僕と彼との絆
無精髭を生やした薄い唇から何が彼の口から出てきた言葉は「一緒にいたい」だった。
「ああ、単刀直入に言うね、君と僕は絆で結ばれているんだよ、赤い糸的なやつだ。あはは〜」
何だか軽いなあ……でもこれまでの流れだと言われてもおかしくないが、拍子抜けだ。
もう少し深い話があったのではないかな?と思ったが、とりあえずそれに対して何か返さなきゃ。
「はい」
「……。え?それだけ??もう少し反応が欲しかったよ。ツッコミ的なやつをさ〜」
「はい」
「え??本当にそれだけか??」
「いや、そう言うことは言われそうな予感がしてたんで……。ただ、何というか少し本題的なことが聞けるかな?と思っていたんですよ」
「君はすごいね!そう、君との出会いはとても自然で僕はとても嬉しかったんだよ。ここで再会できるとは思ってもみなかった……。僕は、今世で必ず君と会えるとしか確信がなかったんだ。だからこの機会を逃したくない。僕は君を失いたくないのだよ」
「どうしてそこまで僕に??だって、あなたは地位もあるし、ルックスも抜群でとても魅力的だ……。そんなふうに言われるとノンケの僕でも心が揺らぎます。彼女がいるのに……この短期間で僕の何を知ってると言うのです?」
「建人、それはまだ言うべきではないと思う。ただ僕のことが好きなら心のままに動いて欲しい」
そう言って彼は僕の右手を優しく取り、その上から左手を被せた。彼から流れるエネルギーを感じそのエネルギーが僕の体中を走っていき、ハートに広がった。この感覚は理子にはなかった……
そうか……この全身に痺れる感覚が気持ちがいい。体は何と正直なのかな。
「わかりました。僕も正直に言いますね。初めて会った時から、あなたのことが気になって仕方がないのです。さっき『今世で会える』と言いましたよね。僕は輪廻転生は信じてないけど、重たくて受け流せない言葉だ。僕たちは前世でも知り合いだったんですか?今世も会うとあなたは確信していたと言うことは、何があって僕たちは……」
正直、頭の中がぐちゃぐちゃで何から伝えればいいのか分からない。『一緒にいたい』とはどういった関係までなんだろう??ちょっと先にそこから聞いてみようかな……
「建人。僕は君が考えていることは全部わかる。君は僕のことを『愛してる』。それは僕たちが持っている絆なんだよ。それと、僕たちはある課題を抱えているんだ。予期せぬことを起こした問題を抱えていて、その発端となったのが君なんだよ。この未解決事件が僕たちの絆でもあるが如何なることがあっても理由なしに、僕は君を愛している」彼はそう言って、僕を抱き寄せた。
僕の頭を優しく支えてお互いのおでこを合わせ、彼は僕に安心させたいのだと思った。
「今回は、見つけるのが遅くなったね。ごめんよ」
そう言われた瞬間に、胸から熱いものが込み上げてきて、勝手に涙が溢れた。
「あれ??なんで僕泣いているんだろう……」そう言って涙を拭おうとしたら、唇にとても優しいキスが来た。とても自然で優しいキスだった。
彼の薄い唇は冷たくて心地よく、何度も何度も唇を合わせてしまった。
何だか今までのキスは何だったんだろう。自分は理子を満足させていたのか?とふと考えていたら、マティアスと目が合った。
「今、彼女のことを考えたね?何で??今は僕のことだけを考えてよ!」と言って、優しく体を抱きしめながら、激し唇を押し付けてきた。でも僕は抵抗したくなかった。
ん??……彼の手は僕の服を脱がすように動いている??
「ちょっと待って!!」
「あ、そこはまだだったね。あはは!だって君もノリノリだったからもういいかな?と思ってさ」
「あの……男性としたことがないので、今日はこの辺で。ところで僕たちの絆について、そろそろ本題を教えてください。」
「そうだね」
そう言って、彼は僕たちが犯した過ちについて話てくれた。
1.夢で見たレイダ(僕)とアヌ(マティアス)は婚約中でレイダは妊娠していた
2.レイダは当時勤務していた製薬会社の取締役で研究員・広報部員で、アヌは画家だった
3.レイダは当時開発していた「エターナ」という不老不死の新薬を全世界に広めるべく、広報に勤しんでいたが、イエーゼス教団という組織から販売の利権を奪われる。それを阻止しようとレイダは教団に潜入を勝手に進めてしまい、アヌも含めて失敗したことが原因で僕らは何度もやり直しの人生をしている
4.僕は転生の形で毎回死んで新しく生まれ変わるが、アヌは死んでも魂は元のアヌに戻るので記憶を保持したままである。
5.レイダが生まれ変わるタイミングで同じ星に行くが、ウォークインができる肉体との相性もあるのでいつも上手くいくとは限らないという
彼は毎回この説明をレイダにしているそうだ。また、いつも男と女のLoveになるわけではなく、いろんなシチュエーションがあり、レイダの姿に合わせて上手くやってたそう……。
「まあ、そんなところだ。イエーゼス教団について動きが活発になっているので、銀河連合という銀河系組織と連携をして慎重に動いていこうと思っている。向こうにも僕たちが接触したとバレていると思うから、何か異変があったらすぐに連絡をしてね」そう言って、彼は僕の手を両手で握りしめた。
途方もない時間の中を生きている僕たち……。
正直、どっちがリアルなのか分からなくて現実逃避したい気分だ。銀河連合とはなんぞや……。
「はい」
「……大丈夫かい?シャワーを浴びてさっぱりしてくるかい?
「いや、このまま失礼します。話が盛り沢山すぎて、今日は一日寝て過ごそうと思います。あはは」
「そうかい?じゃあ、このネックレスを準備しておいたんだ。大切にしてほしい」そう言って、彼は僕に紫色とゴールドがマーブル状の模様をした石のネックレスを首にかけてくれた。
「これは?」
「今までのレイダが持っていいたものと同じネックレスなんだけど、君を守るためのものだよ。さっき話たイエーゼス教団からの攻撃を防いだり、僕と君との繋がりを確認するためのものだ。余程のことがない限りは、外さないようにしてね」
「ありがとうございます」と微笑んで見せた。今日は本当に情報が処理きれなくてそれが誠意いっぱいだった。それが彼に伝わったのだろうか、心配そうな顔をして見送ってくれた。
(お別れのキスはなし)




