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アクチュアリー ―封印都市アクトリア―  作者: ブラックななこ


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36/76

368点

クマゼミの鳴き声が、日ごとに徐々に大きくなる。

季節はじめの数と全盛期の数は大きく違う。

あちらこちらでクマゼミが鳴き喚き、

三半規管を狂わせるような声が、至る所で鳴り響いていた。


その音が、机に向かう生徒たちに圧をかける。

――もうあと少ししか時間はないのだと


夏休みは、止まることなく進んでいく。

そして、8月上旬の模試がやってきた。


久美は、この模試を目標にやってきた。

座る机には、鉛筆が数本と消しゴムが転がり、ペンケースの中には鉛筆が何本も入っている。

予備校の教室は、きつめの冷房がかかり、薄手の長袖を着て、目の前の楕円形に向かい合い、それを黒く塗りつぶしていく。


教室中に、カリカリ、ガリガリと他の受験者の音が交じり合う。


鉛筆の芯が丸くなるたび、削りたての予備に持ち替える。

窓の外ではセミが鳴いているはずだが、今はただ、隣の席が刻む規則的な筆記音だけが焦燥感を煽っていた。


机の上に置いた腕時計をちらりと確認する。

その直後、ペンを走らせるペースが上がる。だが、できるだけ正確に・・・・・・


「試験終了三分前です。マークの書き損じがないか確認してください」


試験官の声が教室に響く。

それに合わせて、教室の音が少し変化する。


そして――


「・・・はい、そこまで。筆記用具を置いてください」


数秒前まで教室を支配していた「カリカリ」という狂気じみた筆記音が止まる。

受験生たちの背がまっすぐに伸びていく。


「解答用紙を裏返してください。」


試験官の声に全員が動き、教室内には紙の音が響いた。

解答用紙が回収されていく。


「枚数が確認できました。 解散です。」


ようやく重苦しい沈黙から解放され、教室内が騒がしくなる。

筆記用具や問題用紙をバッグへ詰め、席を立った。


周りでは、同じ学校の生徒たちがグループを作り、試験の出来を聞きあったりする。

だが、久美はただ一人、誰とも話さず教室を出た。


―――


久美はバスを乗り継ぎながら、3時間かけて地元へ戻ってきた。

バスを降りると、蒸し暑い空気の中、疲れたように自宅へ帰っていった。


真っ暗な自分の部屋に入ると、ベッドに横になりたかったが、やることが残っていた。

机のスタンドのライトをつけ、バッグから問題用紙を取り出す。

スマホを使って予備校のサイトにアクセスし、今日の試験の解答を確認していく。


スマホの電卓には、368と数字が躍る。

それを見て久美は笑いがこぼれる。


「よし、よし、よし! 確実に上がってる。

これなら、まだ間に合うわ!

次は8月末の模試・・・・・・そこでAにできれば・・・」


スタンドの明かりがベッドに久美の影が落ちる。

その影の中で、タブレットがボウっと光を放つ。


(…まだ…希望は早い…他の学生の…点数を上げるか…)


タブレットの光が落ちて、久美の影は真っ黒になった。


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