

篠原と藤堂の討論が終わると、藤堂が立ち上がって、腰を折って謝る。


「ごめん、オレが悪かった。

否定せず、君たちの説明をちゃんと聞くべきだった・・・


その上で、分からないことを質問すべきだった!」


藤堂の言葉を聞いて、真央は朝比奈を見る。


「ねっ!」


朝比奈は笑いながら、そう言った。


「おぉ・・・」


真央は感嘆の声を漏らし、藤堂に向き合う。


「よかった・・・

じゃあ、この世界の教会を説明するよ。」


真央がそう言うと、藤堂は椅子に座りなおすようにして、頷いた。


「頼む。」


その後、藤堂が納得できていなかった部分を、真央は詳しく説明した。


―――


――という訳で、今3人が教会の安置所にいる。

これが現状のすべてだ。」


藤堂は真央の説明をただただ静かに聞いた。

そして今、静かに腕を組んで考え込み、ゆっくりと質問する。


「その教会の“復活の儀”・・・

蘇生を2回失敗すると・・・死ぬってことであってるのか?」


その質問に、真央は眉間にしわを寄せた。


「・・・そう・・・1回目の失敗で『灰』になって・・・

『灰』状態で“復活の儀”を失敗すると存在が消える・・・現実世界でいう『死』だ・・・」


「灰・・・」


「・・・そして・・・コータが今『灰』の状態で保管されている・・・」


真央がコブシをギュッと握り締め、歯を食いしばる。

それをみた彩乃が、そのコブシに手を添えて見つめる。


「・・・大丈夫?」


真央は大きく深呼吸し、彩乃に答える。


「ありがとう・・・大丈夫だよ。」


藤堂は、二人の言葉と表情を見て、それが真実だと思い知らされる。


「そ、そうか・・・そりゃ、次の蘇生を戸惑うよな・・・

しかも、親友ともなると・・・」


藤堂の手が細かく震えていた。


蘇生という、人の命を確率に乗せるという行為がどれほど重いか、数学が得意な藤堂は胸が締め付けられるほど理解できた。


「それで、その・・・魔法ってのは・・・オレにも使えるのかな?」


真央は首を振って説明する。


「藤堂の職業を調べないことには、現状それはわからない。」


「職業・・・それは“教会で調べられる”で、いいんだよな?」


「ああ、教会で金を払って調べてもらう。 ちなみに篠原は盗賊だった。

それと・・・全員属性は『悪』だ。」


真央がそう言うと、篠原が“余計なこというなよ”という顔をする。

藤堂は、かまわず尋ねる。


「その属性ってのは?」


真央は三本の指を立てながら説明する。


「ゲームでは、『善』・『中立』・『悪』の3つの属性があって、

善と悪は通常パーティを組めないんだけど、

悪属性の朝比奈さんはオレ達と一緒に行動できた・・・


この点はゲームシステムとは違う。

だけど、この属性は何かあるようなきがしてならない・・・」


「・・・・・・なるほど・・・現状属性の意味は分からないってことか・・・」


「ああ・・・そう言うことになる。

それと、魔法に関してだが・・・

今の藤堂の職業では魔法を使えなくても、転職すれば魔法を使えるようになる。

ただ、レベルが1に戻るけどな。


だが、これはゲームの論理であって、まだ実証はできていない。」


その会話を聞いていた篠原が口を開く。


「そうだ!

転職について、この世界の住人に聞いてみたんだけど・・・・・・聞く?」


篠原はそう言うと、真央たちの方を見た。

全員が篠原に視線を送った。


当然のように、真央は「聞く」と答える。


「コンティル城の書庫を管理している『イレーネ・ドレイス』って人がいるんだけど・・・

その人、この世界の【魔術師】だったんだ。」


真央がピクリと反応する。


「この世界の【魔術師】ってのは、基本は“血”・・・遺伝みたいだね。

だれでも、魔法が使える訳じゃないらしい。」


「それ、面白い話だな。

じゃあ、オレ達は何なんだ?」


タツヤが話に入ってきた。


「オレの家系は“真言宗”。

厳しい修行をして、真言の力を得る。

この世界の【魔術師】ってのは、そういうことなのか?」


「本田、ちょっと待て!

