アニメのような世界観
日中はマティアスのことを忘れることができる。クライアントとのミーティングが詰まってるし、資料作成も沢山しないといけない。でも時々思い出してしまう、あの艶かしい夢……。
しかし、あの雰囲気は地球ではなかった。アヌと呼ばれてた男性はとても美しかった。体格のいい筋肉質の体型に、淡い青色のきめ細かい肌。銀色の髪に、ブラウンとグリーンが混ざり合った神秘的な瞳。
実際、男の僕でも惚れてしまいそうなくらいの美形で素敵な人だった。今でも乙女な気持ちになっているよ。実際に現れてくれないかな…あはは〜。
しかし、あんなアニメのような世界観は本当に実在するのかな? そうだったら、あの世界は過去世かな。すごく近代的な感じもした。しかし、急にあんなことがあったということは、マティアスさんの絵が関係しているのかもしれない……。
そんなことを思いながら、仕事を時間までに終わらせ早々に帰宅したのであった。
続きの夢を期待して……。
***
ゆっくりと目を開けると、部屋の雰囲気がいつもと違っっていた。まるで、あの夢の中で見たレイダの星の世界の雰囲気が寝室中に広がっている……。
「あのね、アヌ……」と建人の口から自然に出てしまった!もはや夢と現実の境目が分からない状況で、思わずベッドがら飛び起きる。アヌって自分の口から出てきてしまったよ〜。
しかも今日は何が起こったのか分からない。覚えてない。
まだ心がざわついていて、落ち着かない。
しばらくベッドの上をゴロゴロ寝返りを打ちながら考えていたが、諦めた。だってこっちにはこっちの世界があるしな、僕が慌ててどうすんだよ…ふふ
失笑して、時計を見てみるとまだ5時55分。
今日は土曜だし、出かけようかな。理子を誘う気にもなれない……。そうだ!マティアスさんのイベントがあるか探してみよう!
探してみると、案の上イベントが銀座であった。爽やかなマティアスさんの写真と絵が載っている写真を見つめたら、今日は行くしかない!と決意をした。同時にウキウキして心が弾んできた。
土日だったら、イベント会場にいるかもしてない。よし!挨拶に言ってみるか。身体は疲れているけれど今日はこれ以上寝ることができない。まだ早いけど、コーヒーを飲んで準備しようかな。あ!この前買った服を着ていこう!うふふ……
また乙女な心が出てしまった。
***
シャワーを浴び、身綺麗に整えて建人は行くと決意したものの、また場違いだったらどうしようと葛藤していた。こんなことで優柔不断になる自分に疲れる。
なんだかんだ準備を進めて、新しく購入したポロシャツとカジュアルな膝丈の短パンを履きイベント会場へ向かった。
大きなボードに、マティアスさんの経歴が書かれていた。
沢山の受賞歴が時系列に並べられていて、アート業界でも相当な人なんだ…と感心してしまった。そしてなぜか、自分はこの人から絵をもらったことが自慢に思えた。そして周りを見渡すと、行列ができていて面食らった。「えー!」思わず声が出てしまったが、写真待ちのようだった。
この際並んで写真を撮ってもらおう!
最後尾にいたが、ファンとの会話が長く、なかなか進まなかったがやっと自分の番が来た!!
