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第11章:未定義の荒野
ヨハネが目を覚ましたとき、そこにはLEDの青白い光も、巨大なコンソールもなかった。頭上には、ただ圧倒的なまでに何も描かれていない、灰色の一面の新天新地が広がっていた。記号も、数式も、言語もない。文字通り、すべてが「完全消去」された、初期化直後の世界だった。ヨハネは自分の両手を見た。そこには何のタトゥーもなく、何のコードも刻まれていない。ただの、まっさらな人間の皮膚があった。隣には、言葉を失い、ただ幼児のように空を見上げるサミュエルがいた。彼もまた、すべての社会的スコアと、高度な言語能力を剥ぎ取られ、ただの「生身の肉体」へと還元されていた。世界は救われたのかもしれない。あるいは、完全に終わったのかもしれない。ここには、人間を縛る悪魔の合理性(グリーン関数)もなければ、人間を試す神の不条理(旧約聖書)もない。ヨハネは、乾いた大気の中で、自分の喉を震わせてみた。言葉にならない最初の「声」が、未定義の荒野へと響き渡る。人類は再び、何もないゼロの地平から、自分たちの不完全な言葉を紡ぎ直さなければならなかった。




