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アクチュアリー ―封印都市アクトリア―  作者: ブラックななこ


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55/77

支配者

久美の頭の中で、あの言葉がこびりついて離れなかった。


(木下が昨日の職員会議で、京大の推薦に選ばれたぞ!)


16時過ぎ、太陽は傾き、久美の足元から6メートルほどの長い影が伸びていた。

いつもの帰り道「フケンタン坂」の入口に差しかかった。


フケンタン坂は木々が覆い、夕方の太陽がその木々の入口を明るく照らす。

坂の上から見下ろすと、入口の木々の明るさと谷底のコントラストが、

闇へと続いている大穴に見えて不気味だった。


久美は、その大穴に誘われるように降りていく。

周りは鬱蒼としており、真っ暗だった。

だが、久美はその暗さが心地よく感じた。


坂を下りきると、再び世界は明るくなってくる。

だが、それでも長い影の中だった。


何かが久美に語りかける。


(……どうした…?……いつもと違うようだな……)


「なんで、アイツが・・・」


久美は口を押えた。

胸の奥からどす黒いなにかが溢れてくるようだった。

周りには下校中の生徒たちがいる。

必死で吐き出したい気持ちを押さえた。


開田公園を抜け、サイクリングロードに出た辺りで、

やっと長い影から抜け出した。

すると、胸の中からスーッと何かが消えていった。


―――


久美は自宅へとたどり着いた。


「・・・ただいま・・・」


母親はまだ帰ってきていない。 だれも返答はしない。

玄関のドアを開けると、家の中は真っ暗だった。


(……おかえり……)


「嘘言ったなあーっ!!」


久美は叫んだ。

そして、靴を脱ぎ、苛立ち、床に足を打ち付けるように部屋へと歩いていく。

そして、ドアの前に立つ。


(……嘘…とは?…)


「消すのは藤堂って言ったじゃないか!!」


そう言って、ドアを勢いよく開けた。


(……あの時点では…藤堂智久…だっただけだ……)


久美はカバンを畳の上にたたきつける。


「だったら!・・・追加された時点で・・・教えてよ!!

フーーッ! フーーッ! フーーッ!・・・」


久美は肩で息をして、タブレットを睨みつけた。


(……何を…そんなに怒っている?…そいつも消せばいいんじゃないか?…)


「京大の推薦が決まった今の時点で消したら、

推薦を欲しがってる私が怪しまれるじゃない!!」


こぶしを強く握って叫んだ。

それは、今までで一番強い声だった。


チチチチチチチ……


時計の秒針の音だけが、久美の部屋に響いていた。


(……ククッ…クク…ククク……)


途切れ途切れに笑いが漏れていた。

その笑いに久美がいら立ち、顔が歪んでいく。


「ふざけんな!! 何笑ってんのよ!!」


(……仮に……オマエが怪しまれたとして……どうなるのだ?…)


「どうなるって・・・そりゃ――」


久美がやっていることは、タブレットに頭文字のアルファベットを入力して、

職業とボーナスを割り振り、属性を決めて対象を思い描くだけだった。


久美は慌てて、タブレットを開く。

そして、酒場へ行くと、リストを表示した。


1、篠原直哉

2、榊原

3、K

4、T


「あれ? 朝比奈がいない・・・」


久美はニヤリと笑う。


「それは逆に都合がいいわね・・・」


篠原直哉をタップする。


ウインドウが開き、ステータスが表示された。


―――――――――――――――

NAOYA-SHINOHARA

HUMAN (AGE:17)


CLASSES:THIEF(LV.1)

ALIGNMENT:EVIL


STR  INT  PIE  VIT  AGI  LUC

8    8   5   8   15   9


                      戻る⏎

―――――――――――――――


ウインドウのそばには戻るボタンが表示されている。


「作った状態のままね・・・ねえ、これって消せないの?」


(…作ったキャラクターは…消せない……)


「じゃあ、名前は変更できる?」


(…ククッ……訓練所で…できる……)


「・・・・・・訓練所・・・」


久美は声が笑ったのが気になったが、訓練所に移動する。

キャラメイクでいつも訓練所には入っていたので、内容は分かっていた。

メニューの中に【キャラクターを編集する】があった。


「そうか、編集するのか・・・」


(……キャラクター削除は…出来ないように…しとかないとな……)

タブレット画面が怪しく歪んだような動きを見せる。


篠原を選択すると、【名前を編集する】【職業を変更する】の2項目が現れた。

【名前を編集する】をタップすると、新しい名前の入力を求めてきた。


久美はニヤニヤしながら【S】を入力して決定ボタンを押した。


次に榊原を選択し、同じように名前を変更する。


「榊原もSだと判別しづらいわね・・・でも、別にいいわね・・・」


一瞬別名にしようかと思ったが、ニヤニヤと笑いながら【S】にした。


キャラクターリストには次のように表示されている。


1、S

2、S

3、K

4、T


そのリストを見つめて、久美はニヤニヤと笑う。


「くふ・・・」


無意識に、口から声が漏れた。


「くふっ・・・くは・・・わは・・・」


徐々に漏れる声が大きくなっていく。


「あはははははははは・・・・・・!!」


久美は眼鏡をはずし、笑いすぎてあふれた涙を手首で拭う。


「このリストなら、絶対バレない!

誰かに見られたとしてもバレないわ!!

完全犯罪だわ!!」


(…では…木下陽菜乃は…どうする?…)


「もちろん消すわよ!

今まで懸念してた順番、私に疑惑がかからないとか、

気にしなくて良いんだから!!


いつ消してやろうかしら・・・

推薦貰って、もっと喜ばせてから消してやろうかしら・・・?」


久美は左手で顔を覆うと、徐々に手を顎の方へ滑らせる。

目はニヤニヤとして、眼球を左右に動かしていた。


「あああぁ~~~~っ・・・」


久美は顔を高揚させ、喘ぎ声のような声を出しつづけた。


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