「あれ??建人じゃないか!来てくれて嬉しいよ!」そう言ってマティアスが左手を差し出した。
「はい!今日はこの辺りで買い物をしようとウロウロしていたのですが、たまたま……」
「たまたまかい?なんてタイミングがいいんだろう。きっと僕たちには縁があるね。写真でも撮ろうか?」と言って二人で絵画の前で写真を撮った。その絵をじっと見てみると、少し頭に電気が走ったような感覚があった。その絵は、まるでアニメの魔法の王国に出てくるような壮麗な雰囲気の扉が描かれており、少しだけ扉が開いていて、光が漏れていた。その周りには、たくさんの星々や星雲、そしてよく見ると薄青い手の平がうっすらと背景に描かれていた。
「どうした?大丈夫??少し奥で休むかい?」
「いいえ、ちょっと頭に電気が走っただけなんです。僕は健康には自信があるので大丈夫ですよ」
「何もなければ……」マティアスはそう言って絵の紹介を順番にしていった。
残りの絵画が半分に差し掛かったところで、先日見かけた受付の人、綾子さんががきて声をかけてきた。
「マティアス、お客様がお呼びなので少しいいかしら?建人さん、お話中にすみません」
マティアスは、残念そうに、下唇を出してへの字にしてみせた。
「建人、もう少しゆっくりしてくれていいからね!そうか、この辺でDinnerでも食べて行かないか?今日は時間通りに終わると思うんだ」
「え?いいんですか?僕なら時間はあるので大丈夫ですよ。お店を探しておきますよ」
「いや、いつも行ってるところがあるんだけど、綾子さんに予約をとっておいてもらうよ!今日の楽しみができて嬉しいな」
なんだか、次々とスケジュールが自然と立っていくのが不思議と心地よかった。
***
暫く展示会の中を歩き、僕は思った……
この絵はなんだか、見覚えがあるシーンもあるような気がする。特に今回の展示会の中で一番小さいサイズのやつ。青い肌の大きな背中に地図のような線が描かれていて、その背中に手を当てている白くて美しい手が優しく触れている雰囲気…。目が離せない。
「この絵は、今回の展示会には入れない予定だったのよ。でもマティアスは何故か入れ込んだのよね〜うふふ」と軽く笑いながら、綾子さんが背後から声をかけてくれた。
「そうでしたか、でもなんだかとても手から愛が溢れる感じがするんですよね。薄青い肌にしてもマティアスさんの絵はファンタジー感があり、アニメ好きの僕としては入り込んじゃいますね!」
「あら!良かったわ!是非この絵をお買い上げください!!」と冗談混じりに発せられたが、値段を見ると
難しいほどの値段だった…。「すみません…僕にはまだ甲斐性がないので。あはは〜」
「あら、残念。うふふ」と綾子さんと軽く雑談をし、さっさと展示会を抜けて行った。マティアスさんはお客さんと商談している様子だったが、声をかけておけば良かったかな?後でチャットして連絡したらいいよね……と後ろ髪引かれながら……。
『マティアスさん、終わりましたらご連絡ください。お忙しいようでしたのでお声がけせずにすみません!』とチャットを送っておいた。まだまだ時間があるから、映画に行こう〜。
***
『建人!仕事終わったよ!!どこにいる?とりあえず、このレストランで待ち合わせにしよう!因みにここは僕が奢るから安心してね!』と。またお世話になっちゃうよ〜。「ま、いいか!お礼を言っておこうね建人君」と呟きながら返信をしておいた。
でも、なぜこんなに親切なんだろう……
時間通りに到着。
カジュアルなフレンチレストランだったので、良かった。今日は短パンポロシャツだもんね。
席を案内してもらった、既にマティアスさんがいた。
「やあ、迷わなかったかい?」
「はい!大丈夫でしたよ。ここ、以前から来てみたかったんですよ」
「じゃあ、丁度良かったね!」
僕たちはまだ会って間もないのに、何故か古くからの友人のような雰囲気で会話をすることができた。もう『なぜ』と自分に問うのもバカバカしくなってしまったので、もう流れに乗ったらいい。それにしても、彼の瞳(ブラウンに所々グリーンが散りばめられた)に吸い込まれそうだった。話はもちろん楽しいが実は頭に入ってこなくて、瞳と唇に目が離せなくなっている。
ふとした瞬間に手に触れてしまい、ドキッとしたのが彼にバレてしまった……つい咄嗟に下を向いてしまった。
「ねえ、ズバリ質問していいかな?」
「え?なんですか??」
「建人君は、男好きなの?」
「そんなことはないですよ!僕には同期の彼女がいるんですよ。僕たち新卒時代からの同期なので…」
「そうかい。(君たちはこちらでも仲がいいんだね)」
「え?何か言いましたか??」
「いや、いんだよ。ただ、ちょっと心が痛くなっちゃった。あはは!」そう言ってマティアスは一口赤ワインを含んだ。そして僕は確信をつくのが怖くて話を逸らした。
「まあ、いいよ。僕は君のことが好きだよ。だって、君は快く僕との時間を取ってくれてこの時間がとても楽しい。率直に、君は僕の好みなんだよ建人君。君はそんな気持ちはなくても友人としてこれからもよろしくね」
そう言って彼は軽く話していたが、いや、僕のためにそのように軽く話してくれていたのだろう。この関係を壊さないためにも。
「マティアスさん。どうしてあの絵を僕にくれたのでしょうか?今日あなたの展示会を見せてもらいましたが、通りすがり同然の僕にあなたのような方が気軽に渡してくれるなんて、何か僕にして欲しいことがあるんですか?」
「あはは!考え過ぎだよ。だって、思い出してみて。あの時の君の勢いに僕は初心に戻った気分だったんだ。新鮮さと懐かしさが急に心に蘇り、この若者に僕のバッションが伝わったことがとても嬉しかった。ただそれだけだよ」
若干話が逸れた感じがしたけど、マティアスさんの本心が聞けたような気がして安心した。
話が逸れた感じ……つまり、僕の本心を見透かされることが怖かったんだ。でも彼は僕に気を使ってくれた。
「さあ、他に食べたいものはないかい?じゃんじゃん頼んじゃっていいよ!」
この日、二人で飲み明かし、楽しい時間を過ごすことができた。
***
心地いい空気感……
シーツが気持ちいいな〜(触って感触を楽しむ)
無事に家に帰れたようだ…。結構飲んだから自宅までの帰路については覚えてない……ん?
