表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アクチュアリー ―封印都市アクトリア―  作者: ブラックななこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/77

時間の断層

ゲートウォッチの自由スペースには長い沈黙が落ちていた。

真央以外は全員、誰かが口を開くのを待っていた。


ただ、篠原が響かせる椅子の音だけが小さく響いている。


真央は全員を見回し、小さなため息を吐くと、

コップを手にし、テーブルに強めに置く。


トンッ!


その音に全員がビクッ!と体を震わせた。


「・・・た、立花君・・・き、君の仮定の話では・・・

全員が迷宮に入った方がいいってこと?」


門畑だった。

全員が顔を上げた。


「それはわからない・・・城で働いていた来訪者がどういう理由で行方不明になったのか・・・

それが分からないことには、迷宮に入ることが絶対とは思ってはいないよ。」


門畑はホッとして視線を手元に落とす。


「ただ・・・」


真央が続けると、門畑が視線を上げる。


「ただ、城で働いていた来訪者が、いきなり迷宮に潜って、どうこうできるもんじゃない・・・」


「それって・・・どういう意味・・・?」


門畑は真央の言葉の意味が分からなかった。


「準備なしで、迷宮なんて無理って話だよ。」


門畑がその声の先へ視線を移すと、朝比奈が敵と戦う時のような顔でテーブルを睨んでいた。

その迫力に門畑はビクッ!と体を震わせる。


門畑は、その圧が朝比奈だけではないことに気づき、テーブルを見回す。

彩乃、イチゴ、タツヤから圧が放たれていた。


その雰囲気に榊原は、目を見開いた状態で視線だけを四人に素早く配り、篠原は椅子から立ち上がり、テーブルから一歩下がった。


「ははは・・・お、オマエら・・・もう人間じゃないな・・・」


篠原は乾いた笑いをあげ、指を震えさせながら四人を指さす。


「その圧抑えろよ・・・篠原たちがビビってるぞ。」


真央の言葉に四人はハッとして我に返った。

場が元の自由スペースに戻る。


門畑と榊原は胸をなでおろした。


「よ、よく、わかった・・・そういう場所ってことだな・・・」


篠原は、自分の椅子を引き寄せ、テーブルから少し離れて座った。


「つまり、行くなら早く、行かないなら絶対行かない・・・そう言うこと?」


榊原が尋ねると、真央が人差し指を差し出しながら答える


「ちょっと違う。 行くなら絶対一人で行かない・・・かな。」


「そうね。

職業も関係するけど、一人ではダメだわ。」


同意するように彩乃が続けた。

イチゴも頷く。


「最初はあの迷宮の圧だけで動けない。

一人だけの初迷宮なんて・・・考えたくないな。」


タツヤがテーブルに肘をついて手を組み、親指で額をコンコンと叩く。


「とにかく、この世界は謎だらけ! ゲームが先なのか、世界が先なのか・・・

答えは迷宮にあるような気がする。」


真央がそう言うと、調理場で真央の話を聞いていなかった四人が尋ねてきた。


「・・・ねえ、真央~、

もしかして~・・・まだ説明してないことあるんじゃないの~?」

「真央・・・今のはどういう意味だ? ゲームが先? 世界が先?」

「まだ何か隠しているのか?」

「隠さないで、全部説明してほしいです。」


真央は「えっ?」って顔をする。


「真央くん、そこは説明不足。」


彩乃が言うと、調理場で話をしたメンバーが頷く。

真央は、どの話なのか分からず、首を振って皆の顔を確認する。


「はあ~~っ、これだもんな・・・」


彩乃が深いため息を吐く。

真央の代わりに説明する。


「さっき調理場で聞いて私たちもびっくりしたんだけど、この世界の根幹部分。

ほんと、大事な話。

この世界って、異世界なのか? ゲーム世界なのか?って話よ。」


彩乃の説明を聞いて、真央は手をポンと叩いた。


「異世界か・・・ゲーム世界か・・・」


タツヤが腕を組み、天井へ目を流す。


「それは考えてなかったね~・・・」


イチゴが頭を傾けつぶやいた。

そして、全員が真央を見る。


真央はその視線に慌てて両手を上げる。


「あ~・・・全部オレの想像だよ。

この世界のことが分かっているわけじゃない。」


話すことを躊躇すると、全員から「早く話せ!」という圧を感じる。

真央は仕方なく話し始める。


「・・・・・・こまったな・・・ほんとに全部予測だからね・・・」


全員がジッと待っている。


「まず、この世界の成り立ちは800年前に封印された城塞都市アクトリア・・・

でも、この世界は地球の・・・オレたちがいた世界の800年前じゃない。」


「えっ?」


驚いたのは篠原だった。

全員が篠原に視線を向ける。


「あ・・・ごめん。 それ、どういうこと?」


篠原は迷宮に潜っていない、さらに体の変化もない。

一番、現実に近い人間だった。


「タツヤ、“ミルマ”を発動してくれないか?」


「ここで?」


「見せるのが一番早い。」


「ああ、そう言うことね・・・」


タツヤは指を二本立て、Mを空中に描き出すと、指先から光がつながっていく。

その光景に篠原、榊原、門畑が、目を丸くして見つめた。


「う・・・うそ・・・」


空中に文字が描かれていく様を、榊原が両手で口を押さえながら言葉を漏らす。

文字が完成すると、テーブルの上の天井から青白い光が放たれ、ゲートウォッチ内を淡く照らした。


