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アクチュアリー ―封印都市アクトリア―  作者: ブラックななこ


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現実の軋み

長かった梅雨が終わり、望む天草には霞がかかる。

乱暴な太陽がじりじりと地面を焼き、木の下のコントラストが強い影を描いている。

世界はクマゼミの激しい声に包まれ、夏が来ていることを実感させた。


口加高校では、夏休み前の二者面談が行われていた。

黒板には7月20日とチョークで書かれている。


「安永さん。一時期の体調不良も良くなって、落ちてた成績も戻ってきましたね。

模試の結果も悪くないですし、これなら目標の大学も十分狙えると思います。」


幸田が資料を見ながら久美にそう伝えた。


「推薦はどうですか?」


幸田は目を細め、眉を寄せる。


「ん~・・・推薦は無理ね・・・希望している生徒が上にまだいるわ。」


「それって、誰ですか?」


幸田は“えっ”という顔をする。

そんなこと聞かれたことが過去にはない上に、

久美がそういう性格ではないと思っていたからだ。


「・・・そ、それは個人情報よ。いくらなんでも教えることは出来ないわ。」


幸田の答えに、久美は聞こえない程度に“チッ”と口を鳴らした。


「そうですか。」


幸田は、一瞬だったが久美の後ろに、何かがいたような気がして目を擦り、

もう一度久美を見たが、何もいなかった。


「・・・どうかしましたか?」


「あ、いえ。ちょっと疲れているのかもね・・・

変なモノが見えた気がして・・・」


「先生方、大変みたいですもんね。」


「そうなのよ。警察や保護者の対応に、メディアも来るでしょ。

休む暇がなくて・・・安永さんは平気?」


「え?私ですか?」


「ええ、同級生が消えて、不安とか心配とかそう言うのないかしら?」


「ああ、そういう・・・そうですね・・・

どうせならライバルが消えてくれないかな?って思います。」


「え?・・・・・・」


二人の間に静かな時間が流れる。

幸田の頬に冷や汗が流れる。


「・・・・・・・・・冗談ですよ?」


久美はクスリと笑うと、手の甲で口元を押さえて言った。


「や、やあ~ねえ・・・先生ドキッ!としちゃった。

安永さん、怖い冗談言わないで。」


幸田は、生徒用の椅子にもたれて、胸を押さえてふう~と息を吐く。


「夏休み。長いようで短いから勉強頑張って。

夏休みの模試も受けるんでしょ?」


「はい。2つほど。」


「そう、無理せずに頑張ってください。

では、面談はここまでです。

次の人に来るように伝えてくれる?」


「ありがとうございました。」


久美はそう言うと立ち上がって、教室を出て行った。

それを目で追う幸田。


「安永さん、あんな冗談いう子だったかしら・・・?」


そう言って、首を傾げた。


―――図書室


学校の図書館は18日の失踪後、警察が立ち入り禁止の黄色いテープを張り付けている。

図書室の中では鑑識が必死に指紋や痕跡を、床に跪いて探している。


鑑識の一人が腰を起こす。

腰をトントンと叩き、額の汗を拭った。


「ホントに何も見つからないな・・・」


メディア対策の為、窓は締め切られ、短冊タイプのブラインドが窓を塞いでいた。

エアコンの空気がブラインドを揺らし、時折窓の外でフラッシュが焚かれる。


そのフラッシュが隙間から飛び込んできて、図書館の本棚をかすかに光らせる。


「メディアも根性あるな・・・夏の日差し辛いだろうに・・・」


鑑識官の一人が、机に座り本をめくりながら痕跡を探している。

そこにスーツの上着を脇に抱えた男が近づいてきた。


「それ、消えた門畑が最後に持っていた本か?」


鑑識官がその声に、めくっていた手を止めて振り返る。


「あ、岩永警部補。お疲れ様です。」


「ん。」


「そうです、これを持っている状態で消えたって話です。

鎌倉時代の解説本ですね。」


「本当に消えたのか?オレはまだ信じられないんだが。

聴取はしたが、ガキどもの狂言じゃないのか?」


