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8.

「いらっしゃいませー!」


 私は今、客の接待を長袖の真っ黒なメイド服でしている。

 どうしてこんな物を着なくてはいけないの……

 確かに地味な物を頼んだけれどメイド服とは言ってないし、場に不釣り合いで目立ってしまう。

 とは言え、どうやらマリアが徹夜で作った傑作と聞いたからこれを返すという選択肢はなく、着て接待をするの一択だ。


 まあ、宿代にご飯代が無料で給料も貰えるということで、少しくらいの問題があっても此処で働く気満々だったのだけれど……流石に恥ずかしい。

 確かに誰かを暗殺をする時とかに着てたとは思うわよ?でも此処は街中、必然的に目を惹くメイド服なんてただのコスプレじゃない……。


 そんなことを思いながら笑顔で客を迎え入れる。此処は宿でもあり、酒場でもあるので冒険者などが飯を食べに来る事が多い。

 ただ、私が入ってから日に日に人が増えているかがするのだされど気の所為かしら?


「リズちゃん!ビールとビーフシチューを頼む」


 常連さんと化した男の人が親しげに声を掛けてくる。


「はーい。御注文ありがとうございます!」

「いやー、ここの料理最近美味しくて……特にビーフシチューが好きなんだ」

「そうですか。ふふ、ありがとうございます」


 他にもあるが、ビーフシチューは私が提案して作ったものだ。

 この世界は、まだ料理が発展していないので、パンも固いし、ハンバーグとかもない。唯一の救いはケーキがある事だろうか。

 それも余り美味しくはないが、ないよりはマシだろう。いつかもっと美味しくなるだろうし、自分で作れる。


 温めてあったビーフシチューをマリア達のお祖父さんである、ジャンさんに皿に注いでもらい、ビールと一緒に運んで行く。


「お待たせいたしました」

「やった。ありがとう、リズちゃん」

「いえいえ、ごゆっくり」


 男の人は私へと手を差し出して握手を求めて来た。

 何故か皆んな握手を求めてくる。しかし、私の手に触れる前に猫さんに手を引っかかられてしまうのだ。


 猫さんは唸りながら彼の手を引っ掻く。


「いでっっ!」


 痛そうに悲鳴をあげるが、猫さんはすました顔で私の肩に登り、周りの人は彼を見て笑う。


「おいおい、猫様のお気に入りに手を出したらダメだろ」

「何言ってるのよ。あんただって前にやられてたじゃない」

「そういや、おっちゃんリズちゃんに触ろうとして猫様に思いっきり引っかかれてたよな」

「うっせえ!お前もだろうが!」

「「「(あ)はははは!」」」


 猫さんはすっかりと看板猫のような枠に収まり、番犬ならぬ、番猫になっている。

 きっと客が増えているのは猫さんと料理のおかげだろう。

 いや、もしかしたらマリアが目的なのかも。可愛いから話しかけれている時もあるしね。


「リズお姉さん、何か変なこと考えてませんでしたか?」

「わっ、マリア……別に変なことは考えていないわよ?マリアはモテるなあ、と思っただけよ」

「それを変な事と言うんです……」


 何やらブツブツと鈍感やら何やら言ってるが、私は気にせず接待に集中した。


 いつの間にか夕方になり、ラットが疲れたように帰ってきた。扉を開けたと同時にラットは口を開く。それを私とマリアは出迎えた。


「ただいま」

「お兄ちゃん、おかえり!」

「お帰りなさい……その人は誰かしら?」


 ラットが扉の前に突っ立っていたから気が付かなかったが、彼の背後には短かい赤毛に犬耳、翠色の瞳をしたラットと同じくらいの年頃の青年。

 ただ、私にはその赤髪に見覚えがあった。

 そう、CMとかの広告でシルヴェスターが出てくる時、必ず背後に控えていた赤毛の髪だったのだ。

 どうしてそれしか覚えてないかというと、正直彼はモブだ。モブなのにシルヴェスターの護衛騎士だし、髪の毛位は特徴的にしようとモブの内一人だけ赤毛になった人だ。

 そのせいか、顔が描かれていない赤毛が特徴的なモブ、赤毛の「あ」にモブの「も」でアモさんと言われていた。

 やってないから知らないが、常にシルヴェスターに付き従っている侯爵家の次男(狼人)らしい。


 ラットの代わりに赤髪の青年が愛想よく微笑んで答えた。


「俺はイム。よろしくな…リズさん」

「私の名前、知ってたのね」

「流石にこんな美人、噂にならない方が可笑しいと思わないか?しかも猫様のお気に入りと言われてるだろう」

「言い過ぎだと思います」


 そんな彼がどうしてここに……そして翠色の目だったの……名前、イムだったのね。


「こいつは騎士見習いだ。偶に練習相手になって貰う時がある」

「イムさんは、私達と小さい頃からの付き合いなんです!」


 護衛騎士でしょ……そんな人が何故ここに。

 お忍びなのでしょうね。服も軽装だし……。

 私のこと知ってるのかしら。知らなければ良いのだけれど。


「そうなの……良ければイムさん、ゆっくりして行って下さいね」

「あ、俺は平民だから呼び捨てでいいし、友達になるんだから敬語もいいぜ?」

「そう……で、何を注文するの?」

「あー、そうだな……せっかく居酒屋に来たし、食べてくか。何がオススメなんだ?」

「そうね……全部美味しいのだけれど、一番人気なのはシチューのミルクとビーフね。パンの一緒に食べるのが美味しいわ」

「じゃあミルクシチューで」


 私は早く一度退散すべく、シチューを取りに行った。


誰もが、イムが私の肩にいる猫を見据えてるとは知らない。

最近いつも遅くてすみません

ゆっくり投稿して行く予定です

そこまで面白くないとは思いますが、読んでいただき、ありがとうございますm(__)m

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