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5

 私は猫と共に地図を頼りにし、昼頃湖へとたどり着いた。

 熱苦しいウィッグを脱いで辺りを見回す。


「凄い綺麗!」


 そこは森に囲まれており、湖は広くて水は透けている。魚も泳いでた。


 これなら水の確保ができるわね。

 後は……。


 私は自分の身体の臭いを嗅ぐ。

 湯浴みを何日もしていない所為かとても臭い。


「これでは女として終わってしまうわね……そうよ!シャンプーを作りましょう」


 この世界はシャンプーやリンスがない。つまり、今の女性は香水で臭いを誤魔化しているのだ。

 それは完全に男女問わず、臭いが酷すぎて嫌われてしまう。


 シャンプーやリンスを売れば金の足しにもなる。良いわね。

 ついでに猫用の物のと……それと自分を守るものも必要よね!


 私は空間ポーチから材料と道具を取り出し、色々なものを作ることにした。


 猫はそれを珍しげに眺めているのであった。










 数時間後ーー


「ふふふ、完成したわ!」


 私の目の前に置かれているのは、つい先程完成したものだ。


 シャンプーやリンス。他には瓶から布が出ているものとマッチを大量に作った。


 私はその瓶を手にとってうっとりと眺める。


「前世と現世の知識を合わせて作った火炎瓶に爆薬……これを攻略者とヒロイン共に投げたらどれだけ素敵なのかしら」


 きっとこの瓶の正体を知らずに避けて、燃え死ぬのだろう。

 爆薬が詰まった瓶に置いては殺傷能力を高める為、鉄などの破片を入れた。

 あの綺麗な顔が鉄の破片などによって傷つくのも目に浮かんだ。


 私はそんな様子を想像してニヤリと口角を上げた。

 瓶は空間ポーチに入れるので割れることがない。


「ただ……本当は手榴弾や銃を作りたかったわ。材料と場所が足りないのが残念ね」


 そう考えていると猫がすり寄って甘えて来た。


「可愛い〜!前世は犬派だったけれど今は完全に猫派ね!」


 猫の顎を撫ぜた後、私は猫を抱いた。


「猫さん、体を洗いましょうね。猫さん用の物も作ったから肌は荒れないし、良い匂いがする様、香草も入れたから」


 猫は嫌な予感がしたのか逃げようとする。

 だけど無駄だ。どんなに腕の中で暴れられても鍛錬の成果によって逃げられることはなかった。


 私は先程まで使用していた鍋に水を汲み、猫に水を被せた。

 今は夏の終わりだから、寒さには平気だろう。


「にゃあご!!」


 嫌がっていたが私はそれを構わずシャンプーをつけて体を洗い始めた。


 猫は観念したのか抵抗をやめた。

 シャンプーを水で洗い流してリンスまでした。


「さてと、次は私の番ね」


 服を脱ぐ。

 流石に貴族の矜持がある為、人気がない所だとしても布を腰と胸の部分に巻いた。

 猫の様子を見るとそっぽを向いている。

 どうしたものか。


 私は急いで髪と体を洗うとモリを取り出し、湖の中に入った。

 魚を見つけると、私は潜って静かに近づいき魚をモリで突いた。


 何匹か獲り終わると私は湖から出てワンピースに着替える。

 まな板と包丁を取り出し、魚を捌いた。


 今日は魚の塩焼きね。


 鉄串にさし、塩をまぶしてから焚き火を用意して焼く。


 美味しそうな匂いが私を誘う。

 良い感じに焼けて来たので、一匹は串から外して皿にのせてから猫に上げた。

 猫は熱いのか息を吹きかけている。


 まるで人の様ね。


 私は鉄串に刺したまま手に取って食べた。


「美味しいわね……」


 こんな簡単な手料理はいつ以来だろう。

 記憶にないがきっと家では手の込んだ物ばかり食べていたんだろうな。


 私は急いで食べ終えると出していたものを片付ける。

 すっかり夕方になってしまった。門が閉じる前に入らないと。

 私は空間ポーチの中から飴が入った瓶を取り出した。

 飴には個々色んな動物の絵が描かれている。

 これは魔道具だ。

 食べ物だから言い方がおかしいかも知れないが一個一個に魔法がこもっており、これを食べると描かれていた動物の獣人に一日だけなれるという珍しいものだ。エルフやドワーフ、魔族などにもなれる。


 何を食べようかしら?

 猫もいいけどウサギも捨て難いわね。


「ねえ、猫さん。貴方はどちらが良いと思う?」


 魚を食べ終わり、蝶を追いかけ回している猫に聞いてみた。

 猫とウサギが描かれた飴を見せると、少し悩んでいる様に首を傾げ、ウサギが描かれた飴の方に手を置く。


 動作が可愛い……。


「ウサギが良いの?てっきり同じ猫を選ぶと思ったのに」


 まあ良いか。


 私はその飴を口に入れて舐める。少しすると可愛い黒色の耳と尻尾が生えた。


「では行きましょうか」


 猫は私の言葉に返事をする様に鳴いた。










 私は門の所に行き、門番に声をかける。

 偽の通行証を出すと簡単に通してくれた。


 ただ、通る前に門番である茶髪の犬の獣人の青年に呼び止められた。


「おい、お前ソフィア・レニアーナと言う人間の女を知っているか?」


 もう知れ渡ってるのね。まあ、ゆっくりとして来たから通達位は来るか。


「えーと……その人はお貴族様なの?知らないわ。大体私は山奥に住んでいて、最近下りて来たばかりなのよ?」


 私は嘘を演技と共に並べていく。


「そうか……お前と同じ歳に黒髪と聞いていたので、まさかと思ったんだが」

「何言ってるのよ?大体その人って人間なんでしょ?私はウサギの獣人だし、名前はリズよ。何もかもが違うわよ……まさか人間が獣人になったと思ってるの?」


 あの獣人などになれる飴は勿論のこと売られていない。

 あれは確か私の家の先祖が作ったので非売品のはずだ。


「そうだよな……違うよな。山から下りて来たって事はこの国は初めてか」

「ええ」

「そうか。ここは人種差別がないから暮らしやすい。お前は気が強そうだから心配ないと思うが変な奴に捕まったり、食べられたりするなよ」

「親切にどうも。それに私はお前じゃなくてリズよ」

「俺はラットだ。ようこそ、リズ。フォスター王国へ……これから宜しくな」

「こちらこそ」


 食べられるってどう言う意味なのかしら?


 ついでに「その猫は?」と聞かれたので「旅仲間」と答えた。

 猫は不満そうだったが私が知る由もなく……。


 私は胸の高鳴りを感じながら、ラットに笑顔を向けてから門をくぐった。

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