それって・・・」


藤堂が慌てて、タツヤの方へ体を捻って口を開いたが、

まだ魔法を信じ切れていない藤堂は口ごもった。


その表情をみたタツヤが、目を伏せ笑いながら藤堂の肩を叩く。


「安心しろ、向こうでは魔法は使えないよ。 オレはね・・・」


その微妙な答えに、安心しつつも、確認するように尋ねる。


「オレは・・・ってことは、誰か使えるのか?」


タツヤは両方の手のひらをテーブルの上に乗せる。


「真言宗は“不動明王の炎を使って、邪を祓う”とされる。

全国から修行僧がウチの寺にやってきて、霊峰“雲仙”の地獄で修行する。

その修行が無意味とは思っていない。」


そして、タツヤは左手の人差し指を立て、右手でその指を包み込む。

小声で真言を唱える。


ボッ――


小さな炎が印の上に現れ、踊るようにテーブルに広がるとそのまま消えた。

熱とかすかな風が、テーブルに座る全員が感じ、髪をなびかせた。


「う、うわっ!?」

ドサッ!


藤堂が驚いて体を反らせると、背もたれのない長椅子の後ろにひっくり返った。

慣れてない、篠原と榊原、門畑は体を少し反るようにして避けた。

それを見たパーティメンバーが笑う。


「あはは・・・藤堂、驚きすぎ~」


イチゴがフォークで指さして笑う。

藤堂は長椅子に乗ったままの足を、体を後ろにずり下げて床に下ろすと、上半身を起こしてテーブルを見る。


「炎は?」


「消えてるよ。」


隣の榊原が答える。

藤堂はゆっくりと立ち上がり、テーブルに座るメンバーを見渡す。


ふう~~~っ!


額に流れる汗を腕で拭う。


ドッドッドッドッ……


驚きと緊張に胸で激しく跳ねる心臓がいた。

大きく息を吐き、口を開く。


「常識が通用しないことがよくわかったよ・・・」


「言っとくけど、今のは魔法じゃないからな。」


真央が説明すると、藤堂は座りながら確認する。


「じゃあ、今のは何?」


「よくわからん。

タツヤだけが使える何か・・・そうとしか言えないなぁ~」


「・・・・・・現実での修行の成果ってことかい?」


そう言ってタツヤを見る。


「そうかもしれないし、そうじゃないのかもしれない・・・

この力はこの世界に来て初めて発現した力だし・・・」


そう言って、タツヤは自分の手を見つめた。

藤堂も黙ってしまった。

それを見ていた篠原が口を開く。


「なあ・・・イレーネさんの話に、戻して良いかな?」


全員が顔を上げ、篠原を見る。


「彼女が言うには、転職は成功しないらしい。

教会の転職は“詐欺”だって断言してる・・・

立花・・・これってどういうことだ?」


真央はもっていたフォークを皿に置き、その手で顎をこねて考える。


「失敗ねえ~・・・なぜ失敗するのか・・・?

