【番外編】とある従魔の野望〜彼シャツを巡る兄弟対決〜 ※チョコ視点【※】
【※注意1】番外編です。従魔チョコ視点です。
【※注意2】チョコ、第3王子、第6王子によるスキンシップ等表現あり(R-15:背後注意>ω<)
実は俺様、気になっている女の子がいるんだ。
だけど、俺様は彼女と結婚することはできない。
だって、俺様はコウモリの従魔だから……。
(はぁ……あの子にもっと触れてみたいぜ……)
夢見心地を味わいながら、俺様は眠りについた。
♡ ♡ ♡
プリンのように柔らかいのに、しっとりした温かさ。
何より……女の子特有の甘くて良い香りがする。
「んー、ここはどこだ?」
「しーっ! 声を出さないで……バレちゃう!」
「だって、俺様は眠たいんだよぉ!」
注意された俺様はパタパタと羽をばたつかせる。
「きゃぁ……くすぐったい……っ!」
可愛らしい悲鳴が聞こえて、はっきり目が覚めた。
目の前にいたのは、俺様の好きな姫様――サラちゃんだった。
普段の彼女は男物の制服を着て男装しているのだが、今はなぜか、純白のバニーガール衣装の上から、ダボダボの白いメンズワイシャツを羽織っている。
急いで留めたせいか、胸元のボタンが何個か外れていて、シャツの隙間からバニーガール衣装が惜しげもなく見えていた。
むず痒そうに身をよじりながら、姫様は俺様を胸元で抱えこみ、前屈みでベッドの中に潜り込む。
彼女のおかげで、今の俺様は、目の前の視界が透き通った白肌と豊かな谷間から湧き出る汗で支配されている。
(お、女の子のおっぱいと良い香りの汗だ……!)
こんな間近で堪能できるなんて!
「ぐぐっ、ぐへへへへへへっ!」
国士無双十三面待ちの役満並の強運に、笑いが止まらない。
だけど、即座にサラちゃんのスベスベした柔らかい手で口を覆われてしまった。
「バレたらマズイから、静かにしてっ――」
何やら、彼女は誰かから追われていて、必死に逃げてきた様子。
しかし、無慈悲にも、ガチャンッ! と部屋のドアが開いた。
「サラ……」
「薔薇姫……」
かわいそうに。
一人どころか、二人同時に追われていたなんて。
しかも追っ手は、吸血鬼王子であるブラッドリー兄弟だ。
カツン、カツン……と重厚な足音が、俺様たちが潜むベッドの方に近づいてきている。
「サラ、ベッドの中にいるんだろ?」
「……かくれんぼはオシマイだ」
正直者の姫様は、ギクっと全身を揺らして怯えている。
このままだと危ねぇ!
ご主人様とニコに捕まってしまう!
でも、俺様は諦めない。
姫様は命の恩人だ。
助けてもらったんだから、ここで恩返しをして、漢らしい姿を見せろ、俺様!
「任せな!」と姫様に耳打ちした俺様は、変身魔法を発動させる。
俺様の考えた作戦は以下の通り。
ご主人様の姿に化けて、ベッドから俺様だけが飛び出し、ギリギリまで時間を稼ぐ――!
むにゅっ。
「ん?」
身体が大きくなった際に、グレープフルーツ大の柔らかくてモチモチした何かに手が触れた……?
「ひゃぁっ……?!」
姫様の可愛すぎる悲鳴が漏れると同時に――ガバッとベッドシーツを乱暴に捲られた。
「チョコ……。どうして兄貴の姿で、サラとベッドにいるんだ?」
狼男の姿をしたニコが、もの凄い形相で俺様を睨んでいる。
そして、その隣では――。
「反則だ、チョコ」
吸血鬼の貴公子らしく黒マントを羽織ったご主人様が、胸ポケットから黄色のカードを一枚取り出し、冷ややかな目で俺様に提示する。
「サッカーのイエローカードかよ?!」
俺様がツッコミを入れると、今度はニコがズボンのポケットから真っ赤なカードを取り出し、俺様のおでこにピタッと擦りつけた。
「――ロン。一発退場だ」
「麻雀用語も取り入れるなんて、天才かよ! って、くそぉ! サラちゃん、逃げろ!」
ニコの理不尽な魔法でコウモリの姿に戻されてしまった俺様は叫びながら宙を舞う。
その一瞬の好機を見逃さずに、ベッドを抜け出した姫様が全速力でドアまで走り、ドアノブを何度もガチャガチャ捻ったものの――。
「どうして……開かない……!」
鍵が掛かっていて、逃げられないらしい。
慌てているせいか、姫様の白いウサ耳と、シャツの裾から見えるモフモフな丸い尻尾と愛らしいお尻が、ピョコピョコと横揺れしている。
(ヤバい。めちゃくちゃかわいい……って、見惚れている場合じゃねぇ!)