「そうでもないですよ。」


「何かあったのか?」


鑑識官はめくっていたページに栞をはさみ、本を持ち上げて背を見せる。


「ここ。」


背の下の部分を指さす。

岩永は、指さす部分に顔を近づける。


「へこんでるな。」


「はい、間違いなく落下痕です。

この角度で床に落ちたんでしょう。」


鑑識官は本の角をテーブルに接近させて説明した。

岩永は腕を組み、ため息を吐いた。


「本当に消えたってのかよ・・・南島原署の連中の言う通りなのか・・・?」


たまにフラッシュが飛び込んでくる。

3階にある図書室の本棚と天井が、かすかだが白く光る。

岩永はその無意味な撮影にイラつく。

メディアの連中は「神隠し」と書き立てて喜ぶだろう。

だが、警察にはその言葉を使うことは許されない。


「消えた門畑はどこに立ってたんだ?」


「本棚の2列3列の間です。

立ってた位置は床に印がついています。両サイドにいた生徒の位置もマーキングしてあります。」


岩永は、その場所へと移動する。

床を見ると、3,1,2と書き込まれた紙が張り付けてあった。


「この距離だと、確かに視界に入るな・・・後ろ向きじゃない限り見えるか・・・」


岩永は立ち位置を2と3に変えて確認する。


「なあ、門畑の身長ってどれぐらいなんだ?」


「大きいですよ。縦にも横にも。身長は175センチです。」


岩永は自分のウエスト辺りを、大きめのウエストを表現するように両手を動かして見せる。


「ズボンのサイズは、105センチです。」


鑑識官はメモを見て答えた。


「そりゃ、存在感あるな・・・」


―――


司会者の“庭根 誠司”が大げさなアクションで両手を開く。

後ろのモニターには、「今度は図書館で!!」と赤い帯に白文字が表示されている。


「みなさん、聞いてください。もう両手じゃ足らなくなりました!」


コメンテーターの橋本 徹一が尋ねる。


「11人目ですか?」


「はい、正解!!」


「誰でもわかりますよ。」


コメンテーターの若狭 法律一郎が突っ込む。


「ははは、とにかくまた一人。今回は図書館で消えたそうです!

羽賀さん、説明をお願いします。」


「はい、わかりました~。」


いつものボードの横に羽賀が移動する。

ボードの上部には、今までに消えた10人が

男子・女子生徒A・B・C…で表されて書かれている。

その下に18日の流れがシールで貼られ、全体像は見えない。


「消えた日は7月18日。学校はこの日休校になっていました。

なぜ休校になっていたかというと~」


羽賀は隠している紙を剥がす。


「事件に関する保護者会を行っていたそうです。」


「保護者会。」と庭根

「ほお・・・」と橋本

「なんで保護者会を?」と若狭が尋ねる。


羽賀は若狭を指さして答える。


「とにかく、事件の詳細や学校の今後に対して、

保護者からの電話が多かったようで、じゃあ、まとめて説明しようとなったようです。」


「なるほど。」と若狭


「保護者会は体育館で行っていたそうです。

学校は休校でしたが、校舎は解放されていて、自習に生徒たちが登校していました。

そんな最中、事件が起きます。」


庭根、橋本、若狭は前のめりに聞き入る。


「今回は真昼間の~」


紙を1枚めくる。


「図書室です!!」


庭根とコメンテーターが「ほぉ~」と体を起こす。


「図書室は意味が?」と庭根が尋ねる。


「わかりません!

とにかくこの事件は~」


次々と3枚紙をめくる。

そこには「謎!」「謎!」「謎!」と同じ文字が隠されていた。


「謎だらけなんです。

これに対して、警察はついに~」


羽賀は大きな矢印の先にある紙に手をかけ、出し惜しみする。


「早くめくってください!」と橋本

「ついになんですか?」と若狭


羽賀が紙を剥がして大きな声を出す。


「県警の科捜研の投入を決めました!!」


「おおおお~~~~つ、ついに・・・」

「面白くなってきましたね。」

「橋本さん、それはダメでしょう」


若狭が笑いながら言った。


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