↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アクチュアリー ―封印都市アクトリア―  作者: ブラックななこ
呪いのゲーム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/111

アクチュアリー

5月17日(水) AM8時00分


玄関のドアが開き、スマホ片手に学生服姿の“立花真央”が出てくる。

平日の朝、いつもの光景だ。


「いってきま~す。」


――チーン! チーン!


スマホからメッセージを知らせる通知音が頻繁になっている。

その度にスマホを手に取り、返信を打ち込む。


(今、家を出た。 いつもの所で)

(OK!)

(オレはあと5分ほどで出るお~)


メッセージの相手はコータ・セージ・ユージ・イチゴ・タツヤとのグループ。

“コータ”と“イチゴ”は真央と非常に仲がよく、小学校時代からの親友だ。


中学に入ると、隣町である南有馬町の住民なのだが、

口之津の中学校の方が近いからという“セージ”と仲良くなり、

高校になると、他の町の中学から“ユージ”と“タツヤ”が入って6人となった。


(昨日のチカちゃん見たか?)

(見た見た、笑ったわ~w)

(オレ、ゲームやってて見てない)


メッセージはあっという間に流れていく。

くだらない話を延々と続けるグループだ。


スマホの入力している時、にぎやかな声に目線を通学路の先に移すと、井戸端会議中の3人のおばさん達を発見し、慌ててスマホをポケットに入れた。


(やべえ・・・見られたかな?)


「おはようございま~~す。」


「真央くん、歩きスマホはせんほうがよかよ。」


知り合いの近所のおばさんだ。

いつも小言を言ってきて面倒くさい。


井戸端会議中、いつ歩きスマホしてるのを見ていたのかわからないが、相手にしないのが一番。 


変な噂を流されると困るので、愛想だけは振りまいておくのが、正しいご近所付き合いだ。

とにかくすばやく通り過ぎようと足を速めた。


「今度見かけたら、学校に言うけんね。」


―― ギクリ


スマホの無い生活はありえない。

速めた足を止め、覗き込むようにおばさん達へ目線を配る。


「そ、それだけは・・・」


「あはははは・・・いってらっしゃい。

ゲームばっかりしよらんで、ちゃんと勉強せんばよ。」


(くそ、母さん、世間話でそんなことまでしゃべってるのか・・・)


完全に遊ばれている。

関わりあわないのが一番だが、無理だろう。


「は、はい・・・」


真央は再び歩みを始め、通り過ぎていく。

もう真央のことなど忘れたように、三人は別の話題に移っていた。


「聞いたね? 矢島さん、とうとう慎吾くんのこと諦めて、整理するらしかよ。」


「らしかね・・・」


(矢島さんって・・・たしか、オレが生まれる前に失踪してる人だったと思ったけど・・・)


井戸端会議を横目に真央は学校へと急いだ。


―――


――キーンコーンカーンコーン!


口加高校に下校のチャイムが鳴り響いている。

下駄箱へと学生達が向かっている。


真央が通う高校は、20年ほど前までは進学校だったのだが、

生徒数確保のために偏差値が下がってきていた。

それでも国立大学の推薦枠が残る程度の水準は保っている高校だ。


「真央! 待てよ! 一緒に帰ろうぜ!」


真央が振り返ると、山本幸太郎コータが階段を二段飛びで走ってきた。


「コータ、一人か?

他のやつらは補習?」


「あいつらは進学組だからな。

物理の補習に出るってよ。」


「コータは部活に行かなくて良いのか?」


「テスト前なんで、今日から終わるまでは部活は休止なんだよ。」


「あー、なるほどね。」


二人が革靴に履き替えていると、イチゴがやってきた。


「真央~! コータ~!

待ってくれよ~、オレも帰るぅ~。」


「あれ? 補習受けるんじゃないのか?」


「実はパピーから連絡が来てさ~」


下駄箱から革靴を引っ張り出しながら、イチゴがそう言った。

コータが眉を上げる。


「パピーって、離婚した?」


イチゴの家は、彼が八歳の時に離婚し、

母親の実家があるこの町へ引っ越してきた。


「そそ、パピーってミュージシャンじゃん!

『進学どうするんだ?』って聞かれてさ。


大学行くつもりだけど・・・って答えたら、

『やること決まってないなら、音楽業界なら世話できるぞ』って言われてさ~」


「それで?」


「マミーはさ・・・

大学行けって言ってくれたけど、無理させたくないし・・・


オレが早く働けば自由になれるじゃん!」


「それは・・・

離婚の原因になったあれか?」


「そそそ~~!

金出すっていうし、進学やめて専門学校行くことにした!

