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アクチュアリー ―封印都市アクトリア―  作者: ブラックななこ


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視線の圧

岩永と後藤は口加高校の進路相談室にいた。


相談室の棚には、大学や専門学校のパンフレットがずらりと並び、棚の下の段には赤本が埋め尽くされていた。


壁には模試の年間スケジュール、指定校推薦の一覧、就職求人票がベタベタと貼られている。

左右の壁際にはPCが並び、大学のHPを調べたり、願書を作成することが出来るようになっている。


後藤は、その模試のスケジュールを驚いた表情で見ている。


「今時の高校生は、こんなスケジュールでやってんのか~~・・・すげえな・・・」


「それを全部受ける訳じゃないですよ。

受けるのは希望者だけです。」


岩永は窓際で外を眺めていたが、振り返って答えた。


岩永のいる場所は、対面で相談できるスペースがパーテーションで区切られていた。


トントン!


ドアをノックする音がした。


「はい、どうぞ。」


岩永が答えると、ドアがガラリと開き、担任の幸田と野本早希が入ってきた。


「・・・野本早希さんを連れてきました・・・

聞きたいことがあるとのことですが、私も同席しても?」


緊張している幸田と野本の様子を見て、岩永が笑いながら答える。


「どうぞ、どうぞ、

柏木さんと仲が良かったっていう野本さんに質問があるだけなんで。」


二人はその言葉でホッとした表情になる。


後藤はパーテーションを動かして広げ、二人分のスペースを作ると、

椅子を隣から持ってきて、幸田と野本を座らせる。


そして、2歩下がって後ろに立った。

それを幸田が首を回して確認する。


「あ、気にしないでください。 彼はいつもあの位置なので・・・」


岩永はそう言って笑い、続けた。


「えっとですね・・・5月18日に消えた7人

その中で唯一浮いている柏木さんについてなんですが・・・」


野本は、その言葉に「ああ~」という顔をした。


「もしかして、彩乃と他の6人との関係性ってことですか?」


岩永は、その問いに驚いた。


「どうしてわかったの?」


野本はその問いに答える。


「同級生の中でも話題になってたんですよ。

仲のいいグループと彩乃の関係。」


「へえ? それで?」


岩永は同級生の間で話題になる話題が気になった。

なぜなら、捜査している側と違い、事件に近い同級生同士の生の会話だったからだ。


「私は、彩乃があのグループと仲がいいって話は聞いたことはないです。

そういう話題も出たことないです・・・


立花と山本とは4月から同じクラスになったばっかりだったし、

別に仲が悪いわけでもないかな・・・


うちらの中であの二人を嫌ってるやつは一人もいないです。

普通に同じクラスの一人って感じ・・・


まあ、彩乃が二人をどう思っていたかってことは、聞いたことがないかな・・・」


野本はそう言って、考え込むように口元を手で押さえた。


「じゃあ、特に6人との接点はないってことかな?

誰かと交際してたとか?」


「彩乃が隠してなければ・・・彩乃って意外とそういうこと教えてくれないから・・・

浮いた話も全然してなかったなあ~・・・


あ、でも・・・趣味が合う男子はいるかも・・・」


「趣味ってのは、どんな?」


「彩乃って、小説やアニメが好きなんですよ。

ファンタジーとか異世界とか大好物。

あと、冒険物も好きかな・・・」


「つまり、6人の中に同じ趣味がいるかもと?」


野本はコクリと頷いた。

岩永は眉を寄せて、野本の言葉をかみしめ口を開く。


「君たちはこの失踪事件をどう考えてるのかな?」


野本は一度目を伏せ、瞼の中で目を左右に動かす。


「これ・・・私だけの意見じゃなく・・・みんなとよく話しているのは・・・

彩乃を含めた7人には悪意を感じないけど、

その後の4人には悪意を感じるって・・・話題にはなります。」


「悪意・・・?」


岩永は背もたれにもたれると、後藤をちらりとみる。

後藤は小さく頷く。


「それはどんな悪意?」


野本は寒気を感じ、体を少し丸め両手で肘を抱える。


「7月に入ってから、学校中に圧を感じるんです・・・」


「圧ってどんな?」


「・・・・・・なんかずっと見られているような・・・視線を感じるというか・・・」


キーンコぉーン…カぁ〜〜ンコーン!


そんな時、チャイムが響く。

野本は体をビクッ!とさせた。


「・・・・・・このチャイムも・・・7月頃から・・・おかしくなった気がします・・・」


そう言うと、首を左右に振りながら視線を部屋中に送り、何かを探すような動きをする。


岩永は鳴り響くチャイムの音を確認するように顔を上げ、ゆっくりと見回す。

そして後藤を見る。

後藤は首を傾げた


幸田が初めて口を開いた。


「このチャイム・・・職員室でも『不気味になった』って話してます。

まさか、生徒の中でも話題になっているのは初めて知りました。」


「先生方でも?」


「修理の依頼もしたんです・・・でも・・・業者は機器に問題ないと・・・」


岩永は眉を寄せ、持っていたペンで手帳を小刻みに叩く。


「なるほど・・・今度、科捜研に放送機器の調査もさせたいですね・・・

予鈴のチャイムも鳴りましたし、今日はこの辺で・・・

野本さん、また疑問点があったら聞いても良いかな?」


「はい・・・大丈夫です。」


「では・・・」


幸田がそう言って立ち上がると、野本もそれに合わせて立ち上がる。

岩永もテーブルに手をつき、ゆっくりと立ち上がる。


ガタ、ガタッ!


パイプ椅子が音を立て、室内に響く。

幸田は軽く会釈して、野本の背中に手を当て、進路相談室から出て行った。


立ち去った後、岩永と後藤はしばらく動かなかった。

岩永は机の上にあるボイスレコーダーの録音を止めた。


「・・・悪意ねえ~・・・」


「生徒の方が、大人より感受性が強いってだけじゃないか?」


後藤が腕を組んで、頭を何度か傾けながら言う。


「大人が感じない物ですか・・・

そんな物、どうやって捜査すれば・・・」


岩永はそう言って、窓の外を見つめた。




――― アクトリア 迷宮


へっくし!


ダンジョンの中で彩乃は突然くしゃみをした。

それを見ていたイチゴが尋ねる


「どしたの~? 風邪~?」


彩乃はイチゴを見る。


「・・・誰かが噂してるとか?」


その答えに、イチゴは笑いながら冗談を言う。


「向こうの世界で~話題になってるのかも~

柏木さんが『誰かさんと付き合ってたんじゃないか?』とか~」


「なんでそんな話が話題になるのよ?」


イチゴは首を左右に動かすと、目をその動きに合わせて左右に動かす。


「・・・・・さあ~~?」


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