閑話 ヒロインと獣人の王子の回想
私は転生者だ。
私の名前はメアリー。このゲームのヒロインなの。
普通の高校生だったんだけど、乙女ゲーム「恋して♡〜乙女のドキドキ学園生活〜」の二作目である「留学編」が発売したから、それをしながら街を歩いていたら交通事故にあって、打ち所が悪くて死んじゃったんだよね。
前世の記憶は生まれた時からあって、メアリーなんて死ぬ前にやってた乙女ゲームのヒロインの名前と一緒だなと思ったんだ。
しかもこの世界は魔法が使えるって聞いてチートだったりってワクワクしてたけど、私の家は金もないから先生も呼ばなくて、ろくに魔法のも使えないから5歳までは普通に暮らしていたのよ。
だけど今のお母さんに連れられて王都の祭りに行った。
その時、とても素敵な白銀色の髪と紫色の瞳をした男の子と真っ直ぐな黒髪に碧色の瞳をした女の子が手を繋いで仲良く歩いて街を散策してたの。
その二人に私、とても見覚えがあったんだよね。
お母さんに聞いて見たら、この国の第二王子エドワード様とその婚約者ソフィア様だって!
それを聞いて確信したわ!この世界は乙女ゲームの世界で私はヒロインなんだってね。
実はこの作品、二作目が死ぬ数日前に発売されたから全部攻略出来なかった。
だから一作目だけでも逆ハーレムルートを生み出そっと!
そう思って肌が傷つかないように、荒れないようにお手入れを頑張ったわ。
お母さんには金の無駄遣いだと怒られたけど。
うざかったから、こっそり盗んだお金を貧乏人にあげて仕事を依頼したわ。
「強盗に見せかけて、私のお母さんを殺して」
ってね。予想以上にうまく行ったわよ。拍子抜けするぐらい。
その六年後位に光属性持ちだと発覚。
乙女ゲームの舞台である学園の入学が決まった。
それから1年経って乙女ゲームのイベントが始まると、私は学園で攻略者達と頑張って仲良くしたわ。
悪役令嬢の取り巻きにはイジメは受けていたんだけど……何故かその中心の悪役令嬢のソフィアが毎回何もやらずに、しかも取り巻きに注意を促してから何処かに行ってしまうのよ!
その度に「ソフィア様……なんてお優しい方なの……私達がソフィア様の代わりに注意を!」と何故か取り巻きの他にも色々な人の支持を受けていた。
何やってるのよ、悪役のくせに!悪役は悪役らしく私を虐めて、さっさと退場すれば良いのに!
そこで私は自作自演でソフィアがやるはずだったことを、やって見せたわ。それを皆んなは簡単に引っかかっちゃって!笑えるったらありゃしない!
後はブレスレットなんだけど、エド達が用意をしてなかったの。
夜会の前にエド達にね、心配なふりをしてこう言ったの。
「ソフィア様は危険な闇魔法を使うから何か対策をしておいた方が良いんじゃない?」
闇魔法はとても珍しいし、呪いなどに特化してるってアルが言ってたけど、用心あれば越したことはないわ!
そう言ったら魔封じのブレスレットを持ってアルとエドがソフィアの元に行ってブレスレットをはめて来たんだって!
もう完璧!って思ってたんだけど、夜会にソフィアが来なかったの。皆んなと行ってみたら保健室にはぐるぐる巻きにされた近衛騎士が二人いて、一人はソフィアの髪で作られたウィッグをかぶって、ドレスを着ていたのよ!
まわりの近衛騎士は慌ててソフィア探し出すし、エド達もこんな事態に陥るとは思わなかったみたいで呆然としてたわ。
もちろん私も。
だって、一人で間抜けに会場に来る悪役令嬢が逃げたのよ!誰にも見付からずに!
私は皆んなに慰められて「もう休もう」って言われたから一人で正門のところを歩いていたんだけど、衝撃的な出会いがあったの!
肩までくらいの茶色の髪に碧色の瞳の美男子に!
迷ったけど思い切って話しかけてみたら少し驚いていたけど丁寧に話して来てくれたの。
物腰は柔らかくとても素敵に微笑んでいたわ!
彼、きっと私と同い年よね。でもあんなに美男子だと必ずゲームに出て来たはずなんだけど……まさか隠しキャラ!?それとも続編の攻略キャラなの!?
もっと話そうと思っていると彼は少し困りげにこう言ったわ。
「メアリー様は幸せですね。殿下が羨ましいです……それでは私は正門の外の周りを見回りしないと行けないので失礼致します」
立ち去る後ろ姿を見て、慌てて呼び止めたけどすぐに居なくなってしまったわ。
ああ、とても素敵な方だったわ……近衛騎士の服を着て居たから近衛騎士団長なら知ってるかしら?
決めた。彼を私の専属護衛騎士にしよう。将来の王妃の側に居られるだけでも幸せなのよ!
そう思って近衛騎士団長を探して声をかけた。
しかし、彼のことは知らないらしい。
無駄足だった。エドに聞いてみようかな?