自我を取り戻した俺様は、ドアの脇に木刀が置いてあるのを発見し、「姫様、木刀で叩けッ!」と声をかけたけれど、既に遅かった。
「きゃぁ!」
「俺と遊ぼうか、薔薇姫」
ご主人様が姫様の華奢な身体を軽々と抱え上げ――俗にいう『お姫様抱っこ』をキメていた。
はぁ……悔しいけど絵になる。
でも、俺様は知っている。
この甘い状況を許さない男がいることを。
「オレのサラに気安く触れるな」
「断る……薔薇姫は俺のものだ」
ニコが牙を剥いて威嚇しても、ご主人様は涼しい顔をして一歩も引かない。
でも、俺様は熟知している。
ニコがおませさんで、ちゃっかりしていることも。
「フッ……。兄貴、残念だったな。サラが着ているワイシャツはオレのものだ。だから、サラはオレのものだ」
「左様か、薔薇姫」
ご主人様はニコの爆弾発言にメラメラと対抗心が芽生えてしまい、姫様を再びベッドへ連れ戻すと、仰向けに押し倒した。
「だ、だってニコくんが冷えないようにって貸してくれたから! それより、ケンカしないで……っ! は、離して……!」
姫様は目を丸くさせながら、最後の悪あがきで起きあがろうとジタバタさせる。
だが、両脇からご主人様とニコに腕をがっしりと押さえ込まれてしまい、姫様は身動きが取れない。
「あぁ、ケンカはしないさ。その代わり、俺とニコ――どちらの愛がより深いか、薔薇姫に確かめてもらおうと思ってな」
「そうだな。今日こそは、君の血をいただく」
「あぁ、俺が先にいただく」
まずい。
二人して、姫様が羽織っているワイシャツのボタンに手を伸ばし始めた!
姫様を助けるための最終手段だ。
俺様も悪あがきで、声を張り上げる。
「もっと姫様の彼シャツ姿を堪能しなくていいんですかァアアアアア――!」
(俺様の馬鹿! 本音を言ってしまった……!)
全身全霊で叫んだせいか、眩暈で頭がフワフワする。
そのまま、俺様の視界は真っ暗に染まっていった。
♡ ♡ ♡
「うーん……」
淹れたてのコーヒーの香りで、俺様は覚醒する。
「チョコ、変な夢でも見ていたのか?」
見上げると、俺のご主人様であるダルテ様が佇んでいた。
いつもの、特別科の制服姿だ。
「お、おはようございますっ! ご主人様!」
「おはよう」
「あれ……」
ご主人様はいつもと同じように、右手にはコーヒーカップを持っていた。
一方で、左手には、昨日俺様が献上した、姫様のバニーガール写真が握られていた。
(朝イチから姫様を堪能してたのかよッ?!)
気になったし、ツッコミたかったけれど、かえって藪蛇になるのは避けたかったから、俺様は見て見ぬふりをした。
なお、数日後――。
自室で、機嫌良く鼻歌を歌いながら、自身の白いワイシャツを丹念にアイロンをかけているご主人様の姿を、俺様は目撃することになる。
(ま・さ・か! 俺様の夢をご主人様は知っている? それとも、次はサラちゃんに自分のシャツを着せる気かッ?!)
<オマケ>ルルちゃんより
「チョコくんったら、欲求不満なのかしら? サラちゃんに彼シャツを着せるなんて。あっ、次回からは新編スタートよ。これからもよろしくね〜」




