薔薇姫を迎えに行く〜吸血鬼王子の嫉妬〜 ※従魔チョコ視点
【※注意】今話は第3王子ダルテ様の従魔:チョコ視点です。
前回、サラちゃん(姫様)とニコくんが麻雀をしている時に、現実世界で何が起きていたのか、従魔と一緒にお楽しみくださいませ!
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「ルルちゃん、強すぎねぇ?」
「あら、そうかしら? チョコくん」
俺様は、従魔・ウサちゃんことルルちゃんの隣でゲーム画面を覗いていた。
ゲーム世界にいる姫様が「麻雀の人数が一人足りない」と愚痴をこぼした直後、ルルちゃんが「任せて、サラちゃん! わたしが操作するわ!」と麻雀ゲームに参加した。
この時の俺様は、ルルちゃんがルールを知らないと思って心配していたけれど、杞憂だった。
「ごめんね、サラちゃん。ロン!」
「ツモ! ニコくんがテンパイしてたのは分かっていたのよ」
なんとルルちゃんがことごとくアガりまくっていた。
「容赦ねぇ〜!」
「そうねぇ、サラちゃんには申し訳ないわね。でも、サラちゃんは分かりやすすぎるのよ。テンパイすると、ウサ耳がピコピコ揺れているから」
「確かに……」
姫様は素直な性格なのか、感情を隠すのが苦手で、顔だけでなく、ウサ耳でもリアクションを取っていた。
それにしても、ゲームの世界にいるとはいえ、姫様の格好は男の俺様からすると、目のやり場に困るんだよなぁ……。
「姫様って、どうやって胸を隠してるんだ? かなりオッパイが大きい……っ!」
しまった。心に秘めておくつもりが、声に出してしまった。
案の定、ルルちゃんがギロっと俺様を睨みつけた。
「チョコくん! もしかして、貴方がサラちゃんにあんな格好を? あの子は嫁入り前のお嬢様なのよ!」
「ちげぇよ! あの衣装はニコが選んだんだと思うぜ」
「はぁ……。ニコくんったら、クールに見えて、おませさんなところがあるのよねぇ……」
「あっはっは! それは否定できねぇ!」
ルルちゃんは面白いことを言う。
しかも、麻雀も強すぎるし……。
(ん? ちょっと待てよ。そもそもさ、なんでルルちゃんが麻雀を知ってるんだ?)
「俺様も聞きたい! どうしてルルちゃんは麻雀のルールを知ってるんだ? 王族の遊戯だろ?」
「王族といえば、サラちゃんのお友達にアダムくんという第10王子の男の子がいるわ。彼が打っているのを、サラちゃんと一緒に見ていたからよ」
俺様の質問に対しても、ルルちゃんは動揺せずにゲーム画面を見つめたまま、理由を丁寧に答えてくれた。
ルルちゃんは姫様のことを心から慕っているし、姫様もルルちゃんのことを大切にしている。
「俺様も、ルルちゃんみたいな幸せな従魔生活を送りてぇ……」
「そうね。わたし、幸せよ。でも、今はちょっと心配なの。なぜなら、サラちゃんが熟考しているから」
小さくて白いモフモフの手で、ルルちゃんが画面を指差す。
そこに映っていたのは、牌を手に持って、ウサ耳を交互に揺らしながら、一生懸命考え込んでいる姫様だった。
目を大きくして、ニコの様子を窺っている。
一方のニコは姫様を観察するだけでなく、助言までして、余裕綽々としていた。
無垢な姫様は「リーチ!」とすぐに打ってしまい、ニヤニヤしたニコからロンを喰らってしまった。
結果として、ニコが一位で、ルルちゃんが二位。姫様は最下位だった。
「はぁ……楽しかったわ。この後、二人が元の世界に戻れたらいいのだけれど……上手くいかないわね……」
ルルちゃんは二位なのに、浮かない顔をしていた。
「ルルちゃん、どうしたんだよ?」
