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アクチュアリー ―封印都市アクトリア―  作者: ブラックななこ


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五人目

朝比奈と、早朝に迷宮へ挑む話をした後、

真央は朝比奈のパーティ参加について、

ゲートウォッチ内で皆と相談する事にした。


ゲートウォッチの入口から入って左には、丸テーブルが五台あり、

宿泊客が自由に利用できるスペースになっていた。

以前、真央と篠原が話していた場所だ。


すぐ近くには、洗面所と調理場へつながるアーチがあり、調理場では飲み物や料理などを自分たちで作れるようになっていた。


真央と朝比奈は、そこでお茶を入れ、テーブルに着いた状態で皆を待った。

朝比奈はお茶をすすりながら、ぶるると体を震わせる。


「う~~~、なんか新しい仲間に入るのって緊張する~」


そう言ってお茶を置くと、テーブルに腕を伸ばして体を投げ出す。


「そうなの? 体育系の部活やってる人って、

人見知りとかしないんじゃないの?」


テーブルに倒れた状態で、頭だけを真央に向ける。


「そりゃ、同じ競技をする同士だからだよ。

別の競技してる人たちとは、友達同士じゃなけりゃ、交流なんてしないし・・・


しかも、まったく接点がなかった人たちと、今日から突然参加とか・・・」


ゆっくりとテーブルから起き上がり、体を腕で抱き、再びぶるると体を震わせた。


最初に降りてきたのはタツヤだった。

寝起きのようで、髪はぼさぼさで、眠そうな顔をしている。


「タツヤ!」


真央が手を上げて声をかける。

アクビをしながら、手を上げて応えた。

テーブルの方に近づいてきた。


「あふ・・・どうした?

・・・珍しい組み合わせだな」


「本田くん、お、おはよう!」


朝比奈はバッと立ち上がり、挨拶をする。


「え? あ・・・お、おはよう・・・」


そう言って、席に着く。

朝比奈も席に座り、真央を見る。


「皆がそろったら話すよ。」


真央がそう言うと、朝比奈はテーブルの方に顔を戻し、体をモジモジさせる。


「そうか・・・じゃあ~、オレもお茶作ってくるわ。」


そう言って立ち上がると、調理場へと入っていった。


そこにイチゴが降りてきて、こちらを確認する。


「あ~、ほら、やっぱ待ってる~。早く~、柏木さん!」


イチゴが階段の上を見上げて手招きする。

すると、上から彩乃がおずおずと降りてくる。


ちらりと、真央と朝比奈の方を見た。


「ほら~、早く!」


イチゴは彩乃の手を取ると、引っ張りながら階段を下りる。


「ちょ、ちょっと・・・イチゴくん、危ないって!」


バランスを崩しながらも階段を無事に降りる。

イチゴは階段を降りてからも、テーブルまで手を引っ張っていく。


テーブルの前に来ると、朝比奈が立ち上がる。


「山下くん、彩乃さん、おはよう!!」


「おはよ~~」


「・・・おはよう」


彩乃は朝比奈をジッと見て答えた。

二人の視線が合うと、彩乃が固まった。


「え?」


朝比奈は彩乃が固まる意味が分からず、声を出す。

彩乃がスッと席に座ると、朝比奈も慌てて座った。


そこにお茶を持ったタツヤが戻ってくる。

調理場にも聞こえていたのか、イチゴと彩乃の分も持ってきて、テーブルに置いた。


「タッちゃん、サンキュ~~~」


「ありがとう。」


タツヤは席に座り、口を開く。


「なんか、見た感じ、知らないのはオレだけっぽいけど・・・」


そう言って、お茶をすすった。


「あ~、そうだね~、オレたちは、上から二人の会話聞いてたから~」


「ふ~ん、朝比奈さんがパーティに参加するとかそう言う話?」


そう言って、真央を見る。


「そうなんだ。

朝比奈さん、向こうでは剣道やってたらしくってさ。


部活ではインターハイを目指してたけど、

3位で引退になって、それまでの気持ちが切り替えられないらしくて。」


ガタン!


朝比奈が立ち上がって、座ってた木製の椅子がゲートウォッチの1階に響く。


「そ、そうなんです!

