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アクチュアリー ―封印都市アクトリア―  作者: ブラックななこ


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光の筋

篠原が書庫を出て、狭い廊下を歩いてコンティル城から中庭に出る。


チリ!チリ!チリッ!……キンッ!キンッ!キィィィィィィィン!!


その時、高周波の音がアクトリアの空に響く。

そして、夕方の空を一筋の光が切り裂き、地上に降り注いだ。


「あ・・・あれは・・・!?」


篠原はその光を見上げて見つめた。


「あれ・・・また来訪者か?」


中庭にいた城の使用人が空を見上げてつぶやく。


「こ、今度は・・・誰だ!?」


篠原の額に汗が伝う。

慌てて、城門へと向かった。


――― ナゼール教会裏


教会裏は人だかりができていた。


(これもいつも通りだな・・・)


篠原は「自分も慣れてきたもんだ・・・」と、人だかりの中へと入っていく。

その時、篠原は違和感を覚えた。


人だかりの隙間をスルスルと縫うように進んでいく。

経験のない動きで人だかりを抜け――気づけば、輪の内側に立っていた。


「えっ? ・・・い、いったい・・・何が????」


驚いて振り返ると、人だかりが隙間なく埋まっていた。

手を開いて自分を見つめる。


「い、今・・・だれかに・・・接触したか・・・?」


微かな服のこすれはあったが、体と体の接触はほとんど覚えていない。

体の中で一番幅のある自分の肩をジッと見つめた。

そんな時だ。


「ここはどこですか!?」


大声が響いた。

その声に篠原が振り返る。


学生服の藤堂がそこにはいた。


「こ、今度は4位の智久か・・・」


篠原は、手をぎゅっと握りしめて、藤堂を見つめた。

藤堂のすぐ近くではウッディコが、いつものように対応している。


「ここはアクトリアって街だ。」


「あ、アクトリア・・・?」


藤堂は周囲の風景を見渡す。

後ろには教会らしき建物があり、目の前には高い城壁がそびえている。

城壁には人が開いた窓からこちらを眺めながら、話をしているようだった。

左を見ると背の高い大きく茂った木が見える。

今まで見たことのない木だった。


「な、なんだ、こりゃ・・・あ、頭が沸騰しそうな・・・

そんな情報量だぞ・・・」


呆然とする藤堂にウッディコが声をかける。


「なあ・・・オマエも『コーカコーコー』から来たのか?」


その問いに藤堂がビクリと反応する。


「今・・・口加高校・・・って言ったのか・・・?」


ウッディコが頷く。

藤堂は、ウッディコの目の前まで歩み寄った。


「オレは藤堂智久、あんたは?」


「ウッディコだ。 トードートモシタ・・・」


「智久だ。」


「トモヒタ」


藤堂はあきれ顔を片方の手のひらで、目のあたりを塞いで口元が緩んだ。


「あはははは・・・ウッディコさん、通常営業だなぁ~」


ウッディコの後ろで篠原が笑い出した。

その笑い声に大きな体をひねって振り返る。


「ナオヤ!」


「なおや?」


藤堂はウッディコの体をよけるように横からのぞき込む。


「な、直か!?」


篠原は顔のあたりに手を上げて挨拶した。


「よっ! 久しぶり!」


藤堂は篠原のその軽さに、イラッとする。

篠原に体を寄せ、人差し指で胸の所を何度も突きながら、大声で怒鳴った。


「直! ふざけんなよ! オレがどれだけ心配したと思ってんだ!?」


その大声に、周囲にいる人だかりがザワザワと騒ぎ始めた。

ウッディコは周囲の反応に頭を掻き、周囲に両手を広げてアピールする。


「大丈夫だ! この二人は仲が良いだけだ!

みんなも仕事に戻ってくれ~~!!」


パン!パン!パン!


そう言って、大きな手を叩いた。


「まだ、来訪者は来るのか?」

「トレバス様は大喜びだろ。」

「次は男か女か? 賭けようぜ。」


ざわつきはそのままだったが、人だかりは少しずつバラけて行った。

藤堂はバラける人だかりを見つめて、気持ちが落ち着いた。


「で、直・・・ここはどこだ?」


「城塞都市アクトリアだ。」


「名前を聞いてるんじゃない!