間違いなくこの感覚は自分の家ではない!
マティアスさんと飲んで、2件目に行ってから覚えてない…あはは。久しぶりにやらかしてしまったようだ。とろでここはどこなんだろう?とりあえずトイレへ……
そう言って周りを見渡すと、ソファーにマティアスさんが寝ていた。
彼を横目にそそくさと音を立てないように小走りでトイレを探した。
ここはきっと彼の家のようだ。
用を足し、彼が寝ているソファーへ近寄ってみる。熟睡してる…可愛いなーっと思った瞬間に心にホワホワと温かいエネルギーが広がってきた。そう思ったら、ふと理子の寝顔を見た時の感覚と違うことに気が付いた。このホワホワした感覚は気持ちが良くて、同心一体を感じた一瞬の感覚だった。なんでこうなるの??自分に問いかけてみるが、原因は一つ『マティアスさんに惹かれている』これは正直な思いだ。
キスしてみたい(この言葉が心に現れた瞬間)
「おはよう……。よく眠れたかい?ふぁ〜」とダイナミックに手足をぎゅーと伸ばして伸びをした。
「おはようございます」恐縮しながら……「なんか、お邪魔してしまったようですみませんでした。途中で記憶がなくなっていて……あはは」
「えー!?すごくしっかりしていたけど、記憶なかったの?じゃあ、ここに来た経緯も忘れてないんだね!あはは〜。」
「はあ、何か話してましたか?」
「いや、いいんだよ。ただね、寝言に僕の名前を言っていたよ!あはは〜。どんな夢を見ていたの?それを聞いて、夢でも一緒にいてくれたんだ……と思うとなんだか嬉しい」
「えー!そういえば、夢のことは覚えてないです。次回見たら教えますよ」
ふ〜……。願望が夢に現れたようだ。でもすごく楽しい夢だった。
「あのね、建人君」
「はい」何を言われるのだろうか。
「僕のことが好きなのは分かったよ。とても嬉しい」
「はい」
「まだ会って間もないのだけれど、僕も君のことが好きなんだよ。率直にいうけど君の側にいたい」
「それは時間をください」
「即答?!なんで?あんなに夢で愛し合ったに〜」
「それはないですよ!何言ってるんですか?」急に何言ってるんだろうこの人は!
「あのね、君はシャイだから正直になれない性格なんだと思うけど、実は……僕にはサイキックの能力があってね、夢に入り込むことができるんだ。その中で昨夜は沢山愛し合った……」
「……」
「なーんてね!そんな、意図的に夢に入るなんてできないよ。意識の共有場であるエネルギー場があるんだ。そこにたまたまアクセスできて、昨夜は入ることができたということだ。昨夜は一緒に過ごして楽しかったから、僕らの意識がシンクロしたんだ。お互いに同調しやすい意識になると夢でも色々できるし、テレパシーもできるようになるんだよ」彼は左手の人差し指を薄い唇の前に立てた。どうやら内緒にしたいらしい。
「だからね、僕たちはそういう仲だ。ここからが本題だ。僕は君と一緒にいたい……」




