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アクチュアリー ―封印都市アクトリア―  作者: ブラックななこ


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異質点

夏休み前、発生した11人目の失踪から、すでに50日が過ぎようとしていた。


事件は、まるで止まったかのように沈黙していた。


県警が導入されても、何も進展しない失踪事件に世間はドラマ性を感じず、どんどん冷めていく。

そしてそれは、警察に対しメディアでは「無能」や「担当者の実力不足」などという言葉で煽り続ける口実を与え続ける。


「南島原の高校生が消えてから既に100日以上! 警察の無能ぶりに家族は憤慨!」


表紙に赤い文字が白枠で見出しが書かれた雑誌が、金属製の本棚に、新聞などと一緒に並んでいる。


それを手に取る鉢田。


ザーッとページを流し、あるページで止まると、記事を口に出して読み始めた。


「長崎県の島原半島の一番南に位置する南島原市で発生した高校生(全員3年生)の失踪事件。 この事件は『目の前で消えた』というショッキングな出来事で、日本全国民に好奇の目で見られているため、ご存じの方は読者の中にも多いだろう。


最初の失踪からすでに106日(原稿執筆時点)が経ったが、警察の公式発表によれば、失踪事件の原因は一向に見つかっていない。


確かに我々の取材でつかんだ情報にも、原因というものはまったく見つかってはいない。 これはこの事件の怪異性をよく表している。

目の前で消えるという事象。 人間が世界から姿を消す。 北朝鮮による拉致という行動とは違う“神隠し”だ。


そこで、北朝鮮の拉致事件と同じように、我々は被害者家族に取材を試みた。

警察の発表で、最初に消えたと目される少年“K”。


少年“K”の家族が話すには、失踪した家族にも発表された情報以外の情報はもたらされておらず、家族は不信感を募らせているようだった。

とにかく何かしら情報を欲しいと切望しておられた印象が強い。


家族会にも取材ということで参加させてもらった。

最後の失踪者はまだ40日ほどしか経っていなかったが、最初の失踪者の106日という重い現実が40日という短い期間でも、先の希望をまるで見いだせず、悲しみに臥せる母親の苦しみが、筆者にも強く刺さった。


家族会を支援する同じ町民の方々や親戚の方々も、出口の見えない迷路に迷い込み、右往左往するだけの日々が続いている。


のどかな南島原市での私の取材は3か月目に入ったが、行政や警察は、この家族の苦しみを誠実に受け止めているのか、筆者には疑問を感じることが多い。


事件の経緯を説明しておこう。 5月17日に――!!」


鉢田の持つ雑誌に丸まった新聞紙が飛んできて当たった。

それに驚いて、鉢田は読むのを止める。


「うるせえぞ、鉢田! 口に出して読むんじゃねえ!」


雑誌の記事を読んでいた鉢田に、田中はイライラして新聞紙を丸めて投げつけ、大声で吠えたのだ。

鉢田は雑誌を閉じて机に置き、田中を見る。


「記事を読んでるだけじゃないか・・・」


「口に出す必要はないだろ!」


笹田が丸まった新聞紙を拾い上げ、元の形へ破けないように伸ばしていく。


「田中さん、今日の新聞をダメにしないでください。」


「TV欄なんて誰も見ないだろ!」


笹田はため息をつく。

「TV欄は丸めた新聞の1枚では1/4です。」と笹田は一瞬口を開きかけ――何も言わずに新聞を伸ばした。


鉢田は椅子にもたれ、窓を見る。

9月とはいえ残暑の強い光がブラインドから漏れていた。

ツクツクボウシの声が、締め切られた警察署内にかすかに聞こえている。


背もたれにもたれたまま、手を伸ばして雑誌を再びめくる。

雑誌のページには、捜査中の岩永達と科捜研のメンバーたちと、口加高校へ入っていく白黒写真が見出しと共にページの上半分に印刷されていた。


「県警の連中、この暑さの中、何も見つからない事件を追わなきゃならんとは・・・

可哀そうになってくるな。」


―――


岩永と後藤は車で移動中だった。

車を運転している後藤が尋ねる


「岩永、次はどこ行くよ?」


「・・・・・・。」


岩永は手帳を見たまま黙っている。

後藤はちらりと横目で岩永を確認し、少し大きな声で呼んだ。


「おい! 岩永!」


岩永は目を見開き、パチパチと瞬きした。


「は、はい。なんすか後藤さん?」


「なんすかじゃねえよ、次はどこ行くんだ?」


後藤の問いに、岩永は目を細め考える。


「・・・・・・とりあえず、高校行きましょうか。」


「高校か・・・なんか当てがあるのか?」


「とくにはないんですが、市警の田中さんから聞いた情報だと、

柏木と特に仲がいいという『野本早希』って子がいるらしく。

柏木に関して、ちょっと聞きたいことがありまして・・・」


手に持つペンで耳の上を掻きながら答える。

それをちらちらと後藤は見る。


「ほう・・・何を聞くんだ?」


「最初に消えたメンバーとのつながりですね。

田中さんの話だと、どうもその辺が分からないらしいんですよ。」


「わからんとは?」


「私が思うに、最初の7人とその後の4人には明確な差があるじゃないですか。」


「成績が普通と成績上位か?」


「そうです・・・7人が前期だと考えると、後期の4人とは失踪の意味が違うでしょ?」


「意味とは?」


一瞬視線を岩永へ動かし、尋ねた。


「田中さんの話だと、失踪が『悪魔や神』の仕業だとすると、その『悪魔や神』が入れ替わってるって言うんですよ。」


「は? それじゃもうオカルトだと認めたってことじゃねえか。」


後藤はまっすぐに見たままハンドルを叩く。

岩永は後藤に見えるように手を差し出して振る


「いえ、田中さんは決してそうは思ってません。

誰かの仕業だと考えたら、『思考が違う』って言うんです。」


「思考・・・ね・・・」


「はい。 それで、前期の中で、異質なのが『柏木』です。

田中さんはココも『思考が違う』って・・・言ってますね・・・」


岩永は目を細め、考えるように伝えた。


「・・・・・・オマエ、市警の田中と仲いいんだな。」


「え? あ、はい。

波美音でちょっとありまして・・・それから、たまに波美音で意見を聞いてもらってます。」


「わかった・・・口加へ急ごう。」


そう言って、後藤はハンドルを右に切ってアクセルを踏んだ。

車はキッという音をたて、すでに閉店して十数年経った植松屋前の急な坂道を登っていった。


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