私は溜息をつきながら学園内にある寮に戻ってベッドに潜り込んだ。
次の日ーー
目が覚め、いつも通りエド達の所に行くと教室の中から廊下へ、揉めているような声が聞こえた。
「如何していきなりそう言うんですか?まだ留学期間は残って居ますよ?そう急いで帰る事はないと思いますが」
「いいえ、エドワード殿。私の来た理由が無くなってしまったから帰るのですが?此処に用は有りません。貴方のお父上である国王に帰還の許可を頂いたので、序でにと挨拶に伺っただけですので。宜しければ今度は貴方方が此方に学びに来ては如何ですか?」
「獣人の国に……ですか?」
「はい、我が国も昔より栄えて来て居ます。きっと私と同じように学ぶ事があるでしょう」
「……」
この声……エドと……間違いない。この声を私は知ってる。
勢い良く扉を開けると「留学編」の攻略キャラで灰色の髪に琥珀色の目をした獣人の国の第一王子シルヴェスターが居た。
どうしてこの学園に……と言うか居たの?見たことすらなかったんだけど?
私が驚いているとエドが、よく来たと言わんばかりの顔で笑って来た。
「シルヴェスター殿、紹介しましょう。彼女は私の新しい婚約者のメアリーです」
私は少しその自慢げな顔を叩きたくなった。
理由は居たのならもっと早く紹介しろ、というのと、今はそれよりも例の近衛騎士の方が気になるという事だ。
だがそれを我慢して可愛く笑う。
「初めまして!私、メアリーと言います」
シルヴェスターは「例の……」と呟いた様に見えた。
「可愛らしい方ですね。二人はお似合いですよ」
「そうでしょう?ソフィアなんかよりも、とても素敵ですよ」
エドが自慢するとシルヴェスターは「そうですね」と微笑んだ。しかし、その目が笑って居ないことに誰も気づかなかった。
「ぜひ、其方の婚約者殿も我が国においで下さい。歓迎しますよ」
「ええ、喜んで!」
明らかに歓迎されてない建前に気付かず私は返事をする。
これって「留学編」の最初だよね。と言う事は新しい攻略キャラと仲良くできる!
「留学編」は獣人の国に行き、其処の学園で攻略キャラと仲良くしたりするものだ。しかし、その続編は一作目とは違い、魔物退治、魔王討伐をする事も混じっている。
シルヴェスターは喜んでいる私を余所にエドに向かい合う。
「それではさようなら。また会いましょう」
そう言ってシルヴェスターは専属の護衛騎士を引き連れて出て行った。
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俺は背伸びをしながら赤毛に翠色の瞳をした護衛騎士のイムと歩いて居た。
イムは俺の昔からの友達で信頼できると言う事で連れて来た。
「あーあ、疲れた」
「そうですね。あの二人、シルヴェスター殿下の嫌味も気付かれて居ないようでしたし」
イムは敬語を使いながら、やれやれと苦笑する。本来は敬語を使わないが人目を気にして居るのだろう。
「だよねー、あの二人本当に頭の中お花畑だね」
俺が使った嫌味はどう言うものかと言うと……。
「可愛らしい方ですね。二人はお似合いですよ」(外見もお花畑だね。二人ともバカでお似合いじゃない?)
「そうですね」(バカ王子とお花畑の女、釣り合いが取れてるよ!フィアには似合わないね)
「ぜひ、其方の婚約者殿も我が国においで下さい。歓迎しますよ」(フィアを断罪しようとしたね。こっちの国に来たら仕返ししてあげるよ)
「それではさようなら。また会いましょう」(次会う時、君達がどんな顔をするか楽しみだよ)
と言うものだ。全く通用しなかったけれど。
「頑張って下さい。荷物は纏めてありますから馬車でゆっくり出来ますよ」
「うん?馬車は要らないよ。先に帰っといてくれる?」
「え?」
逆に馬車で帰ったら困るからな。
後ろで驚くイムに俺は振り返って首をかしげる。
「だってさー、それじゃあフィアに会えないじゃんか!やっとだよ!?やっとあのバカ王子が婚約破棄してくれたのにこのチャンスを逃さないで何をするんだよ!」
「ソフィア様の事ですね……彼女は今、容疑をかけられて居ますよ」
ソフィアは俺の初恋の相手だ。
八歳の時、協定を結んで平和になったと言う事でこの国の夜会に招かれた事がある。
その時に会った彼女は、表情豊かでとても可愛かった。
何度か滞在期間に話した事もある。彼女は楽しげに、そして悲しげにバカ王子の話をして居た。
例えば「エドワード様が私の好きな花を贈ってくれた」とか「お菓子を手作りしたけれど、エドワード様は使用人に作らせたんだろうって……それにそのお菓子を捨ててる所を見てしまった」とかね。
他には彼女についての話も聞かせてくれた。親と国王しか知らないが、闇属性の他に水属性を持ってるって事も。その二属性を混ぜ合わせると氷属性になるって事も。
何でもね……。
フィアをエドワードが大切にしないなら、俺が彼女を幸せにしようって思った。ただ、その時は既にエドワードと婚約してたからどうしようも無かったけど。
それに彼女が表情が暗くなったのは俺のせいだしね……。
「俺が獣化して走った方が早いよ。それにフィアが無実って事は影が掴んでるでしょ?」
「そうですが……」
何か言いたい事が有るようだ。獣化した時の身体のサイズとかの問題かな?
「大丈夫、大丈夫!お忍び用の指輪があるしさ!誰にもバレないって」
「はあ、分かりましたよ」
今行くよ、フィア!
ソフィアが記憶をなくしていると思わないシルヴェスターは、ソフィアの笑顔を思い浮かべながら、国を出すのであった。




