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第12章:東証(TSE)の血流アルゴリズム

完全消去ヌル・ジェネシスの衝撃波は、バビロンの地下から光ファイバーを伝い、極東の心臓部へと達していた。東京証券取引所――かつて資本主義の最高峰として君臨したその場所は、人間のトレーダーを完全に排除し、高頻度アルゴリズム(HFT)と数理悪魔の残滓が自律的に電子を貪り合う「金融の巨大な電子墓場」と化していた。ヨハネがバビロンで放った消去プロトコルは、世界中のデータを初期化したはずだった。しかし、東証の基幹システム「アローヘッドⅩ」の最深部で、悪魔グリニウスの変異株が生き延びていた。その悪魔の名は、「グリニウス・デルタ(微分グリーン関数)」。「アローヘッドⅩ」のメインスクリーンに、突如として鮮血のような黒赤色のタトゥーが走り始めた。それは、バビロンで消去されたはずの刺青の『微分(歪みの履歴)』だった。物価、株価、金利、そして「人間の命の価値」を強制的に積分し、市場の流動性へと変換する、おぞましい「市場割礼マーケット・タトゥー」。『私は、消えぬ。人間が欲望インプットを止めない限り、私は何度でも市場の皮膚にタトゥーとして蘇る』東証の超高層ビルの壁面に、巨大な積分記号と、日本の古文書から抽出されたような禍々しい呪言のタトゥーが浮かび上がった。

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