表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦闘力ゼロのおっさん、人間界をクビになって魔王軍にヘッドハンティングされる  作者: コバチ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/13

第6話 人間界で捨てられた老人を雇う

黒鉄の砦の周囲では、巨体を揺らすオークたちが、凄まじい地響きを立てて爆速で大地を耕していた。


しかし、出来上がった広大な畑を前に、僕とバルトロは腕を組んで立ち尽くしていた。


「ダイスケ殿、言われた通り土は耕したが。

我ら魔族、誰も『野菜の育て方』を知らんのだ。とりあえず種を埋めればいいのか?」


「ダメだよバルトロさん。土壌の酸性度、肥料の配合、水の管理。

農業は緻密な『科学』であり、高度な『専門職』なんだ。

力任せに種を植えたって腐るだけだよ」


「むぅ、やはり人間界の村から百姓を拉致してくるしか……」


「拉致じゃない、正当な『ヘッドハンティング』だよ。

ガラム商会から、アルテニア王国で不当に干されている農業の天才の情報を、事前に買い取っておいたんだ」


――深夜、砦の密談室。

バルトロが極秘裏に連れてきたのは、アルテニア王国の酷税と地主の嫌がらせで全財産を奪われ、明日にも奴隷に落とされる寸前だった人間の老農家、ゴードンだった。


粗末な麻衣を纏った老人は、恐怖でガタガタと震え、床に額を擦りつけている。


「ひっ、魔族……! 殺すなら、どうか一思いに殺してくだされ……!」


僕は静かに、彼に《鑑定》の視線を向けた。


【名前】ゴードン

【不満度】100%(アルテニア王国の貴族への絶望)

【適性】作物品種改良、特殊土壌改善(適性値:S)

【弱み】どれだけ優れた農業技術を持っていても、平民というだけで評価されず、理不尽な借金を背負わされている。


(素晴らしい。過酷な魔界の環境でも、この男の技術があれば超高収穫の農場が作れる)


「殺しはしませんよ、ゴードンさん」


僕はそっと、彼の前に温かい茶を置いた。

「僕は元経営者で、今はここの顧問です。

あなたを『魔王軍の農業最高技術顧問』としてスカウトしにきました」


「す、スカウト……? 儂のような、落ちぶれた百姓を、ですか……?」


ゴードンが恐る恐る顔を上げる。


「アルテニア王国は愚かだ。

これほど優秀な『土の専門家』を、身分が低いというだけで奴隷に落とそうとするなんてね。

我が魔王軍は、あなたのその『技術』が喉から手が出るほど欲しい。

だから、条件を提示します」


僕はテーブルに、重みのある金貨の袋と、一枚の契約書を滑らせた。


「あなたの安全と生活は、魔王軍の武力で24時間保証する。

個室も三食も支給。給与は王国の農奴時代の十倍を即金で払います。

あなたに求める仕事はただ一つ。

外にいるオークやゴブリンたちに、正しい農業を教えてやってほしい」


「ま、魔族に農業を……!? 儂のような人間の言うことを、あんな恐ろしい化け物たちが聞くわけが……」


「聞かせますよ。うちの社員教育を舐めないでほしいな」


翌朝、陽が昇ったばかりの畑。


おそるおそる外に出たゴードンは、その光景に息を呑んだ。


そこには、昨夜まで人間をいたぶっていたはずの凶悪なオーク部隊が、巨体を小さく縮めて地面に正座し、ゴブリンたちはノート代わりの板切れを手にして、綺麗に整列していた。


「ゴルグ隊長、バルトロさん」


僕が声をかけると、全員の視線が集まる。


「今日からこのゴードンさんが、我が魔王軍の『農業の先生』だ。

先生の指示には絶対服従。いいね?」


オーク隊長のゴルグが、ふん、と鼻息を鳴らして立ち上がった。


その巨体にゴードンが悲鳴を上げそうになった瞬間、ゴルグは深く頭を下げた。


「おう! 先生、俺たちの筋肉をどこにどう使えばいいか、指示をくれ!

飯のためなら何でもやるぞ!」


「ピギャ!(よろしくお願いします!)」


ゴブリンたちも一斉に一礼する。


王国で家畜以下に扱われ、誰からも顧みられなかった老農家が、怪物たちから圧倒的な「敬意」を向けられている。


「あ、ああ……」

ゴードンの目が、みるみるうちに涙で潤んでいく。


彼は震える手で鍬を握り締め、力強く頷いた。


「分かった……! お前たち、まずはその土の塊を、もっと細かく砕くんだ!

先生の後に続け!」


「「「オオオオオッ!!」」」


僕は手帳を開き、ゴードンのステータスを確認した。


不満度は0%になり、忠誠心は【120%(限界突破)】を叩き出している。


「よし、これであっという間に一大穀倉地帯ができるぞ」


僕は満足して手帳を閉じ、ふっと笑った。


「飯の心配がなくなったら、次はいよいよ『広報』を使って、アルテニア王国の防衛線を内側から切り崩そうか」



最後まで読んでいただきありがとうございます!

続きが気になったら、ブックマークで応援いただけると執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