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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜  作者: 国士無双
第2章:王子様、ぼくを探さないで
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映画館で味わった純愛物語〜第一王女の涙と誓い〜

 映画館に着いたぼくとニコくん。


 ぼくのテンションは最高潮に達していた。


 館内が、甘くて美味しそうな、ぼくの大好きな食べ物の香りで満たされていたから。


「わぁあああ! ポップコーンの良い匂いがするっ!」

「……寄るか?」

「うん!」


 ぼくはニコくんと一緒に売店コーナーまで移動した。


 ニコくんがタッチパネルを操作し、ポップコーンのメニューをぼくに見せてくれた。


「どうしよう。塩味も、キャラメル味も、気になる!」

「じゃあ、ハーフ&ハーフにして、大きいサイズで一緒に分けるのは?」

「ニコくん、天才! そうしよう!」


 ぼくの要望に対しても、すぐに最高の名案を出してくれるニコくん。


 続いてドリンクの選択画面が表示されたため、ぼくはホワイトウォーター、ニコくんはコーラを注文した。


 そして、注文し終えたぼくたちは、シアターに入った。


 座席は、後ろから二列目の豪華なペアシートだ。


(ふ、二人席……?!)


 ちょっと恥ずかしいなと思いつつ、トレイを持ったニコくんが、「どうぞ」とエスコートしてくれたので、ぼくは奥の席に腰を下ろした。


「ありがとう」

「あぁ……」


 ニコくんが隣に座ったところで、館内の照明が暗くなった。


 スクリーンに映っているのは予告のCMで、本編が始まる前だったけれど、すでにぼくはポップコーンが食べたくて、ウズウズしていた。


(せっかくの映画館だし、今から食べてもいいよね……?)


 我慢できずに、ポップコーンに手を伸ばしたところで、硬くて温かいニコくんの指が、ぼくの指先に触れた。


「ご、ごめん。先にいいよ?」

「大丈夫、お先どうぞ」


 お互いに小声で譲り合っていたけれど、ニコくんが手を引っ込めてしまった。

 

 だから、ぼくが先にキャラメル味のポップコーンを食べた。


(お、美味しい……! カリカリした食感に、キャラメルの甘さ。この贅沢な感じ、たまらないよ!)


 ほっぺたが落ちるとは、まさにこのこと……!


 一粒食べて、横をチラッと見ると、ニコくんは塩味のポップコーンをもぐもぐ食べていた。


(塩味も美味しそう! あっ! キャラメル味も美味しいって、伝えてみよう)