突然の引退で、くすぶった気持ちが消えず、

迷ってたところに、立花さんと打ち合ったら、

気持ちが迷宮に向かっちゃいました。


もし、よろしければ、皆さんのパーティに入れてもらいたいんです!!」


そう言って、朝比奈は勢いよく腰を折った。

タツヤはすすっていたお茶を口から離す。


「なるほどね・・・朝比奈さんって戦士なんだっけ?

で、どうなの実力の方は?」


真央をチラリと見る。


「うん、剣道とは言え、体の動かし方がわかってるよ。

レベルアップしたら、すぐにイチゴを追い抜くかもしれない。」


「え~、そうなの~?」


「真央くん、その言い方はイチゴ君に悪いわよ!」


「いや、本当の話だよ・・・

戦士と盗賊では、どう比較しても戦闘力は戦士が上なんだ。」


「でた。・・・ゲーム脳。」


真央は彩乃を睨んだ。


「なんだよ、彩乃さん。

なんで今日はそんなツンケンしてくるんだよ?」


真央は持っていたコップをテーブルにタン!と置く。


「あわわ・・・」


朝比奈は真央の横であたふたする。

二人が口論する中、タツヤがイチゴに顔を近づけ、小声で尋ねる。


(なあ・・・二人はケンカ中なのか?)


その問いにイチゴが苦笑しながら答える。


(ちょっとした行き違いなんだけどねえ~)


タツヤは“そうなのか?”って顔で二人を見て、お茶をすする。


「は~い! ちょっとストップ~!」


イチゴがテーブルに乗り出して、二人の間に入って止める。

二人の口論が止まったことを確認して発言する。


「オレは盗賊だから、戦士に抜かれても気にしないし~

なので、二人がもめる必要はないよ~


で、真央~、どうしたいの?

ミーティングが進んでないよ~」


「あ、そうだったな。

朝比奈さんを、パーティに入れたい。

みんなはどうかな?」


「オレは良いぞ。」


「オレも~~」


四人は彩乃を見る。


「・・・・・・これで反対したら、私バカみたいじゃない!」


「それって・・・?」


朝比奈が彩乃に尋ねる。


「・・・いいってこと。」


「やった~!!」


朝比奈は立ち上がると、両手を突き上げて喜んだ。


「じゃあ、今後のパーティの隊列なんだけど・・・」


朝比奈の参加が決まったところで、真央は隊列の形を提案する。

それぞれのコップを並べる。


「今までは4人だから、隊列は前衛と後衛の二人組だったけど・・・」


朝比奈のコップを隊列に入れる。

四人は立ち上がって、テーブルを見下ろした。


「戦士が入ったことで、前衛を3人にしても良いんだけど、

レベル1の朝比奈さんをいきなり前衛にすると、バランスが悪いと思うんだ。」


真央のコップを前衛の中心に置き、イチゴと朝比奈のコップを左右に置いて、左右を入れ替えながら説明する。


「朝比奈さんを左右どちらで考えてもバランスが悪い。

だから、逆クサビ型ではどうかな?と・・・」


「逆クサビ型って?」


彩乃が尋ねた。


真央は自分のコップとイチゴのコップを横並びの前衛に配置し、

朝比奈のコップをその二人の中央の少し後ろに置く。


「これで、逆クサビ。

それで――」


タツヤと彩乃のコップを前衛よりも間を開けず、狭めた形で朝比奈よりも後ろに配置する。


「これなら、前衛が漏らした敵も朝比奈さんが対処できるし、

後衛の防御でも朝比奈さんが動ける。」


「へえ~~」


「良いんじゃないか?」


「すごいですね。」


「さすが、ゲーム脳だわ・・・」


彩乃はつい口を滑らせ、慌てて口を押さえる。


「はいはい、オレはゲーム脳ですよ~

すいませんね~」


真央はいつものパターンだと、目を伏せて頭を上下に何度も頷かせる。


「そんなことないぞ、この脳がいい味出してる!」


タツヤが真央の肩を抱き、真央の頭をなでる。


「な、なでるなよ・・・」


「うん・・・ほんと、いい脳よ。」


そう言って彩乃が頭をなでて笑った。

その瞬間、二人の間の変な空気が消えていった。


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