これはアレだろ? ・・・神隠し事件の行き先だろ?」


篠原はびっくりした顔を一度すると、真剣な顔に戻りニヤリと笑う。

そして、藤堂の肩をポンポンと叩いた。


「流石、智久だな・・・パニックにならず、冷静に物事をよく見てるね。」


「ナオヤ、説明は任せて良さそうだな。 オレも戻るがいいか?」


「大丈夫です。」


「そうか、じゃあな、トモキタ!」

ウッディコは藤堂に向かって手を上げながら言った。


「ともひさ! なんで“来る”になるんだよ・・・

・・・もう、『トモ』って呼んで。」


藤堂は唯一言えてる「トモ」の部分だけにすることにした。

ウッディコは親指を立てる。


「オッケー、トモ! 仲間いっぱいいるから安心だな。

頑張れよ!!」


そう言うと、ウッディコはガシャガシャと鎧の音を響かせてメインゲートの方へと走って行った。


「仲間って・・・神隠し事件の全員いるのか?」


「いることにはいるんだが・・・3人ほどいない・・・」


篠原は歯に詰まったような答えを返す。


「そりゃ、どういうことだよ?」


篠原は説明すると長くなるので、真央が帰ってくるのを待つことにした。


「そこは詳しい奴に説明させる。 立花真央だ。」


「立花真央・・・最初に消えた連中か・・・」


篠原は小さく頷いた。


――― 門番亭


上履きだった藤堂の履物を買い、二人は門番亭のドアをくぐる。

篠原は店内を見回す。


「あ、やっぱりいた。」


奥の大きなテーブルに榊原と門畑が早い夕食をとっていた。

篠原が奥へと進んでいく。

藤堂は店内の作りを見ながら、後をついていく。


「よう! オマエらいつもここにいるよな。」


篠原が笑いながら二人に声をかける。

榊原が顔を上げる。 門畑は食い続けながら、視線だけを篠原に向ける。


「一緒じゃないわ。 ここで会っただけよ。」


「紹介したいヤツがいるんだ。」


そう言って、右の手のひらを左側に向けた。

門畑のフォークの動きが止まり、皿を置く。

榊原は不思議そうな顔をする。


「紹介したいヤツって?」

「誰もいないけど?」


篠原は左方向に顔を向けて、藤堂がいないことに気づき、店内を探す。


「いた。」


藤堂は、壁に手を置き、調べるように体を右に左に動かしている。


「智久!! 何やってんだ!?」


篠原の声に藤堂が顔を上げた。

見ると、篠原が手招きしている。


「ごめん、ごめん。」


藤堂が篠原のそばへ寄ってくると、榊原と門畑が驚く。


「藤堂君!?」

「紹介したいヤツって藤堂君なの?」


二人の反応に、藤堂は怪訝な顔をして一瞬間が空いたが、口を開いた。


「??・・・初めまして、藤堂智久です。」


そう言って、手を差し出した。

三人は、その冗談のような行為にポカンとなった。


「智久、何、冗談言ってんだ。 全然笑えないぞ。」

「うん、笑えないね。」

「藤堂君ってこんなキャラだったの?」


藤堂は首を傾げた。

どう見ても初対面の相手だったからだ。


「いや、君たちのこと・・・知らないんだが・・・

直は神隠し事件の・・・って言ってたが、知らない人間もいるってことか?」


榊原は自分の顔や体を手のひらでペタペタと確認する。

その動作を見た篠原と門畑が声を漏らす。


「「あっ!?」」


榊原が真っ赤な顔して手を上げる。


「さ、榊原雫です!」

「かっ、門畑っ、りょ、良平です!」


門畑も合わせるように手を上げた。

藤堂は「は?」という顔をした後、じっくりと二人の顔を見た。


「え、えええっ!?」


門番亭に、藤堂の驚く声が響き渡った。


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