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転生ドワーフ鍛冶師、死刑を宣告されたので、ドワーフ国へ復讐することにしました!  作者: にんじん
第1章 鍛冶師への道

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運命

 やりたいことは、たくさんある。それも、ただ漠然としたものではない。頭の中には、明確なイメージがあった。でも……。俺には、鍛冶を覚える場所がない。その事実を突きつけられてからの俺は、抜け殻だった。学校へ行っても、先生の声が右から左へ抜けていく。授業の内容が頭に入ってこない。学校が終わっても、肉体鍛錬をする気力が湧いてこない。孤児院へ帰ると、自分の部屋にこもった。ベッドに横になって、天井を眺める。何もする気にはなれなかった。そんな生活が、一カ月ほど続いただろうか。孤児院の先生からは、何度も注意された。


 「肉体鍛錬を疎かにしたら、鍛冶師になれないわよ」


 分かっている。そんなことは、言われなくても分かっている。同い年のドワーフたちは、みんな必死に身体を鍛えている。七歳から十五歳までの八年間が、どれだけ重要なのかも知っている。それなのに、身体が動かなかった。


 俺は鍛冶師になる夢を諦めたわけではない。諦めたわけではないのに、その夢へ向かう道が見えなくなってしまった。まるで、大切なものを突然失ったような気分だった。大失恋でもしたのかと思うくらい、俺は憔悴していた。


 このままでは駄目だ。


 いつまでも抜け殻のままではいられない。俺は何度も自分に言い聞かせた。鍛冶師になる夢を諦めたわけじゃない。なら、せめて肉体だけでも鍛えなければならない。そう思って、俺は肉体鍛錬を再開することにした。だが、孤児院にある器具の前に立っても、筋トレをする集中力がなかった。バーベルを持ち上げる。下ろす。また持ち上げる。そんな単調な動作を繰り返す気分にはなれなかった。


 だったら、走ろう。俺はそう思った。目的を失った今の俺には、決められた回数をこなす筋トレよりも、ただひたすら走る方が合っている気がした。だから、走った。ただ、走った。どこへ行くのかも決めなかった。どこまで行くのかも決めなかった。ただ、走れるだけ走った。息が切れても走った。脚が痛くなっても走った。身体が重くなっても走った。苦しくなればなるほど、頭の中が空っぽになっていく。鍛冶を学べない悔しさも。イメージしていたことができない虚無感も。全部忘れてしまいたかった。


 「くそっ……!」


 涙が出た。悔しかった。俺は走りながら、何度も叫んだ。


 「なんでだよ!」


 誰に向けた言葉なのか、自分でも分からない。


 「なんで鍛冶ができないんだよ!」


 大声を上げながら、俺は走り続けた。今思えば、かなり怪しい子供だっただろう。泣きながら。叫びながら。何の目的もなく、ひたすら走り続ける。まるで変質者だ。それでも、俺は走った。走っている間だけは、何も考えなくて済んだからだ。そんな走り込みを、どれくらい続けたのだろうか。


 最初のうちは町の中を走っていた。そのうち、町の外へ出るようになった。さらに遠くへ行くようになった。走れるところまで走る。疲れたら戻る。それだけを繰り返した。


 そして、ある日のことだった。その日も俺は、いつものように町の外を走っていた。町から離れ、森へ向かう道を走る。いつもなら、そのまま引き返す場所だった。だが、その日は少しだけ道を外れた。理由なんてない。本当に、ただの偶然だった。けれどそれは、俺にとって運命だった。森の奥へ続く道から少し外れた場所。木々の間を抜けた先にそれはあった。


 最初に見えたのは、長い間、手入れされていないことが分かる木造の壁だった。木材は雨風にさらされて黒ずみ、一部にはひびが入っている。屋根もところどころ傷んでいるらしく、木々の隙間から見える屋根には、いくつか穴が開いていた。建物の周囲には雑草が伸び放題になっている。人が通った形跡もない。獣道のようなものさえ見当たらなかった。まるで、森と一体化した建物だった。


 俺は足を止めた。


「……なんだ、これ?」


 走っていたことすら忘れて、俺は建物を眺めた。こんな場所に建物があるなんて知らなかった。町からそれほど遠く離れているわけではない。けれど、普段使われている道から外れているせいか、ここまで来る者はいないのだろう。俺自身、今日まで存在すら知らなかった。少しだけ警戒しながら、建物へ近づいた。扉は完全には閉まっていなかった。木が傷んでいるせいか、片側が少し開いている。


 隙間から中を覗く。薄暗く埃が積もっている。床にも棚にも、長い間、掃除された形跡がない。ところどころに蜘蛛の巣も張っている。どう見ても、今現在、誰かが使っているようには見えなかった。俺はしばらく入口から中を覗いていたが、やがて意を決して中へ入った。


 床が軋む。一歩進むたびに、積もった埃が舞い上がった。鼻がむずむずする。俺は腕で口元を覆いながら、ゆっくりと中を見回した。壁には、何かの道具が掛けられている。古びている。表面には錆が浮いているものもある。何に使う道具なのか、俺には分からないものが大半だった。けれど、その部屋の奥にあるものだけは、一目で分かった。


 炉、そして、その横に置かれている鉄鎚。


「……嘘だろ」


 俺は、その場で固まった。ゆっくりと近づく。炉は長い間使われていないようで、内部には古い灰が残っている。鉄鎚にも埃が積もっていた。それでも、それが何なのかだけは分かる。俺は、鍛冶のための設備を見たことがなかったわけじゃない。知識としてなら、何度も見ている。前世のアニメやゲーム、漫画や小説。


 そこに登場する鍛冶師たちは、こういう場所で武器を作っていた。だからこそ、目の前に本物があることが信じられなかった。


「なぜ、こんなところに工房が……?」


 俺は呟いた。ドヴァルディア王国では、鍛冶を行うことが正式に認められているのは四つの大工房だけだ。小さな個人工房など存在しない。中規模の工房も存在しない。それ以外で鍛冶を行うことは禁止されている。


 なら、ここは……。違法な工房なのか?誰が使っていたんだ。何のために、こんな森の奥に?疑問はいくらでも浮かんだ。けれど、今の俺にはそんなことはどうでもよかった。


 鍛冶ができる場所を見つけた。その事実だけで、頭の中がいっぱいになった。



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