あ、もしかしたら・・・」


篠原は体を少し前のめりにして尋ねた。


「も、もしかしたら?」


「先にパラメーターを調べてないかもしれない・・・」


「どういうことだ?」と篠原が尋ねる。


「基本、転職は条件があるんだ。

職業に必要なパラメーターだよ。」


真央はコップの水を指につけ、テーブルに条件を書きなぐりながら説明する。


「職種は全部で8種類――


戦士の場合、STRENGTH(力)が11以上で全属性が可能。

魔術師の場合、INTELLIGENCE(知力)が11以上で全属性が可能。

僧侶の場合、PIETY(信仰心)が11以上で【善】と【悪】のみ

盗賊の場合、AGILITY(俊敏性)が11以上で【中立】と【悪】のみ――」


早口で職業を説明する真央に、

イチゴとタツヤは「始まったよ」という顔をし、

彩乃はあきれたように視線を向ける。


篠原たちはぽかんとしたまま、言葉についていけていない。


それでも、真央は止まらない。

止まる気もない。


「――司教の場合、INT(知力)とPIE(信仰心)が12以上で【善】と【悪】のみ

侍の場合、STR(力)が15以上、INT(知力)が11以上、PIE(信仰心)が10以上、VITALITY(体力)が14以上、AGI(俊敏性)が10以上で【善】と【中立】のみ

君主の場合――って、誰だよ笑ってんの?」


笑い声が聞こえて、真央が説明を止めて顔を上げると、イチゴとタツヤと彩乃以外は、あきれた顔にしていた。


イチゴはケラケラと笑っている。

タツヤは目を伏せ“毎度のことだ”という顔をしている。

彩乃は隣で頬杖ついてニヤニヤしていた。


「立花くん、君・・・ある意味すごいかも。」

「確かにすごいな。」


門畑が唖然としながら口を開くと、隣の篠原が感心して笑う。


「確かに、そのINTELLIGENCEを勉強に向けたら・・・」


榊原がそう言って笑う。

藤堂は首を振って笑っている。


「わ、私は、毎日のように片鱗を見ていたわよ・・・ぶふっ!」


朝比奈までもが笑いながら、皆に伝える。


「お、覚えるだろ? げ、ゲームの基本だろ?」


真央が両手を広げて尋ねる。


「まさか!」「ありえない!」「ないな~」「時間の無駄?」「攻略本でよくない?」

「30年以上前のゲーム、記憶するか?」「僕も覚えないなあ・・・」


散々な言葉が返ってきて、真央はショックを受ける。

彩乃が笑いながら肩を叩いて尋ねる。


「あはは・・・で、真央くん、そのパラメーターが何?」


彩乃の言葉に真央はハッとする。


「あっ! ・・・でも、ほんとに聞きたいと思ってるのか?」


そう言って、真央は全員を見回す。

全員が笑っている。 篠原は話せと指で手招きする。


「ほら~、みんな待ってるよ~~」

イチゴが笑いながら促すと、真央は口角が上がる。


「要は、条件にあった職種を選択しないと転職できないわけだから・・・

パラメーターも調べずに適当に転職しても失敗するに決まっている。


もしかしたら、この世界の住人は、この職業になれる条件を知らないのかもしれない。」


そう言って、真央はテーブルを指でトントンと軽く叩いた。


「だから、パラメーターも調べないってことか?」


タツヤが目を細めて尋ねた。


「多分だけどね。」


「なるほどね・・・

だからイレーネさんは『ほとんど成功した話を聞いたことない』って言ったのか・・・」


篠原が腕を組んで黙り込んだ。

何かを考えているようだった。


―――


「そういや、藤堂は今後どうする?」


真央がそう言うと、藤堂が顔を上げて真央を見る。

そして、首を傾げながら尋ねた。


「今後っていうと?」


「迷宮行かない組か、迷宮組のどっちかってこと。」


そう言いながら、行かない3人をフォークで指して、自分達を指した。

藤堂は腕を組み考え込む。


「迷宮に興味はある。

ただ、自分が何者なのか知りたいかな。」


「そうだな・・・まず職業を調べないと、先には進めないか・・・明日以降の話だな。


よし、難しい話はここまででいいよな?

今日から3日、篠原のおごりらしいんで、食べようぜ!!」


真央がそう言うと、ザワザワと皆が反応する。


「おごりか、そりゃ頼まないと」

「はいはいはーい! コロナさーん!!」


彩乃が真っ先にコロナを呼んだ。

篠原はその様子に慌てる。


「ちょっと待て、オレはおごるとは言ったが、3日は了承してないぞ!!」


アクトリアの上には満天の星が広がり、いつの間にか夜の帳が落ちていた。


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