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アクチュアリー ―封印都市アクトリア―  作者: ブラックななこ


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2/18

帰還

「よく思い出せ! オレは何をやっていた?」


まばゆい光の中で、朦朧とする意識を必死につなぎとめる。

光の膜の向こうには、骸骨の面をつけた男が立っていた。


(苦しい・・・酸欠みたいだ・・・)


一度大きく息を吸い込む。

吸い込んだ瞬間、煙と埃が喉に流れ込み、激しく咳き込んだ。


「ゲホゲホッ! そうだ!! ここは地下迷宮だ!

オレは最終階層のボスと戦闘中だったんだ!」


光が収まるにつれ、舞い上がる埃と煙が視界に広がる。

咳き込んだおかげで意識がはっきりし、周囲を見渡すと、そこにはオレとボスの二人だけ。

パーティメンバーの姿はどこにもない。


(コータ達はどうなったんだ?)


「ほう、レジストしたのか?」


「何をした?」


「いやなに、転移魔法だったのだが、貴様が残っただけの話だ」


「どこへ飛ばした!?」


「さあ? ランダムなのでわからんな……壁の中かもしれん……」


「貴様ァッ!!」


怒りがこみ上げるが、ひとりだけ残された状況を理解し、頭は冷静さを保つ。

長い戦いで互いにMPは尽きかけているが、相手は最下層のボス。油断はできない。


ヤツはMPが尽きる前に転移魔法を選んだのだろう。

だが、オレが残ったのは想定外だったはずだ。


オレは村正を握り直し、残った力を振り絞って振り下ろす。

確かな手応えがあった。


「フフフ……」


余裕の笑い声に、心拍数が跳ね上がる。

手応えとは裏腹に、ボスは揺るぎない。


― ドッ!ドッ!ドッ!・・・


(心臓の音がうるさい・・・だ・・・だめか・・・)


「ハハハハハハハハ!!」


体力が落ちていく中、まだ戦闘は続くと覚悟を決めた瞬間、

ボスは高らかに笑い始めた。


(な、なんだ?)


「みごとなり、人間『魔王』よ!」


「!?」


静かな声に変わったその呼びかけに、思考が止まる。


(しかも呼んだ名前は、オレのキャラクター名だ。

なぜ知っている?)


「我を打倒した人間『魔王』には、一つ目の褒美として『ブルーメダル』の称号をやろう!」


「は? なにッ!?」


聞いたことない称号を敵から与えられ、戸惑う中、さらに続く。


「さて、もう一つの褒美として、原点への帰還!!」


その言葉に、嫌な予感が走った。


「ダメだッ! このタイミングで!!」


光が収束し、暗闇が背後から押し寄せてくる。

この世界では経験したことのない感覚。

落ちていく。


「あああ・・・これは・・・」


そして、オレは闇に飲み込まれた。


――――――――――――


薄曇りが空を覆う、三日月がオブラートに包まれたようにボウっと光っている。


広い敷地の高校は街灯も届かず真っ暗だ。

非常口の緑の光だけが、建物の内側から弱く浮かび上がっている。


その闇の中、三階の窓がぼうっと光り始め、徐々に強くなる。

フラッシュのような光が漏れ、机が動くような音が響いた。


― ガタガタガタッ!!


そして再び、真っ暗な高校へと戻った。。


「ここは・・・夜の・・・教室?」


光の中から現れたのは、日本刀を持ち、鎧を着た男。

現れた男は先ほどまで敵ボスと戦っていた“立花真央”だ。


闇に閉じ込められていたせいか、暗い教室の輪郭が妙にくっきり見える。

時計は9時55分を指し、黒板には5月21日と書かれている。

窓の外には、彼が一年ほど前まで見慣れていた風景が広がっていた。


「やはり、帰還って元の世界への事だったのか・・・

オレ一人だけが帰ってきてしまったのか・・・


原点への帰還ね。

まさにその通りだな・・・」


机の中を覗き込むと、真央は怪訝な顔をした。


「机の中身が違う、向こうの世界で約1年過ごしたけど・・・

今は何年なんだろうか?

ズレがなければいいんだけど・・・」


手に持っていた日本刀を鞘に収め、大きく息を吐く。


「とりあえず、家に帰ってみよう!

しかし、この姿はまずいな・・・

日本刀もあるし、人に見られたら最悪刑務所行きだな・・・ははは・・・」


一歩動くたび、鎧の金属が乾いた音を響かせながら、教室をあとにした。


マンガ版アクチュアリーの表紙は、アクチュアリーのパッケージイラストだったので、pixivに公開しました。

表紙のあとは、この2話の出だしになります。


よろしければ、楽しんでもらえればと思います。


https://www.pixiv.net/artworks/141442799

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