2-2 再び、あの家へ
————仕事、今日は休みだな。
たまには飯、作ってみるか。
——優人?どうした?
え?「おにく」「ください」!?
しょうがないな……豚肉、もやし、キノコをめんつゆで煮込んで、ほら。手抜き豚丼。
——え?美鈴、私が食べられないって?
はいはい……ほら、膨れっ面しないの。そう思って、肉なしでキノコ多めにして別に作っといたよ。
手抜き料理で悪いけど、みんなで食おうな。
——優人が、何故か壁の方を見ている。
気になって、そちらを見てみる。
何も、無い。けど、だれかが見ているような——
……朝。目が覚めた。
「なんか、不思議な夢だったな……」
家族との、食卓。
優人、何を見てたんだろう。
……いや、ただの夢か。
あの食卓……夢の中なら、また見られるのに。
「……今日は、通夜だな」
……そういえば。
会場がどこなのか、分からない。
もう一度、家に行くしかないか。
でも、その前に……学校に連絡しておこう。
今日もまだ、休むことになる。
学校に電話して、担任に代わってもらう。
「永田、おはよう。体調はどうだ?今日は来られそうか?」
「すみません、もう1日、休ませてください。明日からは、登校します」
「……そうか。身体、辛くないか?」
「身体は大丈夫なんですけど……」
「ん?何かあるのか?」
「すみません、事故の影響か、所々記憶が曖昧なんです」
「そうか…無理は、しなくていいんだぞ。クラスや他の先生方には、伝えておく」
「ありがとうございます。それでは、失礼します」
学校への連絡は済んだ。
簡単に朝食を済ませ、外出の準備をする。
「家に、行こう」
つい呟いた言葉に、後押しされるように靴を履いた。
駅に向かって歩きだす。
電車に揺られている間、昨日のことを考えていた。
聞こえてきた、葬儀業者らしき声。
「神崎様の会社関係の方は——」
神崎様。自分のことだ。
自分が故人として扱われること。
本当はここにいるのに、いない人間となる。
考えてみれば、奇妙だ。だけど、慣れなくては。
電車を降りて、家までの道を歩く。
大丈夫。
昨日よりは、落ち着いてる。
家が、見えてきた。
1台の車が止まっている。
昨日も見た車。たぶん、葬儀社のものだ。
車に、社名は書いていない……
だが、バックドアが開いていた。その隙間から、白い大きな菊の花束が見えた。よく見ると、名札のようなものが見え、そこに会館名が書いてあった。
……会場は、わかった。
まだ、通夜までは時間がある。 今は、一度帰ろう。
——また、必ず来る。
——もう一度。




