永遠の絆と現実
家に帰る途中、いろんなことが頭の中を巡った。まずは、マティアスのことだ。僕がレイダだからあんなに熱心になっているのだろうか?
きっとそうなんだろうけど、何だかがっかりしている自分がいる……。僕という存在ではなくレイダ。
あとはレイダとアヌ(マティアス)の話。まだイエーゼス教団との問題はまだ解決していないという。こんな僕に何をして欲しいのか、検討もつかない。
家に着いたら、理子が来ていた。
「ねえ、今日行くって言ってたよね!どこに行ってたの??チャット送っても返事がこないし心配したわよ」
「ああ、ごめん」
「何もないのであればいいけど、一言連絡くれてもよかったんじゃないの?どこに行ってたのよ」
「最近知り合った、画家さんと仲良くなってそのまま家に行ってしまって寝てた。携帯の充電も切れていたから連絡をできなかったんだ。ごめんね。さあ、家に入ろう」誤魔化すように素早く彼女を部屋に招いた。
そう言って、僕はそのままシャワーを浴び、理子と映画をみて過ごした。
慣れ親しんだ彼女との時間は、安心感がある。
これをしても大丈夫だろうか?こう言ってみたいが、受け入れてくれるだろうか?
そんな心配をしなくていい関係だ。
彼女の肌の感触や質感も懐かしい感覚がするが、それはマティアスとは違う感覚だ。
僕たちは、彼女が買ってきた缶ビールを飲みながら、辛味のあるチップスを頬張り、さらにカップラーメンを並べて食べ比べをしてみたり、ジャンクフードを並べて貪り楽しんでいた。
そろそろ、眠い時間になってきたが、彼女はまだ元気なようだ。
僕はそろそろベッドに入ろうとしたが、酔っ払った彼女の両腕が僕の腰に手が周り、下着をバサー!と下まで下げて遊んできた。
これは彼女のお誘い兼お遊び。
「コラー!」とか言って彼女の甘えに合わせ、理子を持ち上げてそのままベッドイン。
彼女との行為に満足しているし……など考えながら絶頂に達しようとした時に、マティアスの顔が浮かんだ……
「あ!」思わず声が出てしまった。
僕は彼女とは体の相性がいいけれど、相性……ただそれだけだった。
マティアスの時のような、心からの悸めきが彼女との間にはない。いや、出会った時は同じだったかな?慣れてしまったせいだろうか?マンネリがダメなのか?飽きているわけではない。
「建人?」
「いや、何んでもないよ」そう言って僕は最後までいった……。
気づいてしまった僕は、理子に申し訳ない気持ちになった。
腕の中で彼女は眠る。僕はその寝顔を見て抱きしめる……。
いつの間にか、僕も眠ってしまったようだ。彼女にはどのタイミングで自分の気持ちを伝えるかな?
彼女は僕と同じ29歳だ。結婚をしたいだろうし、出産や家族計画のことも考えていると思う。
沢山のことが雪崩のように押し寄せてきて、一人で頭を抱えていた。
「面倒くさくなってきた……」
「何が???」
「あれ?!起きてたのか??」
「そうよ!今日は何だか上の空じゃない?先週から様子がおかしいのよ。何があったのか教えてよ」
今、ここで正直に胸の内を話すのはやめておこう。折角の雰囲気を今日は壊したくない。
今日はお互いに気持ちよくなったのだから……。
「特に変わりないよ。時々クライアントに提出しないといけない資料の件で焦りが出てしまってさ、ごめんね」そう言って彼女の額にキスをした。彼女の安心した顔に僕も安心した……。
それから僕たちは夕食を食べ、仕事の準備があるからという『帰らせる』ための言い訳を作り、彼女を駅まで送った。
そして、部屋を掃除をし、項垂れるようにベッドに横になった(マティアスさんの絵を見つめながら)
***
「取引をしよう。」
「??」うたた寝をしていたら、とても低くて気味の悪い声が聞こえた。ただそれだけだった……とても疲れた週末だったので、そのまま朝まで爆睡。
そう言えば、あれは気のせいだったのだろうか?電車の中であの意味ありな言葉を思い出した。
気のせいだよね??そうだと思いたい。また今晩何か聞こえたら、マティアスに相談してみるとしよう。もしかしたら何か知っているかもしれないしな。
夜、同僚と軽く飲んで帰宅した。「?」誰かドアの前にいるような……
「やあ!待ってたよ。チャットを送ってたんだけど返信がないから来ちゃった。うふ」
「えー!あ、本当だ!すみません見てませんでした。こんな時間に来ちゃってどうするんですか?」
「いや。ちょっとセンサーに引っかかってさ」と言って顳顬を抑えた。
「まさか?やっぱりそうなんだ!昨夜、不気味な声で「取引だ」と聞こえたんですよ〜」
「そうだったのか……他に何か言ってなかったかい?というか中に入れてよ〜。今日は帰りたくない」
おじさんに可愛く言われてしまって、あっけに取られた。でも可愛いから許す。
「ちょっと待っててくれますか?汚部屋を見せるのはまだ早いかな?あはは」そう言って、昨夜の残骸を慌てて片付けて、換気をした。
「どうぞ!どこでもいいので座っててくださいね。お茶をお出しします」
「お邪魔するね!わーい!建人の匂いだ〜」
若干焦ったが、無事に迎い入れた(焦った……)
「さて、取引したいと言われたんだね。あちらはどうやら焦っているようだ。何しろ僕と出会ってしまったからね。奴らからしたら、僕と君が出会ってしまうとまずいんだよ。僕としてはとても喜ばしいことなんだけど。さて、この前少し話し話したけど、君の覚醒を早めるしか手立てはないから僕は考えた。
二人で旅行に行かないか?」
「急ですね。スケジュールを見ないことには直ぐには難しいかもしれないし。まあ、遠隔でできますから大丈夫だと思います。ところでどこに?」
「宇宙だよ。でもそんな大掛かりな準備は不要だから安心して。できれば、僕の家においでよ。あちらの方が君を守ることができる」
マティアスは、そう言って僕の目をじっと見つめた。
「ダメかい?」
「いえ、あなたに見つめられると、NOと言えないですよ。だって僕のためにしてくれてると理解していますから。今日からですか?」
「今日は遅いから、次の週末には来てくれた方がいいね。今日はもう失礼するよ」
彼から熱いハグ。手をと手が絡み合って、お互いに別れるのが惜しい感覚になった。
「まだ、この先は取っておくことにしよう。じゃあね」
タクシーを捕まえ、見えなくなるまで見送った夜11時25分。