専門学校って入試テストないんだぜ! ウケるw」


イチゴに暗い話題は似合わない。

お気楽で、何でも笑い飛ばす。

真央にとっても、グループにとっても欠かせない存在だ。


そんな下校の途中――

真央は、ゴミ集積場に置かれた“見覚えのある絵面の箱”に気づいた。


「おい!おい!おい!おい! ・・・マジか!!」


真央はゴミの集積場へと駆け寄り、ゴミ収集庫の蓋を勢いよく開けた。


ガゴォォ……ンッ!!


あまりの勢いに、金属製のゴミ収集庫はものすごい音を鳴らし、衝撃でガタガタと揺れる。


震える指でゴミ袋の結び口をほどき、その袋の中から見覚えのある箱を手に取る。

その瞬間、真央の体にゾクリと悪寒が走る。


(なんだ・・・?)


思わず周囲を見回し、悪寒の正体を探る。


「真央~、どうした~?」


さっきまでハイテンションだった真央が、急に黙り込んだことに気づき、

コータが心配そうに声をかけてきた。


背筋をなぞるように、冷たいものがまだ走っている。


「い、いや・・・何でもない・・・」


気のせいだと自分に言い聞かせ、意識を“手に入れたゲーム”へと切り替える。

祈るような気持ちで、そっと箱を開け、中身をのぞき込んだ。


――あった。


箱の中には3.5インチのFDDとマニュアルが入っていた。

あまりの奇跡的な出会いに、真央はパッケージを空に掲げると神に祈った。


「おー、ジーザス!!」


「なにゴミ漁ってんだよ。w」


「ゴミだと!? この神ゲーがゴミだと!?

貴様、言ってはならぬことを言ってしまったな!!」


手にした箱を、すごい勢いでコータの顔に押し付けるように差し出す。

コータはあまりの近さで確認できず、

少し後ろへ反り返って差し出された箱を見た。


真央が見つけた箱は、30年以上前の超有名ゲーム【アクチュアリー】だった。


「え~っと・・・アクチュアリー??

PC-9801シリーズ?? なんだそれ?

神ゲーってことは、ゲームなん?」


「ああ~、これは伝説のゲームだよ。

これはNECから発売されていた16ビットコンピュータ、PC-9801専用のパッケージ。


アクチュアリー#1だよ。


初の3Dダンジョンゲームで、手に入れるには、

本来であれば数万は出さないとオリジナルは手に入らないんだぜ!

やべえ~~~、テンション上がりすぎる~~~!!」


真央はゲームの箱を胸に抱え、背伸びした後、バタバタと足踏みして喜ぶ。


二人は真央のテンションについてこれない。

ゲームを抱えて跳ねる真央を呆然と見つめている。


「・・・・・・・・」


さっきはのぞき込んだだけだったので、

真央はパッケージの蓋を完全に開けて中を確認する。


その瞬間、先ほどよりも強い悪寒が背中を走った。

まるで誰かに睨まれているような――そんな視線を感じる。


真央は再び周囲を見渡す。

二人はその様子を不思議そうに見ていた。


「なんかあったか?」


コータが先ほどと同じように気になって尋ねた。


真央は周囲を見回しながら答える。


「なあ・・・誰かの視線を感じないか?」


「えっ?」


二人もつられて周囲を見回す。


「――まったく」

「もって」


コータとイチゴが続けて答え、けらけらと笑う。


「オレだけか・・・何だろう?

背中がゾワゾワするんだ・・・」


「それは、ゴミを漁ってるからだべぇ~~」

「お仕置きだべぇ~~」


コータとイチゴが往年のアニメを真似して茶化す。


その瞬間、真央が感じていた“視線”がフッと緩んだ気がした。


「・・・しかし、こんな高価な物、なんで捨ててあるんだ?

もしかして、他にも何かあるかも?」


真央は再び収集庫を漁り始める。


「お、なんかいっぱいあるぞ!?」


収集庫にはアクチュアリーが入っていたゴミ袋以外にも、

ソフトが入ったものが5袋ほどあったが、

入っていたのは98用のアダルトゲームソフトだった。


「ちっ、エロゲーばっかかよ・・・

まあ、アクチュアリーだけでも超ラッキーだしな・・・」


「ワリい! これやるんでオレ先に帰るわ! また明日な!!」


コータ達の方をにやけながら振り返ってそう言うと、ダッシュで帰ってしまった。

二人はその姿を呆れ顔で見つめている。


「ああ、またな・・・・って、聞こえてないかw」


「ほんと・・・ゲーム好きだよなあ~

でもさ~、古いコンピュータゲームって遊べるん?」


「さあ・・・?

まあ、持って帰るってことは遊べるんだろ?」


「だよねぇ~w」


このゲームが、のちに世界へ恐怖をもたらす存在だとは――

この時、誰一人として気づいていなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。