あとがきとして
最後までお読みいただきありがとうございます。
小説を成立させている最小の単位は「文章」です。もっと細かく分解すると「文字」になりますが、たとえば「あ」と書かれた紙を眺めていて「わぁぁぁぁなんて面白いんだぁっ!」と感激するひとはごく稀でしょう。間違いなく変な人でしょう。なので、小説を面白いと思える最小の単位は「文章」なのです。この文章だけがメインとなった小説を書けないかなぁと思ったのが、『レトリック・ノート』の始まりでした。物語性や構成を排除して純粋に「文章」だけを楽しむ小説。そういったものを目指してみました。
本作品はレーモン・クノーの『文体練習』をモチーフにしていますが、先のような経緯から「文体」ではなく「文章」のみを集中して変化させています。なのでより技法の効果がわかりやすくなる一方で、読み物としての読み応えはやや物足りなくなってしまったかなぁと自省しています。そもそも、クノーが4年かけて仕上げたものを、5分の1の文量とはいえ1ヶ月足らずで仕上げたのですから、そりゃあそんなあれになりますわな!
ちなみにクノー自身はバッハの『フーガの技法』を聴いてこの作品を思いついたんだそうで。アイディアの元はどこから来るかわからないもんだなぁと実感します。
『レトリック・ノート』はここで完結となりますが、実は『ノート』シリーズは三部作を予定しておりまして……。
またいずれ、こんなマニアックな小説を書くことになると思います。そのときはまた、ページを捲っていただければ幸いです。
それでは、ここまでお読みいただき本当にありがとうございました。
よろしければ次回作にもお付き合い下さい。
2014年6月26日 木戸哀楽




