帰国
一波乱あったが、マティアスは自分のペースを崩さずに、絵と向き合っていた。
ピラミッドの中の細部を思い出しながら、『なぜこんな内容が当時の俺にかけたのだろう……』自分でも不思議に思っていた。
更に、月の中、泉の中にもそれぞれ隠しコードを入れていたのであった。
この月、泉、ピラミッドの3つにはキーワードがあり連携させた何かを当時のアヌは知っていて、多分ソロモンから司令のあったプロジェクトをしていたんじゃないか……。
しかし、プロジェクトのコードをこんな所に漏らすのかな??ははは・・・
虚しい自問自答をしつつ、全体のバランスを眺めていた。
線と線が繋がる度に、コードが発光し生きたようにエネルギーを発するようになる。
これは、線を間違えの無いようにしなければいけない。慎重に丁寧に描いていった。
「すっかり忘れていることとはいえ、この絵を作った当時の俺は何をしたかったのだろう……しかも付き合い始めのレイダに送るなんて、俺はどうかしてたのか?
———いや。
俺は、当時70歳を超えていた。初めて心から愛した女性だったんだ。
彼女に伝えたかったんだ。
俺の全てを。
それを彼女は分かってくれていたんだ。
徐々に当時の事を思い出したマティアス。
甘づっぱい感情が込み上げきて、心がとても熱くなった。
あの頃の感情、忘れていた感情と記憶が鮮明に蘇る。
タイムラインの統合。
二週間、彼は部屋に篭り、食事は部屋に持って来てもらい最終日まで書き続けた。
***
「サラさん、こんにちは」
「あら、マティアスさん、調子はどうかしら?少しお茶でも飲んで行きませんか?」
「ええ、ありがとうございます。では少し」
「あなた、来た時と表情が違うわね、そう、随分と若くなったようですよ。うふふ」
「ええ、随分と忘れていたようです。僕は、彼女を失ってから一時も忘れた事など無かったのに、忘れていたんです。それが分かった時、ショックを受けました。でも同時に大量の思い出と感情を思い出し、彼女を失った瞬間の絶望感も思い出しました。今回描いた絵は、全てを思い出させてくれましたよ。そして裏教団がレイダを狙う本当の意味も。なので、この絵は僕が持って行きます」
「そうですか。どうぞ、お持ちになってください。初めからそのもりでしたし」
「ここにある事が裏教団にもバレているので、あなたの身も危ない。そして私の家に置いても危ないので、もっと安全な場所に置いておく事にしました」
「はい。承知しました」
「あと、これはお礼と言ってはなんですが、この絵を受け取っていただけないでしょうか」
椅子の後ろに隠していた絵を差し出した。
それは、サラのポートレートだった。
彼女の聖母のような眼差しと、愛に満ちたエネルギーコードをしたため、絵の存在感がより増している。
「まあ!なんと素晴らしい。身に余る光栄ですわ!マティアスさんありがとうございます!!」
「こんな事ぐらいしかできず……。私の方こそ、お礼を申し上げたいところです。ところで、貴方は自分のことを教団上層部の位だとおっしゃいましたが、実は教祖ですね?」
「ふふふ、はい。バレてしまいましたね」
「分かりますよ。申し訳ないと思っていましたが、私の仕事のパートナが部屋を調べていたことをご存知だったはずです。更に毎週定期的に教理を諭している声も聞こえていましたし。貴方は、マリアそのものだ」
「聖母マリアは、私の友人です。彼女の側にいたら皆彼女のようになれますよ。ただ、私は教団を変えて行きたいのです。いつからこんな二分された宗教になってしまったのか?イエーゼス様は全く私達を裁いておられませんが、そもそも宗教化してしまった事に嘆いておられました。その上悪質な組織も発生させてしまっているので、せめて、裏教団は私が生きているうちになんとかしたいと思っておりました」
二人は、ゆったりとブランチの時間を楽しんだ。
屋敷の庭と空から降る輝かしい太陽の光とに包まれて……。
***
さて、帰国の時間が迫ってきた。
絵はシャロームに任せて、艦隊に保管を頼んだ。
「では、サラさん沢山のご無礼失礼いたしました。また、貴方のご好意は忘れません。ありがとうございました!」
「ええ、ご武運を祈っております。まずは、無事のご帰国をお祈りしております」
マティアスはタクシーに乗り込み、会釈をして屋敷を去っていった。
「おい!」
「なんだ?何か問題でもあったか?」
「そうじゃないが、サラにやったあの絵に何を細工したんだ?」
「気持ちよくなる魔法だ」
「もう、余計なことをするなよ。たぬきババアなんだから」舌打ちした。
「あはは!悪くないよ、あの人はいい人だ。俺の感は当たるからな!」
無事に飛行機のチェックインも済ませ、東京への帰路に心を弾ませたマティアスだった。