「ニコくんは……戻りたくないみたいね……。大変、サラちゃんが困ってる……」
画面越しに、姫様とニコがお互いの顔を見つめ合っていた。
だが、二人の表情は真逆だった。
姫様はキョトンとした顔で、眉毛とウサ耳が下がっていて、心配そうにしている。
一方で、ニコは姫様と二人きりでいられる世界が、楽しくてたまらない様子だ。
(そうだよなぁ。俺様やご主人様の相手をしなくて済むのだから……)
ニコの気持ちもよく分かる。
だけど、ここから先は俺様でも読めなかった。
あろうことか、ニコが姫様をベッドに押し倒した。
「おいオイおいオイおい! ニコの奴、なんて破廉恥なことを――!」
「キャ――! サラちゃんが食べられちゃうわ!」
俺様たちはあたふたして、羽をパタパタさせることしかできないでいた。
ルルちゃんにいたっては、画面を見続けるのが怖いのか、両目をギュッと瞑ってしまった。
それで正解だ。
『あぁっ……!』
姫様の悲鳴がゲーム画面越しに響く。
助けてあげたくても、姫様はニコに囚われて逃げられない。
ニコが、絶対に離そうとしないから。
「ニコ……もしかして……」
ゲーム世界に行く直前、ニコが言ってたセリフを思い出す。
「好きな子と映画を観に行く」って。
ニコが言っていた「好きな子」は、姫様のことだったんだ。
その上、ご主人様が血眼になって追い求めている姫様でもある。
(まさか兄弟で、二人とも同じ姫様を想っていたとはなぁ……)
頭が痛くなりそうだと思ったタイミングで、突如、俺様の足元に紅色の魔法陣が浮かび上がる。
「ッ――!?」
「チョコくん、捕まって――!」
ルルちゃんが助けに手を伸ばしてくれたけど、無念。
俺様はゲーム機もろとも、強制的な移動魔法によって、ある場所へ転送されてしまった。
「ったた……」
「無事か?」
「えっ?!」
間違いない。
この声はご主人様だ。
珍しい。最初の言葉が、俺様の身を案じる発言だなんて。
驚いて振り向くと、なぜか右手に鮮やかな黄色の果物を握ったご主人様の姿が。
「レモンッ?!」
「あぁ。レンゲ様の論文内容を参考に、検証用として用意してみた。それより、チョコ。さっきから魔力が乱れているな、何かあったんだろう?」
そう言って、ご主人様がゲーム画面に視線を移した。
その鋭い朱い瞳に映し出されたのは、バニーガール姿の姫様が、狼男のニコに強くハグされているシーン。
「ギャァアアア!」
俺様は素っ頓狂な声を上げてしまった。
ご主人様が青筋を立てた右手で、持っていたレモンを思いっきり握り潰したからだ。
その勢いで、果汁が俺様の体にピチャッと派手に飛び散った。
「チョコ、どういうことだ」
ヤバイ!
比べ物にならないくらい、ご主人様がキレているッ!
だけど、なんて言い返せばいいのかわからない。
「ふーん。大きな瞳に、陶器のように白い肌。レンゲ様にそっくりだな……薔薇姫は天使族のお嬢さんだったのか」
ギクッ!
俺様は姫様に「正体については内緒にする!」と約束を交わしたんだ。
だからこそ、俺様は一言も喋らなかった。
なのに、聡明すぎるご主人様には全て筒抜けだった。
「ニコが俺の薔薇姫に手を出すとはな……」
(おっ、俺の薔薇姫……?!)
どうやら、俺様だけでなく、ご主人様も余裕がないらしい。
俺様が思うに、ご主人様は嫉妬でメラメラ燃えている。
「ご主人様……?」
恐る恐る声をかけると、ご主人様は画面を睨み据えたまま、指示を出した。
「チョコ、今すぐ俺をそのゲーム世界へ送ってくれ。俺が薔薇姫を迎えに行く」
ご主人様ことダルテ様も参戦!
サラちゃんは無事に元の世界へ戻ることができるのか?
次回もお楽しみにᕱ⑅ᕱ♡