篠原と榊原、そして門畑は周囲を見回したり、足元を見つめたりする。


「なんだこれ? 影もおちるのか?」


自分の手を広げ、その影が椅子に座る足にゆらゆらと落ちている。

震える手を足に落とし、タツヤを見る。


「魔法だよ。」


タツヤが篠原の視線に答えて口角を上げる。


「そうか・・・これがこの世界なのか・・・

僕たちの世界の800年前に魔法なんて、物語の中でしか存在しない。

そう言うことだな!?」


篠原は真央を強く見た。


「そう・・・オレたちの知っている歴史じゃない。

そして・・・このアクトリアは、オレたちの世界に実在するゲームと繋がっている。」


真央の言葉に篠原は衝撃を受ける。


「な、なるほど・・・そうだった・・・

僕たちはゲームによってこの世界やってきた。

だから、ゲームの世界かもしれない・・・と・・・」


「ああ、これはまだ分からないけど、ゲームを真似た異世界、

もしくは異世界を真似たゲーム世界のどちらかだと思う。」


真央の言葉に篠原が手を上げて止める。


「ちょ、ちょっと待て・・・情報が多すぎる。」


門畑も目をきょろきょろとさせ、自分の頭の中で情報を整理している。


「真央らしいよね~」


イチゴがケラケラと笑いながらつぶやく。

タツヤも同意して笑った。


彩乃はため息を出し、頬杖をついた。


「ほんと・・・ゲーム脳。」


朝比奈は笑いながら、彩乃の両肩をポンポンと叩く。




篠原がまとめ終わったのか、手を下げて確認する。


「立花・・・オマエはこの世界に、2つの可能性を見出してるってことか?」


真央は、後ろの壁にもたれ、目を細めながら口を尖らせた。


「そうなんだが、色々納得できていない部分もある・・・」


篠原は、「まだあるのか」と、困惑しながら尋ねる。


「それはなんだ?」


「これは、前にエルミダさんから聞いた話なんだけど・・・

この世界に送り込むゲームは、どうやら1本しかないんだよ。」


彩乃が“あの話か”と思い出した表情になった。


「いや、人を取り込むゲームが何本もあってたまるかよ!」


篠原が送り込まれた時のことを思い出し怒鳴る。

真央はどう説明すればいいかと考え、顔をしかめながら話す。


「いや、そういう意味じゃないんだ。

アクトは・・・30年前、世界中で大ヒットしたゲームなんだ。

それなのに、たった1本だけが、この世界へ送り込むシステムになっている・・・」


彩乃以外は全員が慌て始める。


「え~? それって~?」

「どういうことだ?」

「ちょっと待て、意味が分からないんだが?」


周りのことは気にせず、真央は続ける。


「10年前に訪れていた来訪者・・・

彼らの話では、ゲームが来訪者の元へと勝手に渡り歩いてきたらしい。

ある日、ポストに入っていたり、人に貰ったり・・・自分で買ったゲームではないらしい。


そして、オレの手に渡ったのも偶然拾った・・・」


「ストーップ!!」


彩乃が大きな声を出して真央を止める。


「何? 彩乃さん?」


目をパチパチと瞬きさせて彩乃を見る。


「周りを見て! 置いていくんじゃない!」


イチゴとタツヤ以外が、頭をかかえていた。

それを見て真央は「またやってしまった」と笑った。


「あ・・・ははは・・・」


「真央~、未消化の情報を話すんじゃなくて~、

疑問に思ってることを話してみたら~?」


イチゴがテーブルに伸びながらそう言った。


「疑問に思うこと・・・」


真央は額を指で横にこすりながら考える。

その言葉をみんなが待っていた。


「・・・・・・30年前というのが引っかかってる・・・」


イチゴが背を伸ばす。

真央の言葉の意味をそれぞれが考えている。


「それの何が疑問なの?」


彩乃が尋ねた。


「・・・アクトが発売された30年前から、本当に来訪者が始まったのかってこと。」


「つまり?」


「アクトリアは800年前にノクサリウスによって封印された。

なのに、30年前から始まる理由が見つからない。」


「もっと前からあったんじゃないかってこと?」


彩乃の質問に真央は指を彩乃に向けた。


「そ、そう。 それ。」


真央は頭を手で押さえ、目を閉じ顔をしかめて言葉を探す。


「この世界は・・・時間軸が狂ってる感じがあるから、

今を生きる人たちが知らない・・・・・・

もっと前から・・・あったんじゃないか・・・・・・」


目を開けて、立ち上がる。


「そう! もっと以前から“来訪者っていたんじゃないか?”ってこと!!」


真央の言葉に場が静まった。


「そいつは世界を覆すような謎だな。」


タツヤがつぶやいた。


「そんなのどうやって調べるのよ?」


榊原が続けて言った。

黙って聞いていた篠原が口を開いた。


「いや、僕なら調べられるかもしれない・・・」


その言葉に全員が篠原を見る。


「城主のところには記録がある可能性が高いよ!」


「なるほど~、直ちゃんの仕事できたんじゃない~」


イチゴが茶化すように篠原に言った。


「茶化すなよ・・・」


「パニクってるよりいいと思うよ~」


「そうね。学校一の秀才はそれぐらいの方が良いわよ。」


榊原が同意する。


「篠原、調べもの・・・頼めるかな?」


真央が尋ねると、篠原は少し照れながら答える。


「いいよ。運動はダメだけど、調べものならお手の物だ。」


篠原のその言葉に、誰もが小さく頷いた。

それぞれの役割が、ようやく見え始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