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恋心は突然に。  作者: 一ノ瀬 栞。
8/9

8。


淡々と日々を過ごしていたら、いつの間にか梅雨は空け7月の強い日差しがジリジリと照りつけ季節の移ろいを告げる。


相変わらず私は朝の公園通いを続け猫餌を撒き続けている。いつものベンチにさらさらと餌を撒いていると体操のおじいさんが話し掛けてきた。


「あんたもよく餌やり続けてるねぇ。茶トラの猫だろ?」


「はい。」


「よく昼頃来て、餌食べた後ゴロゴロやってるよ。たまにスーツ姿の兄ちゃんが来て撫でて帰っていくな。」


スーツ姿の兄ちゃんと聞いて頭に北村くんが思い浮かぶ。

まさか、ね。


「あの猫はさ、立ち寄り場所が決まってんのよ。朝は公園近くの婆さんの所に入り浸ってんのさ。すぐ近くなのにな昼頃にならないと来やしない。あんたもあの茶トラに会いたかったら昼頃に来るといいさ。」


「そうですか。ありがとうございます。」


私はおじいさんにお礼を言ってその場を去る。猫がちゃんと来てくれていることを知れたことが嬉しかった。それと同時にたまに来る男性とは誰なんだろうという疑問が頭を過る。北村君?まさかねと頭を振り払う。その時鞄の中の携帯電話が着信を告げるメロディを鳴らした。取り出し確認してみると梨華からのラインだった。画面には


≪チャンスの女神には前髪しかありません。しっかり捕まえて≫


とだけ打ち込んである。久々のラインで意味のわからないメッセージ。私は意味も分からなくて


≪梨華、久しぶり。連絡しなくてごめんね。それとメッセージの意味が分からないんだけど何?≫


と返信を返した。送られてきたメッセージはひと言。


≪健闘を祈る。≫


意味が分からないのとこのまま続けても謎は解明しないだろうと探求を止め、携帯を鞄に戻した。


会社に着くとやけにテンションの高い社長がデスクで声を張り上げている。


「いやぁ、おはよう。みんな揃ったかな?今日は簡単な朝礼をしようと思うので話を聞いて下さいね。」


いつも調子の良い社長が更に調子良く語り出す。


「今日は金曜日。別に最終週の金曜日ではありませんが、今まで取り入れて来なかったので特別に、特別に第2週ではありますが、わが社でもプレミアムフライデーを導入したいと思います。」


それを聞いたとたん社内にわぁっと歓声が上がる。


「まぁ、皆さん落ち着いて。つきましては第一回目。今回だけは私の我が儘を聞いて頂きたい。今日の午後3時から居酒屋ツブリで飲み会を開きたいと思います。もちろん全額私の奢りとさせて頂きます。」


パチパチパチと社内から拍手が上がる。社長はうんうんと頷き話を続けた。


「その代わりに全員参加で、席順は私の方で勝手に決めさせて頂きました。ツブリで確認の上その座席に座ってください。勝手な交換と不参加は認められません。一応、午後6時までは就業時間と同等の扱いとさせていただき、不参加の場合は今回限りは給料からさっ引かせて頂きます!奢られるか、さっ引かれるかどちらがいいかは各自よく考えて下さい。それと僭越ながら今回、私の嫁ちゃんも参加致しますので宜しくお願いします。結婚10年、初のお披露目と言うことで皆さん楽しみにしていて下さい。では、3時にツブリで宜しく!!私からは以上です。」


社長の演説を聞き終え、頭の中で点と線が繋がった。社長の嫁ちゃんとは梨華なのだ。二人が何か画策しているらしい。社長が社長の権限を最大限振りかざし敢行する飲み会。一体何が起こるのだろう。





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