 ニコくんがコーラを飲み、カップをドリンクホルダーに戻したところで――。


「ニコくん、キャラメル味も食べてみてね?」


 囁きながら、ぼくは指先でひょいと摘んだキャラメル味のポップコーンを、ニコくんの大きな手のひらにそっと乗せた。


「……いただく」


 ニコくんは「はぁ……」と照れ隠しするように息を吐きながら、ポップコーンを美味しそうに食べてくれた。


 嬉しいけれど、さっきから、ぼくたちは……カップルみたいなことをしている気がする。


 そう思うと、ぼくも恥じらいを覚えてしまう。


 ストローでホワイトウォーターを一口飲み、映画本編に向けて気持ちを切り替えることで、緊張をほぐそうとしたけど、ダメだった。


 正直、これから上映される映画を観るのはドキドキする。


 ぼくと容貌が似ている女の子が出てくるから。


 だけど、ここまで来たからには、しっかり最後まで観ようと覚悟を決めたところで、映画本編が始まった。


 Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ


 病院で入院中の小柄な少年――エノーは、自身の人生に生きがいを感じられずにいた。


 病弱で、内向的。いつ死んでもおかしくない我が身。


 誰も自分のことを心配しないだろうし、闘病生活の中で長生きする必要なんてないと、常に少年は諦めていた。


 しかし、淡々と日々が過ぎてしまうのも、もどかしい。


 気分転換に、エノーは医療スタッフと共に院内の患者図書室へ向かった。


 そこで、彼は一体の人形(ドール)を見つける。


 だが、可哀想に、その人形の黒いワンピースの裾が、乱雑に切り裂かれていた。


 医療スタッフが言うには、誰かに乱暴に扱われたせいか、修繕できない状態だから、置きっぱなしになっているらしい。


 エノーは、見放された人形がどこか寂しそうにしていて、誰かの助けを求めているのではと気になってしまい……自分の病室まで持っていくことにした。


 時間を持て余していた彼は、自身の裁縫セットを取り出す。


 辛い治療の合間を縫って、美しい人形のお洋服を綺麗に直す、と決心した。


 人形が纏っているワンピースの破れた裾を切り揃え、ミディアム丈からミニ丈に作り直し、縫い目のほつれも補強していく。


 毎日コツコツ、欠かさずに。


 一週間が経った頃に、お洋服の縫い直しが終わったと同時に、エノーは一時退院することになった。


「別れが名残惜しいな……」と呟きながらも、礼儀正しいエノーは、退院する前に、人形を患者図書室に戻したのである。


 また会えると信じて。


 すると、その思いが通じたのか、退院日の夜、エノーの自宅部屋に、一人の少女が現れた。


「あなたが私を助けてくれたのね。呪いを解いてくれてありがとう、エノー」


 なんと、彼女は窓からやって来た。

 その上、人形ではなく、ヒトの姿になって、言葉まで喋り出した。


「ごきげんよう、私はルイヨ。貴方がお洋服を大切に直してくれたから、呪いが解けたの。私ね、このワンピース丈、とっても気に入ってるわ! 貴方に恩返しをするから、また会いましょうね?」


 ルイヨはすぐに姿をくらませ、その足で船に乗り込み、ある島へ向かって、旅に出た。


 呪いから解放された彼女は、持ち前の優しさと明るさで多くの人々の心を掴み、とうとう、島で『秘宝の薬』を見つけ出す。


 そして、再び眠っているエノーのもとへ戻り、その貴重な薬をベッド横に置いた。


 翌日、エノーはその薬を飲んでから、見る見るうちに元気を取り戻していった。


 終いには、入院どころか、通院する必要もなくなるまで。


 エノーはすぐにお礼を言いたかったけれど、彼女がどこにいるのかわからない。


 もう一度、あの患者図書室に足を運んだが、最初に見つけた場所にも、彼女はいなかった。


 だが、近くに一枚の写真が落ちており、エノーは拾い上げた。


 その写真に写っていたのは、ある島の風景と共に、黒いミニワンピース姿で無邪気な表情を浮かべるルイヨだった。


 義理堅いエノーは、写真の背景に写っていた植物を手がかりに、島の場所を突き止め、海岸で彼女と再会を果たす。


「俺は運命を手放さない。命の恩人である君と、一緒にいたい……」

「私も。貴方と共にいたいわ。幸せだもの……」


 二人はお互いの想いを確かめ合いながら、恋人になり、ハッピーエンドを迎えたのである。


 Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ Ⅲ


 まさか、ぼくに似た女の子が、最初は呪いをかけられて小さなお人形さんになっていたなんて!


 けれど、病弱な少年と傷ついた人形が、お互いに思いやり、助け合ったことで……純愛が実った。


 ぼくはこの恋愛物語に感動して、涙が溢れてしまった。


 今は男装して正体を隠しているから、叶わないけれど。


 いつか、ぼくも自分の手で、運命を掴み取ってみたいと願った。

<余談:名前の由来>

エノーは、エノキサパリンという低分子量ヘパリン薬の一般名から。

ルイヨは、ルイヨウショウマという植物から。


「エノー」は、「エ」「ノ」「ー」を組み合わせるとローマ数字の「Ⅲ(3)」に。

「ルイヨ」は、文字のパーツを分解して組み替えると「レンゲ」になります。


次回もお楽しみに。

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― 新着の感想 ―
映画館でのサラちゃんとニコくんのやり取りがとても可愛かったです。 ポップコーンを選ぶ場面から、すでに二人の空気が甘くて、ハーフ&ハーフを提案するニコくんに、サラちゃんが「天才!」と喜ぶ姿は微笑ましか…
 サラちゃんとニコ君のドキドキから、  映画の内容までとても面白かったです╰(*´︶`*)╯♡  あとがきを読んで思わす拍手☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
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