サラ・レヴィン
建人を一人残してしまったことが、なんだか心に引っ掛かる。
でも、彼が決めたことだし、そういう流れなんだろう。
一人といっても、アーヴがいるし、なんとかなるだろう……
一人で空港にチェックインをし、隣にいて欲しい人がいない寂しさを何で埋めようか模索していた。
「とりあえず、チェックインを済ましたら、ラーメンでも食べに行くか!!
***
やっと地上に到着。
イタリアはミラノに住んでいる、とある富豪様のご依頼で今回はお呼ばれだったのにな……
「おい、まだグチグチいってるのかよ、アヌ!煩いぞ」
「ああ、だってさ、彼からしたらこんな待遇の旅行に来たことないだろうと思ってさ」なぜか付いてきたシャロームが護衛に付いてきていた。
「ところで、なんで僕に付いてきてるんだ?」
「ソロモン大元帥から言われてな!お前を呼んだ例のお貴族様が気になるんだとさ」
「相手があっち(教団)側だったら、お前が側に付いてることがバレてしまうんじゃないか?」
「そこは、当たって砕けろだ。あはは」シャロームが笑って誤魔化した。
ま、旅の共がいることはいいことだ。相手が誰であっても同じか。
建人以外の誰かだったら誰でも同じだ……。
そうこうしている内に、依頼主の屋敷に到着した。
古いお貴族様だろうか?数世紀前の門構えに、遠くに屋敷らしき建物が見えている。
お手伝いさんらしき人がやって来て、中へ入れてくれた。
そのままスルスルと部屋へとしていただき、ドアをノックした部屋の先にいたのは、見た目が65歳の女性であった。
「遠いイタリアまで、お越しいただきありがとうございます。私はサラ・レヴィンと申します。本来でしたら、日本へ赴くのが筋だと思いますが、我が家をご覧いただき理解を深めていただいた上で絵をこの世にたった一つしかない絵を描いていただきたかったのです。ですから、この屋敷にお好きなだけご滞在ください」
「いえ、私としてもご連絡いただいていたお題をどのように絡ませるが思案しておりました。また、大きな作品ほど、設置するお部屋に合うように描いていきたいと思っておりましたので、今回のお招きについてはこちらとしては大変助かりました。ではお言葉に甘えましてこちらで描き上げるようにいたします」
ふむ……滞在は二週間ではすまないな……。何回か往復しないといけない。
穏やかなやり取りをしている中、シャロームは屋敷中を調査していた。特段怪しい雰囲気はないものの、地球人が過ごす家にしては少し違和感のある部屋ばかりであった。
「なんだろうな……。なんてことのない富豪の屋敷だが、異世界的な雰囲気もあるんだよ。ここにマティアスが滞在するみたいだが、大丈夫だろうか?」
そう独り言を言いながら、調度品を触りながら歩いていた。
「!!」
「見つけた。」
マティアスはサラと食事をし、部屋に戻り長いフライトの疲れを癒すためにバスタブに水を溜めていた。
「おい。この屋敷で見つけたんだ。少しいいか?」
「ああ」
シャロームはマティアスにイメージ画像を脳内に送った。それは、教団マークのついた鏡である。
「これは……。サラさんは教団関係者なのか!しまったな……。敵の罠にハマっってしまったのか。今このオーダーを止めてもいいが……。明日の朝食の時に話してみようか。今日は疲れたから見張っていてくれるかい?」
「ああ、今夜はゆっくり休め」
***
朝はカプチーノと甘いブリオッシュが並べれれていた。
ブリオッシュにつける、はちみつでも数種類のものが用意されていた。
しかし、昨夜のシャロームからの報告で無邪気に朝食を楽しむことはできなかった。
「おはようございます。サラさん、昨夜はぐっすりと眠ることができました」
「それは良かったわ。さあ、好きなだけお食べになって」
二人は他愛のない会話をして、朝食を楽しんでいた。
しかし、口火を切ったのはサラの方からだった。
「ところでもうお一人、お連れ様がいる様ですね」
「———!」シャロームを思わず睨んでしまった。
「どうぞ、びっくりなさらないでください。そのまま朝食をお楽しみください。
イエーゼス教団には、表と裏がありますが、私は表の上位幹部に当たるものです。貴方のレイダさんのお役に立てたいと思い、貴方にオーダーを依頼しこの屋敷にお招きしたのが本来の目的だったのです」
「はて……。どうやって信じればいいのでしょうか?まんまと来てしまったことに後悔していますよ」
「そのような事を言わないでください。私も裏のやっていることが許せなくて、何千年も機会を窺っていたのです。そこで現れた貴方の建人が覚醒していることが分かったので、貴方に接触をしました。なので、この好機を一緒に協力したいのです。あのバカな裏のせいで、私たち純粋なイエーゼス教団の名は汚されてしまいました。私は心底奴らが憎いのです」
「どこまで信用すればいいのか、私は混乱しています」
「では、これを差し上げましょう」
そういって、サラ・レヴィンは裏教団が持っている財産源である改変タイプ『新エターナ」』の全種類のデータメモリであった。
「貴方、これを僕に渡して大丈夫なんですか?」
「ええ。これを貴方に託すことの危険さをご理解いただけますよね?」
シャロームが現れて、中のデータに関してスキャニングをしていた。
「ああ、これは間違いないね。今までの星に合わせてエターナを変え、その効果についてやらなんやかんや情報が詰まっているよ!これはありがたい!!」
「———。」
「はい。これで分かっていただけたでしょうか。私は至って真剣にお話しをしています。そしてここからは更に踏み込んでお話しいたします。マティアスさん、貴方の記憶の解析もさせていただきたいのです。
今回絵のお題について、3つお伝えしておりますね。①ピラミッド②澄んだ泉③月これらはあなた方にとって重要なキーワードと私は睨んでおります」
「いや……。僕には分からないですよ。それぞれ単体で見ると意味のある要素というか、絵の題材には良いが、我々の記憶の中に裏教団を潰す鍵があるなんて、想像もつかないです」
「おい、なんで身内外の方が分かって、お前には分からないんだよ……」横目で見てくるシャローム。
「そんなこと言われてもさ……あはは」笑って誤魔化してみた。
「ここまでお話しできたことの感謝いたします。ひとまずここは解散いたしまして、私たちがどの様に協力し合えるか、お考えになってください。そして、3つのキーワードの記憶が思い出されない場合は、ヒプノセラピストを手配いたします。では失礼いたしますね」
マティアスは彼女が立ち上がった時に、一緒に立ちお辞儀をして見送った。
「おい、シャロームどうするよ……」
「いや、その話に乗ってもいいんじゃないか?このデータは嘘じゃないと思うし、これをソロモンさんに渡したら喜ぶと思うよ!」
「そうだな。誰かを寄越してそのデータだけでも解析してもらおう。お前は引き続き僕と一緒にここにいてくれよ」
「ああ。了解だ。それと、例の絵のお題についてはどうするんだ?」
「心当たりがないわけではないが、それと今回のレイダの記憶と何がどう関係するのか分からないんだよ」
「仕方ないな……。この旅は君にとって重要な転機になるんだろうね。そして長い滞在になりそうだ」
「ああ。だが、一旦帰って建人を連れてくるかもしれないね。ひとまずは二週間くらいはここに留まる」
カプチーノに沢山の砂糖を入れ、いっきに飲み干し部屋を出て行った。




